株主の皆様へ

私はこの25年間、Amazonの一員として、社員、お客様、パートナー企業の皆さまに向けて、多くのナラティブ、メール、書簡、基調講演を発信してきましたが、当社が毎年出している株主の皆様への書簡をAmazonのCEOとして執筆できることを大変誇らしく感じます。ジェフがしたためてきた高水準の株主の皆様への書簡を引き継ぎ、読み応えのあるものにしていきたいと思います。

2020年初頭、新型コロナウイルス感染症の発生当初には、このパンデミックがこれほど拡大し長期化すると考えた人はほとんどいなかったのではないでしょうか。多くの店舗や施設が長期にわたり休業、閉鎖となり、家で過ごす時間が長くなったことで、それまでにAmazonが世界中で担ってきた役割はさらに拡大しました。何億人もの人々が、個人用防護具や食品、衣料など、かつてない状況を乗り切るためのさまざまな商品をAmazonから購入しました。企業も政府も、職場で同僚とテクノロジーを利用しながら働くスタイルから、リモートワークにまさに一夜にして移行しなければなりませんでした。アマゾン ウェブ サービス(AWS)はこうした官民を問わないお客様の事業継続性を確保する上で重要な役割を果たしました。需要が桁外れに急拡大したとき、あるいは消費減少に伴い急速に低下した際にも、キャパシティーを迅速に拡大/縮小できる弾力性や、AWSの多彩な機能を提供し、数百万の企業が困難な状況に対応できるよう支援しました。

当社のAWS事業とコンシューマー事業はパンデミック下において異なる需要の軌跡を描きました。パンデミックが始まった2020年、AWSの収益は、2019年の年間収益350億ドルから前年比30%と急速な伸びが継続しましたが、前年比37%の成長を記録した2019年より減速しました。これは、多くの企業が先行きの見通しの悪さや需要の低迷に直面したことのほか、当社としても、顧客企業によるAWSの利用を最適化し、費用削減につながるよう支援したことも一因となっています。同時に企業にとっては、コロナ禍から回復する中で今後、変更したい点について今一度、検討する機会にもなりました。多くの企業では、自社で技術インフラの管理を継続すべきではないという結論に至り、クラウド移行が加速しました。非常に多くの企業が(経済の回復に伴い)クラウドに移行し、AWSの2021年の収益は前年比37%と再び加速に転じました。

一方で、コンシューマー事業の収益は2020年に大幅に拡大しました。2020年のAmazonの北米および全世界のコンシューマー事業の収益は、非常に好調だった2019年の2,450億ドルの売上から、前年比39%増となりました。2021年はさらに大きく成長し、2021年第1四半期の収益は前年同期比で43%増となりました。驚異的な数字です。3年分の成長を約15か月で達成したことになります。

2021年第2四半期の後半には世界各国で社会活動が再開され、外食、ショッピング、旅行など外出が増加し、個人消費がこれまでのように、より多くの事業体に広がりました。2021年がどうなるか分からない状況の中で、2桁成長を続けたという事実(コンシューマー事業の2年間の年平均成長率は29%)は、Amazonがパンデミック下で果たした役割がお客様に認められたということであり、より多くの家庭用品をAmazonでご購入いただくようになったことには勇気づけられました。

成長に伴い、短期的な物流やコスト面での課題にも直面しました。Amazonは創立以来25年間、大規模な物流ネットワークの構築に取り組んできましたが、お客様の需要に対応するために、これを24か月の間で倍増させる必要がありました。新たな処理能力を整備する一方で、労働市場は逼迫し、ベンダー企業の皆様や販売事業者様から在庫を受け取り、そしてそれらの商品を通常通りに、なるべくお客様の近くに配置することが難しくなりました。海上、航空、トラック輸送のキャパシティーが不足して値上がりしたこともあり、輸送、生産コストが増加しました。サプライチェーンは誰も見たことのない混乱に陥りました。2021年の年末にかけては、新型コロナウイルス感染症が収束に向かうかと期待されましたが、12月にはオミクロン株が出現し、世界中で人々の雇用にも影響が生じました。そして今年2月後半、ロシアがウクライナに侵攻したことで、燃料費やインフレも対処すべき課題となりました。

このように2021年は予測不可能な年となりましたが、それでも世界中の当社社員たちが強い信念のもとに取り組み、努力していることを誇りに思います。この期間、当社の社員が示した献身と類まれな努力がなければ、このようにパンデミックを切り抜けてこられたかどうかは定かではなく、社員には感謝してもし尽くせません。

