株式会社森林生活は、岐阜県の飛騨川流域の特産「東濃ひのき」のチップを使った枕などヒノキや木材を活用した商品が人気の企業です。Amazonの担当者からサポートを受けたことを機に、「ひのきまくら」の売り上げが急増。間伐材の活用で林業を支え、新たな雇用を生み出してきた代表取締役の今井康徳さんと、製造管理とAmazonでの販売を担当する山下陽介さんに、人気商品が生まれた背景にある商品へのこだわりと地元への思いをうかがいました。

歴史ある東濃ひのきの間伐材を生かす商品を製造販売

代表取締役の今井康徳さんは、「自然の力をたくさんの人に伝えて、癒されて欲しい。そんな思いでひのきまくらを作っています。ヒノキは日本にしかない貴重な木で、私たちの製品は、木を育て、林を守るために必要な作業・間伐(かんばつ)で発生する間伐材を活用するアイデアから生まれました」と話します。

森林生活は、室町時代から高級ヒノキの産地として知られる岐阜県下呂市にあります。この地域の「東濃ひのき」は香りが高く、年輪の細かさから粘り強さと狂いの少なさを持つ高級建材として、伊勢神宮や江戸城などの歴史的建造物にも使われてきました。

森林生活は、東濃ひのきをキューブ状に加工・研磨し、チップとして枕に詰め、「ひのきまくら」の名称で商品化。2019年2月から、Amazonで販売を始めました。香りが高い東濃ひのきを使った枕は人気商品に成長しています。

森林生活
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今井さんは発売当初、ひのきまくらを3年ほどかけて主力商品に育てようと考えていました。その理由は、森林生活の成り立ちが関係しています。

森林生活の親会社にあたる「飛驒フォレスト」は、今井さんの父が1995年に創業しました。起業のきっかけは、ひのきチップを芯材に使った「ひのき畳」の開発製造に成功したことです。林業の大きな課題である間伐材の再活用のため、今井さんの父が試行錯誤し、約10年の歳月をかけて製品化したものでした。

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写真: 飛騨フォレスト株式会社提供
ひのきの間伐材を薄くチップ状にスライスし、麻布で挟み縫い付けて畳の芯材にしたひのき畳。接着剤を使用しない加工法で特許を取得している
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写真: 飛騨フォレスト株式会社提供
親会社の飛騨フォレストでは、ひのき畳をつかったオーダーメード家具などを販売している
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写真: 飛騨フォレスト株式会社提供
ひのき畳をつかったオーダーメード家具の一例

「ひのき畳は、販売が安定するまで10年ほどかかりました。父から会社を受け継いだ私は、飛驒フォレストがひのき畳の技術を応用した家具のオーダーメイドがメインだったことから、もっと気軽に購入いただける商品も作ろうと、機械生産が可能な小型商品の会社として、森林生活を立ち上げました。初めての商品がひのきまくらだったので、ひのき畳と同じように、ゆっくり育てていこうと考えていたのです」(今井さん)

ひのきまくらのポイントは、角をとったキューブ状に研磨できる7㎜という限界ぎりぎりのサイズにこだわり、寝心地の良い枕にしたことでした。父の代から手間を惜しまず、ヒノキをいろいろな形状に加工する、長年の工夫とノウハウの蓄積がひのきまくらには詰まっているのです。

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約7ミリ角に加工し、角を取ることで、肌にあたる感触を柔らかくしている
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ひのきまくら

Amazonからのコンタクトがビジネスの転機に

Amazonで販売を開始してから1年ほどは、ひのきまくらの売り上げは月に数個程度でした。ところが、転機が訪れます。Amazonの担当者から連絡があったのです。製造販売を担当する山下さんは、当時のやり取りをこう話します。

「Amazonの担当者から商品ページを作り込んだほうがいいとアドバイスされました。ひのきまくらの魅力がもっとお客様に伝わるように、商品の写真や情報を増やしたほうがいいと言うのです。その言葉通りにページを作ってみたら、販売数がぐんと伸びて驚きました」(山下さん)

それまで山下さんは、Amazonに商品の写真を増やしたり、情報を詳しく記載できたりするテンプレートがあることは知っていましたが、モノづくりに関わる業務に時間を取られ、なかなか着手できませんでした。しかし、アドバイスに背中を押され、いざやってみると、思っていた以上に操作は簡単で、Amazonのページデザインがシンプルなことにも好感を持ちました。商品写真や情報が際立ち、自分たちの思いがストレートに伝わりやすいからです。一つの商品情報をしっかり作り込むと、他の商品に転用できることも便利でした。

