10周年を迎えたKindle電子書籍リーダーと、Fireタブレット

AmazonのKindle電子書籍リーダーFireタブレットが日本で初めて発売されたのは2012年のこと。デバイスとあわせて、電子書籍を販売するKindle本ストアも同時にオープンしました。紙に加えて、デジタルでも本や雑誌、マンガを読むという文化が根付いてきたこの10年間。現在では取り扱うコンテンツのラインアップは700万冊を超えるまでに拡大しており、ストアのサービスも進化しています。

そこで今回は、Amazonが日本の読書好きの皆様に寄り添い、改善を重ねてきた10年の歩みを振り返るべく、電子書籍ビジネスが日本に登場して以降の読書文化の変遷と、Amazonの取り組みについて、アマゾンデバイス事業本部 Kindle・Fire タブレット・アクセサリー事業部事業部長の清水文弥さんに話を聞きました。

KindleとFire 7タブレット

電子書籍の普及で、読書に大きなイノベーションが起きた10年間

――この10年間、電子書籍やデジタルコンテンツをめぐる状況は大きく変わりました。その変化について清水さんはどのように捉えられていますか。

「あらゆる分野でコンテンツのデジタル化とそれを取り巻く環境、デバイスが進化を遂げた10年間だったと感じています。スマートフォンやタブレット、電子書籍リーダーなどのデジタルデバイスが普及したこと、そして24時間インターネットに常時接続できる環境が整ったことによって、リアルタイムに情報を取得する、ダウンロードしておいたコンテンツを移動中などに読んだり、遊んだりするといった、新しいコンテンツの楽しみ方が生まれました」

――Kindleシリーズのような電子書籍リーダーやFireタブレットシリーズを始めとしたタブレットの普及によって人々の読書スタイルはどのようにかわったのでしょうか?

サイクリング先でKindleを使い読書を楽しむ人

「場所や時間といった制限が取り払われて、読書の楽しみ方、選択肢が増えました。たとえば以前は、街中で本の広告を見て、あの本、読んでみたいなと思ったときに、本屋さんに行って購入していましたが、今は電子書籍が登場したことによって、デバイスがネットに接続していればいつでもどこでも本を購入し、ダウンロードして読めるようになりました。特にここ数年はなかなか外出できない状況が続いていましたので、場所や時間に縛られず読書を楽しめる電子書籍は、お客様のお役に立てたのではないかと思います。また電子書籍は本の重さという制限も取り払いました。デバイスによって若干差はあるでしょうが、KindleシリーズやFireタブレットシリーズには数千冊の本※1を保存することができます。言うなれば本棚をそのまま持ち歩くようなものです。

このように電子書籍、そしてそれを取り巻く環境やデバイスによって読書をする上でのさまざまな制限が解消され、お客様の希望に応じたさまざまな読書の楽しみ方ができるようになったのが、この10年の大きな変化だと感じています」
※1 一般的な書籍の場合、数千冊保存が可能です。Fireタブレットにおいては、Kindle本以外のコンテンツなどにメモリが使用されていないことを前提にしています。

Amazonはお客様へ選択肢を増やすお手伝いをしてきた

Kindleを手に話す清水さん

――電子書籍リーダーであるKindleシリーズがアメリカで発売されたのが2007年。それから5年後の2012年というタイミングは、日本では満を持しての発売といった感じだったのでしょうか。

「そうですね。日本で発売される以前は、日本での販売をご要望される声を数多く聞いていました。

AmazonのKindle電子書籍リーダーが提供できた価値というのは『豊富なラインアップから本を選べること』ではなかったかと思います。Kindleシリーズはアメリカでは2007年からサービスを開始していたので、当初は洋書が多かったと思いますが、豊富なコンテンツをすでに取りそろえることができていました。その上で、さらに日本語のコンテンツを、日本のお客様にお届けするため、準備期間もたっぷりと設けました。アメリカと比べると5年間のブランクがあったわけですが、お客様に十分な選択肢をご提供できる状態で、サービスを開始することができたと思っています」