どのような規模の企業であれ、今回のパンデミックのような一貫性のない、予測不可能な状況に対応するのは並大抵のことではありません。では、Amazonはなぜ対応できたのか。当社が対応できたのは、Amazonが今回、初めてスタート地点に立ったのではなく、フルフィルメント機能のイテレーション(反復による改善)、作り直しを20年近く継続してきたからです。私たちはすべての事業で常に実験と発明を続けています。カスタマーエクスペリエンスについては、当社のものであるかどうかにかかわらず、決して満足することはありません。カスタマーエクスペリエンスは常に改善していけるものだと信じており、お客様の暮らしをよりよく、便利にしていくために日々取り組んでいます。この使命の美しさは、その道には終わりがないということです。お客様は常により良いものを求めており、私たちの仕事は、お客様の声を聞き、私たちにできることを想像し、お客様の代わりに新たなものを生み出していくことです。

ゲームチェンジャーとなるような画期的な発明は、誰かの頭にひらめきがあり、社内でそのアイデアが実行に移され、またたく間に、新たな発明が長期的な大成功を収めると思われがちですが、実際にはそのようなことは滅多にありません。Amazonのような革新的な企業では、絶え間ない話し合い、再定義、試行錯誤、イテレーション、実験により得た大きなアイデアの種を、お客様の心に響くもの、カスタマーエクスペリエンスに長年にわたり意味のある変革をもたらすものとして実らせていくということはあまり知られていません。

Amazonでの例をいくつかご紹介します。

当社のフルフィルメント・ネットワーク:パンデミックの話に戻りますが、もし当社がフルフィルメント・ネットワークの構築に着手したのが2020年3月だったとしたら、お客様のニーズに応えることは到底、不可能だったでしょう。当社はフルフィルメント・ネットワークの革新を20年にわたり継続し、商品をいち早くお客様に届けられるよう常に取り組んできました。2000年代初頭、フルフィルメントセンター(物流拠点)を通して商品を出荷用のトラックに積み込むまでに平均18時間かかっていました。現在では2時間です。当社が理想とするコスト効率の高い確実な配送を実現し、数日で商品を届けてほしいというAmazon プライム会員のお客様の期待に応えるため、何年もかけて広大なフルフィルメントセンターや強力な物流/輸送能力を整備し、実質上、施設内のあらゆる業務を再構築してきました。2004年当時、フルフィルメントセンターは米国に7拠点、米国外に4拠点ありました。この時点では、フルフィルメントセンターや仕分けセンターを、ご近所でおなじみのラストマイル配送車がつなぐ、デリバリーステーションはまだ導入していませんでした。これが2021年末になると、米国内のフルフィルメントセンターは253、仕分けセンターは110、デリバリーステーションは467となり、世界ではさらにフルフィルメントセンターが157、仕分けセンターが58、デリバリーステーションが588となりました。現在、当社の配送網では世界中で26万人以上のドライバーが活躍するまでになり、Amazon Airの航空貨物機は100機を超えています。これは、この15年間における1,000億ドルを超える設備投資、数え切れないイテレーション、100万人を超えるAmazon社員による細かなプロセス改善の賜物です。

皮肉なことに、当社はパンデミック発生の直前に、1日以内のプライムでの出荷件数を増やすために、数年間で数十億ドルを投資する決定をしていました。この取り組みはパンデミックの影響で減速しましたが、再び注力し始めています。(特に当社では何百万もの商品を扱っているため)1日に大量の出荷を処理するのは困難で、効率的にインフラを拡大するためには当初はコストがかかります。それでも、「配送は早い方がうれしい」と断言される2億人のAmazonプライム会員のお客様に喜んでいただけるものと信じています。何百万点もの商品を数日以内(1日で出荷できるものも増えています)に出荷できる能力は、あるひらめきの瞬間から1、2年で開発できたものではありません。お客様の立場になって考え、お客様に求められているものを理解し、よりよいソリューションを発明するためにAmazon社員が協力できる体制を構築し、20年間にわたり膨大な費用と人材を(多くの場合、投資を回収できるよりずっと前に)投資してきたことでやっと勝ち得たものなのです。このようなイテレーティブ(反復による改善)型の革新に終わりはなく、投資がピークとなる年は定期的に巡ってきますが、長期的なカスタマーエクスペリエンス、カスタマーロイヤルティー、株主の皆様への還元をよりよいものにしていくことができます。

