離れて暮らすご家族が高齢で、いつもその安否を案じているという方は多いのではないでしょうか。実際、高齢単身世帯の増加や、孤立化は、いま大きな注目を集めている社会課題の1つです。Amazonも、サービスやデバイスを通じて、高齢化社会の課題解決に取り組んでいます。例えば、Amazonが提供する音声アシスタントのAmazon Alexa(アマゾン・アレクサ)が搭載されたスマートスピーカーのAmazon Echo(アマゾン・エコー)シリーズは、導入が簡単かつ、見守りデバイスとしても活用しやすいことから、高齢者やそのご家族にご利用いただいています。

また国内でAlexaスキルを開発するパートナー企業や開発者が4,000以上にのぼるなか、2022年1月には、日本郵便株式会社(以下、「日本郵便」)が、地方自治体向けに提供を開始した「スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス」に日本郵便が開発したAlexaスキルとEcho Showシリーズが導入されました。そこで今回は、Alexa インターナショナル事業開発本部本部長の澤田大輔さんと、日本郵便株式会社地方創生推進部課長の工藤随史さんに、高齢化社会におけるAlexaの可能性や、日本郵便とAmazonによる今回の取り組みが目指す方向性、意義などについて語っていただきました。

スマートスピーカーは、高齢者やその家族の暮らしをアシストするデジタルデバイス

――高齢者やその家族の見守りツールとして、スマートスピーカーの活用が注目を集めています。ご高齢の方にとってAlexaが搭載された Echoシリーズが最適のデジタルサービスであり、デバイスであると言える理由はなんでしょうか。

澤田さん「すでに普及しているスマートフォンをはじめとするデバイスは、高齢者の方々には必ずしも使いやすいとは言い切れません。例えばスマートフォンを使おうとした時、デバイスを充電して、電源を入れて、自分の使用したいアプリを探して、そしてアプリを起動する。つまりやりたいことに至るまでのプロセスが多岐に渡り、非常に煩雑なんですね。一方で、Alexaを搭載しているEchoデバイスであれば、『アレクサ、今日の天気は?』『アレクサ、今何時ですか』『アレクサ、15分タイマーをかけて』と、声をかけるだけで、簡単にやってほしいことを実行してくれる、その利便性が大きいのではないかと思います」

工藤さん「私自身も自宅でEchoを使っているんですが、高齢者にとって本当に優しいデジタルデバイスであるという感じがしますね。自分がやりたいことを頭で認識して、次に指で操作して……というプロセスをたどるよりは、声で操作できた方が簡単だし、楽しいし、魅力的に感じる方は多いでしょうね」

澤田さん「はい。それにAlexaは見守りツールとしても便利にお使いいただけます。例えば、離れて暮らすご家族の家にEchoデバイスを設置すれば、通話機能で安否を確認することができますし、呼びかけ機能を使えば、相手に着信許可を求めることなく、家族の部屋の様子を確認したり、会話することができます。なのでご家族の体調の変化など、異変にも気づきやすくなるかもしれません。また、今年日本でも販売を開始した

リング ビデオドアベル 4リング バッテリー駆動スティックアップカムなどのデバイスと連携すれば、離れて暮らすご家族の家への訪問者を、セキュリティカメラを通じて確認することができるのです※1

※1 Alexaの見守り機能については、「「見守り」にEcho ShowシリーズとRingを活用。離れて暮らす高齢の家族をサポートする5つの方法」の記事もご参照ください。

――高齢の親御さんを持つ方にとっては安心のデバイスですね。
澤田さん「はい。ご高齢者本人だけでなく、そのご家族に安心を提供できるのも、Alexaが搭載されたEchoシリーズの大きな価値だと思います。そして、今ご紹介したような使い方だけでなく、ご高齢者自身の生活をアシストする機能も充実しています。たとえば足腰が弱いご高齢の方が、家の中を歩き回るのは危険な場合もありますよね。Alexa対応のスマート家電を家に設置すれば、声で家電が操作できるようになるので、そうすれば立ち上がってリモコンを探したり、スイッチを押しに行ったりしなくても、『アレクサ、廊下の電気をつけて』『アレクサ、エアコンをつけて』と言うだけで済むので、怪我のリスクが低減されますし、便利に日々を過ごしていただけます」

202211_Alexa 日本郵便 高齢者見守り
アマゾンジャパン合同会社 Alexa インターナショナル事業開発本部本部長 澤田大輔さん

――実際に高齢者の利用者様からはどのような感想をいただいていますか。

澤田さん「Alexaが日常的な会話の相手になってくれるというところで、毎日が楽しくなっているという声はよくいただきます。実際、Alexaでよく使われている発話というのも、ただいま、おはよう、おやすみという、あいさつだったりするんです。Alexaもそのたびに違う回答を返してくれますしね。何か目的がなくても会話するだけで楽しめる、ご高齢の方にとっては『インタクラション(Alexaとの相互のやりとり)』という部分が大事なんだなと感じています」

工藤さん「私も帰宅した時は『アレクサ、ただいま』と、あいさつしているんですけど、お帰りなさいとか、待っていましたとか返してくれるのはうれしいですね。人間味を感じられるところも、Alexaの良さだと思っています。私たち日本郵便が提供している見守りサービスではEcho Show 10やEcho Show 8を利用者様の自宅に設置しているのですが、Echo Show 10は声に反応して画面がその方向に向くので、ご高齢の方には愛らしく感じられるようです。特に1人で暮らしている方にとっては、自分の声に反応してくれる存在があるだけで、生活の中の刺激にはなると思います」

