地場産業の多くが人手不足や需要の減少といった課題を抱える中、Amazonのサービスを活用したDXは、どのように課題解決に貢献しているのでしょうか? 今回は、東京都のガラス製品と広島県の畳という2つの地場産業にフォーカスし、中小企業のDXを紹介します。

日本とヨーロッパの感性を融合させたガラス製品をAmazonで販売

東京都江戸川区にある株式会社タブローは、彫刻硝子や江戸切子、江戸硝子といったガラス製品を企画・製造・販売するブランド「太武朗工房」を展開し、Amazonで販売を行っています。「アールヌーボー期に活躍したガラス工芸家、エミール・ガレの作品にインスパイアされ、絵画のように美しい模様の彫刻硝子を作り始めたのが当社のルーツです」と代表取締役の竹田誠さんは振り返ります。

工場の中に立つ黒いパーカーを着た男性。背後で職人が作業をしている
株式会社タブロー 代表取締役・竹田誠さん

竹田さん「江戸切子をはじめ、ガラス製品は江戸川区や江東区、墨田区で発展を遂げてきました。江戸時代にさかのぼる歴史の中で、1989年創業の当社は後発ブランド。だからこそ、日本とヨーロッパの感性を融合させる新しいコンセプトを打ち出すことができました」

同社は1989年から江戸切子を製造していますが、その背景には地場産業としての変遷が深く関係しています。

竹田さん「バブル期以降、ガラス製品の需要は減少し、廃業したガラス工場や職人は数えきれません。一方で、かつては大手メーカーの専属だった江戸切子の職人に、当社のような後発ブランドでも仕事を依頼できるようになりました。そうした時代の変化に勝機を見出し、再び地場産業を活性化させたいという想いで今日までやってきました」

ブドウの柄の色付きガラスが施された繊細な色合いのグラス
アールヌーボー期の硝子作品に影響を受けた彫刻硝子
左から黒、青、赤色の江戸切子のグラス
江戸切子は豊富なカラーバリエーションを揃え、幅広いニーズに対応している
富士山の絵柄をあしらったグラス
江戸時代から親しまれている伝統的なモチーフを刻んだ江戸硝子

Amazonは商品特性にかかわらず、多くのお客様にリーチできる

社会の変化は、販路にも影響を及ぼしています。

竹田さん「当社は問屋を通じて全国の百貨店に流通させる卸販売と、企業が提供する景品や記念品などを製造するOEMの2本柱で30年以上やってきました。けれど、コロナ禍による百貨店の休業などの影響もあり、ここ数年で商流は劇的に変化しています」

同社がAmazonに出品を開始したのは2016年。「現在ではAmazonをはじめとするECでの売上が卸販売とOEMを上回り、新たな販路の柱になりました」と竹田さんは言います。

竹田さん「Amazonに出品する以前、百貨店のオンラインショップで商品を販売したことはあったのですが、当社の商品はお客様がじかに触れて購入する特性があるのだと思い込んでいました。そんな中、将来を見越してAmazonに出品してみたところ、予想以上に注文が入って驚きました。商品特性にかかわらず、多くのお客様にリーチできるAmazonのすごさを実感しましたね」

Amazonにおける同社の商品のニーズは、6割ほどをギフトが占めていると言います。

竹田さん「Amazonで商品を購入する際、ギフト設定をするとギフトラッピングや熨斗(のし)のシールに対応してくれます。美しいデザインや手仕事の丁寧さが、大切な人への贈り物に喜ばれているようです。発送はAmazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や商品に関するカスタマーサービスを代行してくれるフルフィルメント by Amazon(FBA)にお任せできるので、非常に助かっています」

Amazon出品後、同社はマーケットプレイス コンサルティングサービスの利用も開始し、「コンサルタントのアドバイスをもとに広告を利用したところ、広告費に比例して売上が伸びました」と竹田さんは続けます。

手元にライトを灯し、カット加工の作業をする職人
伝統工芸士をはじめ、職人による繊細な手仕事によって美しい模様が生み出される
赤い江戸切子のグラスのクローズアップ。シャープな切り込みが見える
高度なカット技術が特徴の江戸切子は、2002年に国の伝統工芸品に指定された