AWS:AWSを定義し、お客様に求められていると考えられるサービスを逆算的に検討する中で、製品開発で何度も俎上に載った難題は、V1の機能の線引きをどこにするかということでした。例えば、Elastic Compute Cloud(EC2)というコアコンピューティングサービスに関する当初の会議は1時間の設定だったのですが、付随する永続ブロックストレージ(ネットワーク接続ストレージの一種)なしでのコンピューティングサービスを立ち上げることができるかどうか、3時間にわたり活発な議論が行われました。完全なコンピューティングサービスには永続的なブロックストアが必要だという点では全員意見が一致しましたが、その準備にはさらに1年が必要でした。そこで考えたのは、お客様が欲しいと思うようなすべての機能の準備が整う前の段階で、意味のある価値を実現できる有益なサービスをお客様に提供できないか、ということでした。EC2の立ち上げ当初は機能が不十分でも、お客様の声を拾って俊敏にイテレーションができる体制があればよいと判断しました。このやり方は、イテレーションが本当に迅速であればうまくいきますが、そうでなければ壊滅的な結果を招きます。EC2は2006年に1種類のインスタンスサイズ、1データセンター、世界で1リージョン、Linux OSインスタンスのみ(Windowsはなし)で、モニタリング、ロードバランシング、オートスケール、そして永続ストレージもなしで投入しました。EC2は当初成功しましたが、上述のような不足の機能などを追加するまでは、今日の数十億ドル規模のサービスには到底及ばないものでした。

AWSの立ち上げ当初、コンピューティングはなぜ一般的なコモディティー(商品)にならないのかと尋ねられることがありました。しかし、コンピューティングはサーバーだけではありません。コンピューティングにはさまざまなフレーバー(ストレージ、メモリー、高性能コンピューティング、グラフィックスレンダリング、機械学習に最適化されたサーバー構成など)、さまざまなフォームファクター(固定インスタンスサイズ、ポータブルコンテナ、サーバーレス機能など)、さまざまなサイズや最適化設定の永続ストレージ、非常に多くのネットワーク機能が求められます。そしてコンピューティングの中で駆動するCPUもあります。業界では何年にもわたりIntelやAMDのx86プロセッサーが使われてきました。当社はこれらの企業と重要な連携関係にありますが、(お客様のご要望に応じて)価格と性能を今一歩向上させていくためには、当社独自のチップを開発する必要があることも分かりました。当社初の一般用途向けチップGravitonは2018年に発表しました。これによりお客様のワークロードのサブセットを従来より高いコスト効率で運用できるようになりました。Gravitonからの学びを活かして新たなチップの開発を進め、2020年のGraviton2では同等クラスの他の最新x86プロセッサーと比較して最大40%優れたコストパフォーマンスを実現しました。この40%という数字がコンピューティングに与える影響について考えてみましょう。コンピューティングはテクノロジーの隅々に利用されています。お客様にとっては大変重要なことです。Graviton2はこれまでに(AWS EC2をご利用いただいているトップ50社のうち48社にご採用いただいており)大きな成功を収めていますが、AWSチップ部門はお客様からの改善を求める声を元に、Graviton3を昨年の12月に発表しました(Graviton2の改善率からさらに25%改善)。EC2(およびAWS全般)では目を見張るような各種機能を発明しお客様に提供してきましたが、このイテレーティブ型の革新により他にはない多彩な機能をAWSで提供してきたばかりでなく(これはこれとして大きな差別化要因ではありますが)、AWSを現在のようなさらに常識を覆す製品にすることができたのです。

デバイス:当社が初めてデバイスの分野に進出したのは2007年のKindleのリリースでした。最も洗練されたインダストリアルデザインとは言い難いものでしたが(色はクリーム色で、本体は人によって持ちづらいものでした)、9万冊(現在は数百万冊)以上の本の中からどれでも60秒でダウンロードできるという点で革命的でした。そして当社は、魅力的なデザインをより上手く、迅速に設計できるようになりました。その後まもなく、タブレット、そして携帯電話機を開発しました(これは前面カメラとジャイロスコープを搭載した独自の設計でダイナミックパースペクティブや、さまざまな3D体験を実現した製品でした)。この携帯電話機は成功に至らず、この分野への参入は時機を失したものと判断し、このリソースを別の領域に転用することにし、優秀なビルダー(builder)を長期的に採用しました。この失敗からの貴重な学びが、EchoやFireTVといったデバイスに生かされています。