台所の調理台の上の置かれた黒いEcho Show 10
Echo Show 10

高齢化社会に向けた日本郵便の取り組みに Alexaが搭載された Echoシリーズが活躍

――日本郵便が地方自治体向けに提供している「スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス」について教えていただけますか。

工藤さん「日本郵便が独自開発したAlexaスキルが、利用者様のご自宅に設置したEcho Showを通じ、利用者様の生活リズムにあわせて体調、睡眠、食事や服薬等の状況を確認します。スキルには日本郵便のキャラクター『ぽすくま』を起用し、自転車に乗ったぽすくまがチリンチリンとベルを鳴らしながらやってきて『今日は3食食べられましたか』とか『朝のお薬を飲みましたか』とか、『はい』か『いいえ』で答えられる質問をします。現在はこのスキルを複数の地方自治体において活用いただいており、今後もより多くの地方自治体や法人の方にもサービスをご利用いただけるよう取り組んでまいります」

ガラス窓を背に座る工藤随史さん
日本郵便株式会社 地方創生推進部 課長 工藤随史さん

──生活状況の確認はどのように行われるのですか?

工藤さん「質問を通じて記録された生活状況の結果をWeb上の管理画面で地方自治体の方が確認できるようになっています。そのため、ご利用者様から2〜3日返事がない場合には『何かありましたか?』と連絡して確認することができます。また、生活状況の結果はLINEを通じてご家族の方も確認できますので、地方自治体とご家族、それぞれから見守りをすることができます」

――今回の見守りサービスにAlexa搭載の Echoシリーズを採用された決め手はなんでしょうか。

工藤さん「サービスの対象が高齢者であるため、できるだけシンプルな仕様のデバイスがいいということで、音声で操作ができるスマートスピーカーには魅力を感じていました。その中でもEcho Showはディスプレイがついているので、視覚的に確認できることや、音声に対する反応が非常に良く、また音声に対して返ってくるAlexaの声が聞き取りやすかったため、高齢者の方にも利用しやすいデバイスだと感じ、採用しました。Alexaスキルの開発にあたっては、いろいろとAmazonさんにご相談しながら、地方自治体の方からのフィードバックもいただきつつ、サービスのブラッシュアップを行ってまいりました」

澤田さん「たとえばAlexaの声を聞き取りやすくするために音声ピッチをどう調整すればいいのか、高齢者にとって会話がしやすいテンポや間はどれくらいなのか、日本郵便さんからいろいろとご相談を受けながら、我々の中で今できる技術の中でベストな提案をさせていただきました。また対応できない部分に関しては、お客様からのフィードバックとして将来の製品改善につなげていくというようなことを心がけています」

――実際にサービスを導入した地方自治体や、利用者様からはどのような感想をいただいていますか?

工藤さん「地方自治体の方からはやはり、管理画面で利用者様の生活状況が見られるというところで、見守りの支援につながっている、それによって高齢者の孤立化・孤独化への対策にもつながっているという評価をいただいております。また利用者様からは、薬の飲み忘れが少なくなったとか、体調管理についての意識が高くなったとか、あとは、Alexaに話しかけると何かしら受け答えをしてくれるので、毎日話しかけていたら、生活の安心感が増したというような声をいただいております。そういううれしい声をいただく一方で、サービスに興味はあるけど、まだデジタル機器を利用することに対しては不安を感じている方も多くいらっしゃいます。そのため、お客様の近隣の郵便局員が操作のフォローを行ったり、Alexaを利用してみたいという高齢者の方を公民館やホールにお招きして、実際にデバイスに触れることができる説明会のような取り組みも地方自治体の方に相談しながら行っています」

高齢化社会の課題解決に向けてAmazonと日本郵便ができること

テーブルで向かい合って座る工藤随史さんと澤田大輔さん

――最後に、Alexa搭載のEchoシリーズを活用した取り組みについて、今後の展望を教えていただけますか。

工藤さん「仕事柄、地方自治体の方とお話をする機会が多いのですが、そこで感じるのが、皆さん高齢化社会における課題、例えば認知症対策や高齢者の社会的孤立などに対するソリューションを非常に強く求められているということ。また、そのソリューションの1つとして、スマートスピーカーに対していろいろな可能性を感じている方が多くいらっしゃいます。私どももスマートスピーカーは、高齢化社会の課題を解決するカギになると認識していますので、今後も、まずはこの『スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス』を、全国各地に広げていければと思っています」

澤田さん「世界的に見ても高齢化率の高い日本が今後この問題にどう対応していくべきなのか、確固たる答えがない中で、Amazonは日本郵便さんと一緒に模索を続けています。日本の場合は特に1人暮らしの高齢者が多いというのが特徴で、工藤さんがおっしゃられる通り、各自治体も高齢者の社会からの孤立に対してプライオリティを高めて対処されている印象があります。高齢者の皆様がより健康的に、元気に、楽しくお過ごしいただけるよう、Alexaの活用を通じて社会をサポートしていく、そんな取り組みを私たちは今後とも続けていきます」
  

Amazonが佐賀市と、音声アシスタントAlexaを用いてパパたちの育児参画を支援する実証実験を開始。その様子をご紹介します。

 

そのほかのAmazonのニュースを読む