――日本で最初に発売されたのが、Kindle Paperwhite(第5世代)。そこからさまざまなモデルが登場していったわけですが、形だけですと現行機とそこまで大きく変わらないようにも見えますね。

歴代のKindleが並ぶ
左から日本で最初に発売されたKindle Paperwhite(2012)、Kindle Oasis(2016)、Kindle Paperwhite マンガモデル(2016)、Kindle Paperwhite シグニチャーエディション(2021)

「薄さや軽さを向上させたり、ベゼルという画面の周りを囲む淵の部分を薄くしたりと、デザインも新商品が出るたび、向上させています。さらに、性能や機能もいろいろと進化しています。常にその両方から進化させている理由は、Kindle電子書籍リーダーが『お客様に究極の読書体験を提供する、読書に没頭するためのデバイス』というコンセプトにもとづいて設計されているからです。読書を阻害するような要素をどんどん排除し、さらに持ちやすさ、運びやすさを追求した結果、日本にはそのコンセプトをある程度体現した状態でデバイスが投入されました。

もちろん、現在の形に至るまでには多くの試行錯誤がありました。アメリカで発売されていた初期のモデルには、キーボードが付いていたり、雑誌を読むような大きなディスプレイが付いていたりと、その時々のニーズに応じて商品化され、試行錯誤した跡が見られて、面白いですよ」

初期モデル。下部にキーボードのボタンがついたものが多い
アメリカで発売された初期のモデル(日本未発売)

――性能面ではどのように進化していますか?

「まず、反応速度ですね。特にマンガのようなコンテンツですと頻繁にページをめくることになりますので、快適に読書を楽しめるように反応速度を向上させています。また、可読性についてもこだわっています。スクリーンの表現力を高め、色味や文字の見え方など紙の本のような読み心地を実現したり、暗闇の読書でも目の疲れを軽減できるよう、LEDで画面を照らすフロントライトを搭載したり、周辺の環境によって画面の明るさを調整するようにしたり。LEDも、光にムラが出ないよう、最適のバランスで配置しています。またお風呂やプールサイドで本が読めるように、防水機能搭載のモデルも出ています。そのほか、wifiへのつながりやすさなど、目に見えない部分も含め、読書体験の向上のための細かな改善をいくつも重ねています」

――Kindleシリーズには便利な機能もたくさん搭載されていますね。

「その通りです。たとえばお客様に意外と知られていないのが、語学学習のための機能。まずKindleシリーズには辞書機能があり、辞書を事前にダウンロードしておけばオフラインの状態でもKindle端末から直接単語の意味を調べることができます。また、辞書で調べた単語はデバイス内の『単語帳』に自動的に保存され、オリジナルの単語帳を作れることもできます。さらに『Word Wise』機能をオンにすると、難しい単語の上に簡単な意味を表示してくれます※2。Kindleシリーズを、読書のみならず、学びのツールとしても活用していただきたいというのが、私たちの思いです」
※2 Word Wiseの設定の方法は、「Word Wiseで難しい単語のヒントを見る」をご確認ください。また、利用にはwifiネットワークへの接続が必要になります。Word Wiseに対応していない本もあります。

――Fireタブレットシリーズはこの10年でどのような進化をたどってきましたか。

「大きな変化は2014年頃を機に、ハイスペック路線から、高コスパタブレット路線へと変更したことですね。当初のFireタブレットは、高解像度のディスプレイ、高速CPU、強度があって軽い素材など、最新技術を取り入れたハイスペックのデバイスを志向していました。しかし、そこまでの高性能をお客様は本当に求めているのだろうかと考えた時に、ショッピングやPrime VideoAmazon Musicなど、Amazonのサービスを利用するのに適した、高コスパなタブレットを目指した方が、よりお客様にとってメリットが大きいのではないかと思い至りました。そこで商品コンセプトを一新したところ、多くのお客様に受け入れていただけて、結果、Fireタブレットシリーズの認知度が上がったのではないかと感じています。また、より明るく鮮やかに、より高速に、より長時間稼働にと、スペックも進化し続けると同時に、デバイスにAlexaを搭載するなど、さらに使いやすいタブレットへと成長しています」