初代のEcho、そして当時Alexaがお客様に何を提供できたかを考えると、それは注目に値するものでしたが、現在と比較するとわずかなものでした。今日、何億台ものAlexa対応デバイス(家庭、職場、車内、ホテルの客室、Amazon Echoデバイス、サードパーティーのデバイス)が使われています。音楽を聴くことも、今では動画を見ることもできますし、照明のコントロールなど自宅の自動化も可能です。「1日の始まり」といったルーティンを作成すれば、Alexaが天気、最新の交通状況に基づく予想通勤時間を知らせ、ニュースを伝えます。Amazonでの商品の注文も簡単に行えます。一般的なニュース、またはカスタマイズしたニュース、スポーツの試合の最新情報や試合に関するデータを確認できます。Alexaや関連デバイスでできることは、これからまだまだ発展していきます。当社がAlexaで目指すのは、世界で最も有能で豊富な情報を提供するパーソナルアシスタントとして、人びとの暮らしをより便利で豊かにすることです。今後も多くの発明とイテレーションを続けていく中で、方向性が間違っていないかは、いつもお客様が私たちに示してくれます。他にもいくつかのデバイスが進化のさまざまな段階にありますが(先端デジタル・ホーム・セキュリティー・ソリューションのRingとBlink、2021年後半に投入したばかりの最新ホームロボットAstroなど)、Kindle、FireTV、Alexa/Echo、Ring、Blink、Astro等のデバイスはいずれも発明の途上にあり、今後もお客様の暮らしを向上し続ける多くの機能を追加していきます。

Prime Video:メジャースタジオの映画1000本ほどをダウンロードできるAmazon Unboxというサービスを2006年に開始しました。これは当時の帯域幅を考えると理に適ったサービスでした(当時、1作品のダウンロード時間は約1時間)。その後、自宅やモバイルデバイスの帯域幅が飛躍的に拡大し、コネクテッドTVも登場し、ストリーミングの方がお客様にとってはるかに優れたソリューションとなりつつあったことから、ストリーミングにフォーカスすることにしました。2011年に5000本超のストリーミング動画の提供をAmazon プライムの会員向けに開始しました。当初、配信作品はすべて他社のスタジオやエンターテイメント企業が製作したものでした。その契約は高額で、特定の国で期間限定での配信しかできませんでした。選択肢を増やすため、当社はオリジナル番組の製作を開始しました。初期作品は長続きしませんでしたが『アルファ・ハウス』や『ベータス』、その後『トランスペアレント』シリーズが初の受賞作品となり、『マーベラス・ミセス・メイゼル』『ザ・ボーイズ』『BOSCH / ボッシュ』『トム・クランシー/CIA分析官 ジャック・ライアン』など、何シーズンも続くシリーズ作品を製作しました。その過程で、心に残る瞬間が盛り込まれた魅力的なエンターテインメントの製作のほか、機械学習や独創的な技術の活用による質の高いストリーミング体験の提供について多くの学びを得ました(俳優、テレビ番組、映画、音楽、スポーツの試合成績などの便利な関連データを当社独自のX-Ray機能によりクリックするだけで表示できるようにしました)。これは当社の最近のヒット作『ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~』でご覧になった方もいると思いますが、『ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪』(2022年9月のレイバーデー*公開予定)でもご覧いただけるものと考えています。また、2022年9月から毎週ゴールデンタイムにPrime Videoで独占配信するNFL初のストリーミング専用放送『Thursday Night Football』** でも、このイテレーティブ型の発明を採用する予定です。NFLとの契約は11年間です。今後数年間たゆまぬ努力を続け、フットボールファンの皆様のNFL観戦体験を刷新していきます。
*9月2日 **日本での配信予定はありません

このような頻繁な発明の実績により、多くのスポーツ団体にPrime Videoと連携していただいているだけでなく、非常に多くの大手エンターテインメント企業にもPrime Video チャンネルのパートナーになっていただいています。このチャンネルはエンターテインメント企業向けのプログラムで、Prime Video独自のテクノロジーや視聴体験、そして大規模な会員基盤を活用して自社のコンテンツを月額制で提供できるものです。ワーナー・ブラザース、ディスカバリー、パラマウント、Starz、Corus Entertainment、Globoといった企業が、Prime Video チャンネルを通して会員数を大幅に伸ばし、カスタマーエクスペリエンスを向上させています。Prime Videoは当初から大きく前進し、今後の15年間はこれまでの15年間よりもさらに多くの発明が期待できます。当社は、魅力的なコンテンツを最も充実した品揃えで世界中のお客様にご提供するべく、情熱を持って取り組んでいます。これと同じようなイテレーティブ型の発明手法は、人びとや地域のサポートの取り組みにも取り入れることができます。

昨年の夏、当社はリーダーシップ・プリンシプルに2つの新たな項目を追加しました。「Strive to be Earth’s Best Employer」と、「Success and Scale Bring Broad Responsibility」です。この考え方は従来からAmazon社内に暗黙のうちに存在していましたが、リーダーシップ・プリンシプルとして明確に打ち出すことで、本当にこの原則に忠実であるかどうかを自らに問い、すべての職位のAmazon社員が今一度考えることを促しています。