「何よりもAmazonの担当者が、私たちの商品をとても気に入ってくれていたようなんです。私たちと一緒に人気商品に育てていきたいという気持ちが、アドバイスからも伝わってきて、うれしかったです。その後押しで、いろいろチャレンジしてみようという意欲も生まれました」(山下さん)

その後、山下さんたちは、Amazonが商品の保管から注文処理、配送、返品に関するカスタマーサービスまでを代行する「フルフィルメント by Amazon(FBA)」の導入も検討するようになりました。自社配送のほうが利益率が高いと考えていましたが、FBAを利用すると、Amazonの配送品質で商品のお届けができるため商品表示にPrimeマークがつくことから、Amazon.co.jpで商品の表示率が上がったり、検索で上位にヒットされるようになったりと、物流を委託できるだけでなく、販促面でもメリットがあることを知ったからです。

「実際にFBAを使ったところ、売り上げが5〜6倍も伸びたのには驚きました。同時期に開始した広告も簡単に制作でき、予算枠を決めれば、Amazonが自動表示してくれるのも助かりました。これまで苦労していた販促活動が、自分一人の作業で、少ない予算から露出増が可能になり、売り上げも伸ばすことができました。導入直後に新型コロナが流行し、巣ごもり需要が重なったのかもしれませんが、FBAの利用が会社の信用度を高めてくれた影響もあると思っています」(山下さん)

Amazonのレビューも貴重な情報源として活用しています。特に厳しいレビューが書かれたときは、その日のうちに印刷して掲示し、社内で改善策を検討。数日以内に解決するようにしています。

「レビューが改善につながった例の一つは、枕の補充用に販売しているひのきチップのパッケージです。当初は市販のジッパー式保存袋を使っていましたが、輸送中に中味がこぼれ出すことが、レビューからわかったのです。そこで、熱で圧着するシーラータイプに変え、同時にオリジナルデザインの袋を採用し、ブランド力を高めました」(山下さん)

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代表取締役の今井康徳さん(左)と、製造管理とAmazonでの販売を担当する山下陽介さん(右)

地元の活性化と林業の支援にも力を入れる

森林生活と飛驒フォレストでは、社員の平均年齢が40代前半と地元企業のなかでは若めです。ひのきまくらの販売開始後、3名の女性従業員を雇用し、最近はさらに1名のアルバイトが増えました。また、地元の障害者施設に枕カバーのアイロン掛けなどの仕事を依頼しています。

「暮らしを豊かにする商品なので、女性従業員の意見は参考になります。幼いお子さんがいる従業員も、フレックスな働き方ができる職場に魅力を感じてくれているようで、ありがたいです」(今井さん)

そしてもう一つ、森林生活が大切にしているのが、林業の支援と地域の活性化です。最近、商品のラインナップに加わった、キャンプや薪ストーブに使える焚き付け用の「天然乾燥ひのき」も、ひのきまくらをつくる工程でどうしても出てしまう半端なサイズの木材を無駄なく使いたいという考えから生まれました。

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「Amazonでの販売増が、本格的な商品化を後押ししてくれました。以前から地元では販売していたのですが、Amazonで販売するにあたり、長さと形を揃え、パッケージも洗練されたデザインに変えて売り出したのです。油分が多く燃えやすいヒノキは焚き付けに最適ですし、おかげさまで好評で、ひのきまくらに次ぐ主力商品になっています。その他にも、ひのきチップの研磨過程で生じるひのきの粉もなんとか商品化できないか、検討しているところなんです。今後も林業とお客様の生活を豊かに結ぶ商品をたくさん生み出していきたいですね」(今井さん)

山下さんたちは、下呂市や岐阜ブランドの認知を高めることに貢献したいという考えから、岐阜県の企業が生産する東濃ひのきのボディソープや木製玩具などを自社サイトで販売しています。こうした取り組みが評価され、行政から特産品を広めるための相談を受けることも多いそうです。

「今の日本の林業は補助金なしでは成り立たない産業になっています。それをなんとか解決したいと思っています。私たちが東濃ひのきを商品化することで付加価値を生み、販売していけば、木材を今よりも高い適正価格で購入することが可能になります。林業に従事する方たちへの還元につながるサイクルを作ることも、私たちの理想であり、目標なのです」(今井さん)