Fireタブレットシリーズのパッケージと本体たち
左から日本で最初に発売されたKindle Fire(2012)、Fire HD 7(2014)、Fire HDX 8.9(2014)、Fire HD 10(2021)

――Kindle本ストアは10年間でどのように変化していますか。

「コンテンツのセレクションもさらに充実しており、今では、小説、ビジネス書、マンガ、雑誌から、無料で読めるコンテンツまで700万冊以上の電子書籍を取り揃えています。また、サービスも向上しています。プライム会員であれば、無料で千冊以上の電子書籍・マンガ・雑誌などが楽しめるPrime Readingの展開や、Kindle日替わりセールや月替わりセールなども特長の1つです。さらに、いろいろな本を読んでみたいという読者好きのお客様に向けて月額980円で200万冊以上の本が読み放題となる、Kindle Unlimitedを2016年にリリースしたのも、センセーショナルだったかと思います。一方、本を執筆されている著者の方向けのサービスとして、『Kindleダイレクト・パブリッシング』もこの10年でサービスを拡大しており、お客様にはKindle本ストアでしか読めないコンテンツや、インディーズ無料マンガなど豊富なセレクションをお届けしています」

――KindleシリーズやFireタブレットシリーズを日本で展開していく中で、印象に残っている施策はありますか?

「日本のオリジナルとして結果を残せたと感じているのが、2016年10月に日本限定で発売したKindleのマンガモデル(Kindle Paperwhite Manga Model)です。日本ではマンガコンテンツが電子書籍市場を大きくけん引していたこともあり、マンガ好きのお客様からさまざまな要望、たとえば、マンガをたくさんダウンロードできるように容量を増やして欲しい、などのリクエストをいただいていました。そういったニーズを吸い上げて開発したのが、マンガモデルです。高速でページをめくる機能や、ボディには当時欧米では珍しかった白を採用し、そして最大の特徴は32GBの大容量ストレージを備えていること。それまでKindleの容量は8GBが最大でしたが、マンガモデルの登場をきっかけとして、Kindle電子書籍リーダーに32GBのモデルがラインアップされるようになりました。また、通勤や国内出張に電車を利用されている方が多い日本では、Fireタブレットシリーズの広告メッセージに、最大10時間持続するバッテリーをハイライトさせるなど、マーケティング施策を日本向けに工夫しました」

これからも変わらず、お客様の要望をもとにイノベーションを起こしていきたい

――最後に、KindleシリーズとFireタブレットシリーズに関する今後の展望について教えていただけますか。

「Amazonはこの10年間、読書好きのお客様にとっての選択肢を広げることに取り組んできました。たとえば2019年に発売したKindleシリーズと、Fireタブレットシリーズにそれぞれキッズモデルを出したこともその一例です。キッズモデルは、1000冊以上の子ども向けの本を含めた、数千点のキッズ向けコンテンツが使える、Amazon Kids+という定額サブスクリプションサービスが1年間使い放題で楽しめて、さらにペアレンタルコントロールも利用できるので、保護者の方が安心してお子さんに渡せるデバイスです。子どもたちが読書に親しむきっかけとなって欲しい、そして探究心や好奇心を育むためのツールとなって欲しいという、私たちの想いが込められています。

新しいKindleとそのスクリーン
新しく発売されるKindle電子書籍リーダーは、これまで以上に軽く、薄く、そしてスクリーンの解像度が向上したエントリーモデルとなっている

方針はこれまでと変わりません。お客様が何を望まれているのか、お客様にとっての選択肢を広げていくためにはどうすればいいのか、そして読書
に没頭し楽しんでいただくためにはどうすればいいのか。常に考えながら、誰もが不自由なく、読書を楽しめるよう、引き続きイノベーションを起こし続けていければと思います」

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