たとえば、当社のフルフィルメント・ネットワークでは100万人以上のAmazon社員が働いています。2018年には最低賃金15ドル(米国連邦政府が定める最低賃金の2倍以上)を支持し、さらにそこから歩みを進めました。現在では初任給の平均時給を18ドル超とするなど、報酬を増やしてきました。

報酬に加え、フルカバーの健康保険、確定拠出年金(401k)、最大20週間の育児休暇、大学進学を希望する社員の学費全額負担(当社での勤務を継続するかどうかにかかわらず)など、福利厚生も充実させています。社員の生活の向上のためにできることはまだまだあります。社員エクスペリエンスのペインポイントについて調査を実施し、トップ100項目をリストアップして体系的に解決するよう進めています。また、フルフィルメント・ネットワークの安全性のさらなる向上にも注力し、体への負担、捻挫、転倒、反復運動過多損傷(RSI)の抑制に取り組んでいます。当社における労働災害の発生率については誤解されることがあります。当社には「倉庫業」および「宅配・配送業」の両方に該当する業務があります。米国で公表されている直近の数値と比較すると、当社の記録災害度数率(recordable incident rate)は倉庫業では平均よりやや高く(それぞれ6.4、5.5)、宅配・配送業では平均よりやや低くなっています(それぞれ7.6、9.1)。つまり同業他社と比較して平均レベルですが、当社が目指すのは平均ではなく、「ベスト・イン・クラス」水準です。私は、現職に就任した当初、フルフィルメントセンターや安全対策チームとかなりの時間を費やし、この数字を速やかに改善する特効薬はないかと考えました。でもそれは見つかりませんでした。当社の規模(2021年だけでも30万人以上を採用し、その多くはこの仕事の経験がなく研修が必要でした)を考えると、当社の望む水準を実現するためには、厳密な分析、十分な検討に基づく問題解決、発明の意欲が必要です。さらなる改善を目指し、一つひとつのプロセスを切り分けて吟味してきました。そして、さまざまなプログラムが進行中です(同じ動作を繰り返す時間が長くなりすぎないようなシフト、危険な体の動きを知らせるウェアラブル、爪先を保護する安全靴、ボディーメカニクスやウェルネス、安全な作業に関する研修プログラムなど)。それでもまだ道半ばであり、カスタマーエクスペリエンスと同じように、さらなる変革的な結果を達成できるまで、学びと発明、イテレーションを継続していきます。結果を出すまで満足することはありません。

同様に、当社のような規模の会社では二酸化炭素の排出量も多くなります。数年前にThe Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約:パリ協定より10年早い2040年までに二酸化炭素排出量を実質ゼロ化する誓約)を立ち上げたのもこれが大きな理由です。この取り組みは大きく進展しています(100%再生可能エネルギーによる業務の遂行を、当初の目標2030年から2025年に5年前倒しして実現できるよう取り組んでいます。また配送用のEVバン10万台以上を発注しました。The Climate Pledgeの賛同企業は300社を超えています)。一方で、当社の事業は多岐にわたっており、また集中的であるため(毎年何十億もの出荷を扱うなど)、多くの他社とは異なる課題にも直面しています。このような課題に全力で取り組んでいきますが、そのためにはたゆみない発明が必要となります。

また、当社が特にプレゼンスを確立している地域では、手に届きやすい価格で購入できる住宅を増やす取り組みも進めています。1年前に始めた20億ドル超のHousing Equity Fundではこれまでに、ワシントン州のピュージェット湾地区、アーリントン(バージニア州)、ナッシュビル(テネシー州)で手に届きやすい価格で住宅を提供するプログラムに12億ドルを拠出しました。

最後にもう一つ簡単にご紹介したいのは、「Kuiper(カイパー)」プロジェクトです。この地球低軌道人工衛星ネットワークの構築に今後、数年で100億ドル以上を投資します。Kuiperは、固定ブロードバンド接続が限られている、または全くない地域のお客様にサービスを提供し、多くの地域で情報やリソースへのアクセスを実現します(アナリストの分析ではこのようなお客様は世界で約3〜4億人と推定されています)。当社にとっても非常に優れたビジネスモデルであると考えていますが、それは今後明らかになるでしょう。長年をかけて機能を強化させていくうちに、サービスが行き届いていない家庭や企業にとって本当に画期的なものとなると考えています。

このようなイテレーティブ型の発明がAmazonの隅々に行き届いています。同じような例は広告、食料品、ゲーム、Amazon Music、Amazon Care(遠隔医療サービス)、Pharmacy(医薬品)などでも見られます。こういった事例はすべて、日々の実験や学び、カスタマーエクスペリエンス改善のための俊敏な取り組みにより、新たなストーリーが今も書き加えられています。

この方法が魅力的だとすれば、それをうまくやるには何が必要か、というのが自然な疑問です。言うは易く行うは難し、ですが、いくつか有効だった点をご紹介します。

1/ 適切なビルダーを採用する:当社ではビルダーの採用にこだわりを持っています。ビルダーは「発明の好きな人」、「カスタマーエクスペリエンスを見て、何がうまくいっていないのかを吟味し、再発明しようとする人」だと考えています。それができないのはなぜか、と問い続ける人を求めています。実験し、試行錯誤し、ローンチはゴールではなく出発点だと考える人を求めています。

2/ ビルダーをできる限り分離可能で自律的なチームに配属する:複数の分野でお客様の求めているものを深く掘り下げていくのは困難です。より成熟した事業とリソースが競合する場合、より可能性の高い方が勝つのが常なので、新たな取り組みに十分時間をかけるのが難しくなります。一つのことに使命を担うチームは、お客様のニーズをよりよく理解し、勤務時間のすべてをお客様のための発明に費やし、俊敏なイテレーションのためのコンテキストとリズム感を創出します。

3/ チームが俊敏に動けるよう適切なツールと許可を付与する:スピードはあらかじめ決まっているものではありません。それはリーダーシップにより選び取るものです。トレードオフはありますが、ある日突然、素早く動き出すことはできません。実験と構築を迅速に進めるための適切なツールを持ち(AWSを始めた主な理由がこれです)、チームがツーウェイドアの(あとからやり直しのきく)決断を自ら下せるようにし、スピードを重要な期待項目として設定する必要があります。スピードは重要です。あらゆる事業の進化のあらゆる段階で本当に重要です。競合他社より動きが遅いと、いずれ取り残されます。

4/ You Need Blind Faith, But No False Hope(見えないものを信じることは必要だが、偽りの希望はいらない):これは私が好きなバンド、Foo Fightersの曲(Congregation)の歌詞の一節です。発明をする時、新しいアイデアは前例がないため拒絶されます(ここで見えないものを信じる力が必要となります)。それと同時に一歩下がってお客様の心に響く、実行可能な計画であることを確認することも大切です(偽りの希望を持たない)。当社には幸い、切磋琢磨するビルダー、お客様の声を聞くためのフィードバックループ、お客様の観点から逆算して製品を開発していくプロセスがあります。そして、プレスリリース(お客様のメリットを具体的に示す)とFAQ(開発経緯を詳述する)を書くことが、偽りの希望を持つことなく、見えないものを信じることを(少なくとも多くの場合)可能にしてくれます。

5/ お客様に喜んでいただける最小限の製品(MLP: Minimum Loveable Product)を定義し、迅速なイテレーションを心がける:ローンチの線引きの判断はチームにとって最も困難な決断の一つです。ローンチ前に時間をかけ過ぎたり、オプション機能にこだわりすぎたりしがちですが、そうすることで一番手としてのメリット(First Mover Advantage)や、急速に進展する市場セグメントでマインドシェアを確立するチャンスを掴み損ね、うまく実行を重ねる他社に大きく水をあけられてしまいます。ローンチ製品は最初から喜んでいただけるのに十分な製品でなければなりません(これを「実用最小限の製品(MVP: Minimum Viable Product)」に対し「お客様に喜んでいただける最小限の製品(MLP)」と呼んでいます)が、新しい市場セグメントではこのMLPをお客様に提供し、その後、迅速にイテレーションを進める方がうまく行く場合が多いのです。

6/ 長期的な道筋を描く:Amazonはなかなか打ち切りにしないとしばしば批判されます。確かに当社は投資については他社より辛抱強いと言えます。しかし、革新的な発明には何年もかかることを私たちは知っています。カスタマーエクスペリエンスを(そして自社を)大きく変えうると信じ、大きな賭けに出るのであれば、早々にあきらめてしまうのではなく、腰を据えて取り組まなければなりません。

7/ 失敗を覚悟する:多くの発明には、思うより多くの失敗が伴います。誰も失敗を好みませんが、どうしてもついてくるものです。ローンチしたものがうまくいかないと分かった場合、うまくいかなかった部分から学び、取り組んだチームメンバーにとってよい着地点を確保することが大切です。そうでなければ、新たな取り組みにおいて、優秀な人材が躊躇してしまうからです。


アルバート・アインシュタインは、複利について「世界8番目の不思議」と表現しました(「知っている者はそれで儲け、知らない者はそれを払う」)。イテレーティブ型の革新にもこれと同じようなことが言えると考えています。イテレーティブ型の革新はお客様にかける魔法のようなものです。常にお客様のためのプロダクツ(製品・サービス)を発明し改善することで、カスタマーエクスペリエンスに、そして事業の将来に複利的な効果がもたらされます。

複利を得るための味方は時間です。Amazonは大規模な事業をいくつも展開する大企業ですが、まだ黎明期の段階なのです。当社はこれからも現在の事業、これから立ち上げる新たな事業、今は想像もできないような新たなアイデアにおいて発明を続け、革命を起こしていきます。Amazonは今日も「Day 1」です。

Amazon.com, Inc.社長兼CEO
アンディ・ジャシー

追伸:これまでの慣例にならい、1997年に初めて発行した株主への手紙を以下に添付します。1997年に書かれた内容は今も生き続けています。

*この2021 Letter to Shareholdersの日本語版は、2022年4月14日に公開された英語版を参照用に翻訳したものです。日本語版が英語版と矛盾又は抵触した場合、英語版の内容が優先します。

Amazon.con logo with text below it that reads "1997 letter to shareholders (Reprinted from the 1997 annual report)"

To our shareholders:

Amazon.com passed many milestones in 1997: by year-end, we had served more than 1.5 million customers, yielding 838% revenue growth to $147.8 million, and extended our market leadership despite aggressive competitive entry.

But this is Day 1 for the Internet and, if we execute well, for Amazon.com. Today, online commerce saves customers money and precious time. Tomorrow, through personalization, online commerce will accelerate the very process of discovery. Amazon.com uses the Internet to create real value for its customers and, by doing so, hopes to create an enduring franchise, even in established and large markets.

We have a window of opportunity as larger players marshal the resources to pursue the online opportunity and as customers, new to purchasing online, are receptive to forming new relationships. The competitive landscape has continued to evolve at a fast pace. Many large players have moved online with credible offerings and have devoted substantial energy and resources to building awareness, traffic, and sales. Our goal is to move quickly to solidify and extend our current position while we begin to pursue the online commerce opportunities in other areas. We see substantial opportunity in the large markets we are targeting. This strategy is not without risk: it requires serious investment and crisp execution against established franchise leaders.

It’s All About the Long Term

We believe that a fundamental measure of our success will be the shareholder value we create over the long term. This value will be a direct result of our ability to extend and solidify our current market leadership position. The stronger our market leadership, the more powerful our economic model. Market leadership can translate directly to higher revenue, higher profitability, greater capital velocity, and correspondingly stronger returns on invested capital.

Our decisions have consistently reflected this focus. We first measure ourselves in terms of the metrics most indicative of our market leadership: customer and revenue growth, the degree to which our customers continue to purchase from us on a repeat basis, and the strength of our brand. We have invested and will continue to invest aggressively to expand and leverage our customer base, brand, and infrastructure as we move to establish an enduring franchise.

Because of our emphasis on the long term, we may make decisions and weigh tradeoffs differently than some companies. Accordingly, we want to share with you our fundamental management and decision-making approach so that you, our shareholders, may confirm that it is consistent with your investment philosophy:

  • We will continue to focus relentlessly on our customers.
  • We will continue to make investment decisions in light of long-term market leadership considerations rather than short-term profitability considerations or short-term Wall Street reactions.
  • We will continue to measure our programs and the effectiveness of our investments analytically, to jettison those that do not provide acceptable returns, and to step up our investment in those that work best. We will continue to learn from both our successes and our failures.
  • We will make bold rather than timid investment decisions where we see a sufficient probability of gaining market leadership advantages. Some of these investments will pay off, others will not, and we will have learned another valuable lesson in either case.
  • When forced to choose between optimizing the appearance of our GAAP accounting and maximizing the present value of future cash flows, we’ll take the cash flows.
  • We will share our strategic thought processes with you when we make bold choices (to the extent competitive pressures allow), so that you may evaluate for yourselves whether we are making rational long-term leadership investments.
  • We will work hard to spend wisely and maintain our lean culture. We understand the importance of continually reinforcing a cost-conscious culture, particularly in a business incurring net losses.
  • We will balance our focus on growth with emphasis on long-term profitability and capital management. At this stage, we choose to prioritize growth because we believe that scale is central to achieving the potential of our business model.
  • We will continue to focus on hiring and retaining versatile and talented employees, and continue to weight their compensation to stock options rather than cash. We know our success will be largely affected by our ability to attract and retain a motivated employee base, each of whom must think like, and therefore must actually be, an owner.

We aren’t so bold as to claim that the above is the “right” investment philosophy, but it’s ours, and we would be remiss if we weren’t clear in the approach we have taken and will continue to take.

With this foundation, we would like to turn to a review of our business focus, our progress in 1997, and our outlook for the future.

Obsess Over Customers

From the beginning, our focus has been on offering our customers compelling value. We realized that the Web was, and still is, the World Wide Wait. Therefore, we set out to offer customers something they simply could not get any other way, and began serving them with books. We brought them much more selection than was possible in a physical store (our store would now occupy 6 football fields), and presented it in a useful, easy- to-search, and easy-to-browse format in a store open 365 days a year, 24 hours a day. We maintained a dogged focus on improving the shopping experience, and in 1997 substantially enhanced our store. We now offer customers gift certificates, 1-Click shopping℠, and vastly more reviews, content, browsing options, and recommendation features. We dramatically lowered prices, further increasing customer value. Word of mouth remains the most powerful customer acquisition tool we have, and we are grateful for the trust our customers have placed in us. Repeat purchases and word of mouth have combined to make Amazon.com the market leader in online bookselling.

By many measures, Amazon.com came a long way in 1997:

  • Sales grew from $15.7 million in 1996 to $147.8 million – an 838% increase.
  • Cumulative customer accounts grew from 180,000 to 1,510,000 – a 738% increase.
  • The percentage of orders from repeat customers grew from over 46% in the fourth quarter of 1996 to over 58% in the same period in 1997.
  • In terms of audience reach, per Media Metrix, our Web site went from a rank of 90th to within the top 20.
  • We established long-term relationships with many important strategic partners, including America Online, Yahoo!, Excite, Netscape, GeoCities, AltaVista, @Home, and Prodigy.

Infrastructure

During 1997, we worked hard to expand our business infrastructure to support these greatly increased traffic, sales, and service levels:

  • Amazon.com’s employee base grew from 158 to 614, and we significantly strengthened our management team.
  • Distribution center capacity grew from 50,000 to 285,000 square feet, including a 70% expansion of our Seattle facilities and the launch of our second distribution center in Delaware in November.
  • Inventories rose to over 200,000 titles at year-end, enabling us to improve availability for our customers.
  • Our cash and investment balances at year-end were $125 million, thanks to our initial public offering in May 1997 and our $75 million loan, affording us substantial strategic flexibility.

Our Employees

The past year’s success is the product of a talented, smart, hard-working group, and I take great pride in being a part of this team. Setting the bar high in our approach to hiring has been, and will continue to be, the single most important element of Amazon.com’s success.

It’s not easy to work here (when I interview people I tell them, “You can work long, hard, or smart, but at Amazon.com you can’t choose two out of three”), but we are working to build something important, something that matters to our customers, something that we can all tell our grandchildren about. Such things aren’t meant to be easy. We are incredibly fortunate to have this group of dedicated employees whose sacrifices and passion build Amazon.com.

Goals for 1998

We are still in the early stages of learning how to bring new value to our customers through Internet commerce and merchandising. Our goal remains to continue to solidify and extend our brand and customer base. This requires sustained investment in systems and infrastructure to support outstanding customer convenience, selection, and service while we grow. We are planning to add music to our product offering, and over time we believe that other products may be prudent investments. We also believe there are significant opportunities to better serve our customers overseas, such as reducing delivery times and better tailoring the customer experience. To be certain, a big part of the challenge for us will lie not in finding new ways to expand our business, but in prioritizing our investments.

We now know vastly more about online commerce than when Amazon.com was founded, but we still have so much to learn. Though we are optimistic, we must remain vigilant and maintain a sense of urgency. The challenges and hurdles we will face to make our long-term vision for Amazon.com a reality are several: aggressive, capable, well-funded competition; considerable growth challenges and execution risk; the risks of product and geographic expansion; and the need for large continuing investments to meet an expanding market opportunity. However, as we’ve long said, online bookselling, and online commerce in general, should prove to be a very large market, and it’s likely that a number of companies will see significant benefit. We feel good about what we’ve done, and even more excited about what we want to do.

1997 was indeed an incredible year. We at Amazon.com are grateful to our customers for their business and trust, to each other for our hard work, and to our shareholders for their support and encouragement.

Jeffrey P. Bezos
Founder and Chief Executive Officer
Amazon.com, Inc.

 
 
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