Amazonなら商品の魅力をしっかりと深掘りして伝えることができる

Amazonのコンサルタントのアドバイスは、さまざまな面で役に立っていると言います。

竹田さん「広告面はもちろん、ブランドとしての戦略に関する相談にも乗ってもらいました。アドバイスをもとにAmazonブランド登録に登録し、ストア機能でブランドページを作成することで、商品の魅力を深掘りすることができています。2023年には自社ECを開設しましたが、Amazonでの経験や知見が大いに役立ちました」

Amazonでの販売経験は、「視野が広がり、自身の成長につながりました」と竹田さんは言います。

竹田さん「Amazonはブランドの世界観をお客様に伝え、商品の魅力を深掘りできることが大きなメリットです。当社には百貨店の催事などでお客様とコミュニケーションを取りながら販売した経験もあります。そこではお客様がどんなところに惹かれるか、購入を決めるポイントはどこかを学んできました。ECでの販売と対面販売のノウハウを活かし、ハイブリッドな販売方法を実践できるようになりました」

Amazonを活用したDXの先に、竹田さんは地場産業の活性化を見据えています。

竹田さん「同じ料理でも、美しい器に盛りつければ気分が華やぎ、毎日が豊かになる。そんなガラス製品の魅力を、Amazonならしっかりと伝え、多くのお客様に商品を届けることができます。近年は雇用も増やし、職人の育成にも力を入れ始めました。そうした取り組みが、地場産業を盛り上げる一助になればうれしいですね」


100年を超える歴史と技術に裏打ちされた畳をAmazonで販売

広島県は備後畳表の産地として知られ、かつては宮中や幕府に献上されるほど高い評価を得ていました。しかし、10年ほど前には地場産業として存続の危機に陥ったといいます。広島県で1916年から畳の製造を手がけ、Amazonで販売している広浜(こうひん)株式会社の代表取締役・上川力さんは、地場産業としての変遷をこう語ります。

畳が並ぶ工場に立つスース姿の男性
広浜株式会社 代表取締役・上川力さん

上川さん「海外製の畳が進出してきて価格競争に巻き込まれ、畳の原料であるイグサの農家はずいぶん減りました。創業当時は広島県産のイグサを使っていましたが、現在は他県から仕入れています。住環境は洋風が主流となり、畳の需要が減っていることも確かです。最近では、畳を見たことのない子どももいるそうですね」

同社はそうした時代の変化に対応し、畳の魅力を伝え続けている。

上川さん「イグサはメンテナンスに手がかかるので、それに代わる樹脂や和紙の素材を使ったり、商品ラインナップも洋風の住環境に合う畳のベッドや小上がり、置き畳などを開発したりしています。もちろん、変わらないものもあります。保温・断熱性に優れ、空気清浄・調湿効果を持つイグサの魅力。そして、ミリ単位で畳のサイズを調整できる職人の技術力や品質管理にもこだわり続けています」

リビングに置かれたこあがりのための畳。洋風のインテリアになじんでいる
和モダンスタイルの畳ベッドなど、ライフスタイルの変化に合わせた商品を開発
木製のスツールの座面が畳でおおわれている。その上にコースターほどの大きさの畳が色違いで3種
畳のスツールと、テーブルの脚の下に敷いて畳の凹みを防ぐ座卓敷はいずれも和紙製
畳が積まれ、整理整頓されている倉庫のような空間
畳の品質を落とさないよう、湿度を管理した専用の部屋で保管している

Amazonによってブランドや商品の認知度を上げることができた

主に県内の個人宅や宿泊施設などに商品を販売してきた同社は、販路拡大を目指して2007年に自社ECを開設。「ただ、なかなか認知度が上がらずに苦労しました」と上川さんは語ります。その課題を解決するために、2016年からAmazonへの出品を開始しました。

上川さん「マーケットプレイス コンサルティングサービスを利用し、AmazonのコンサルタントのアドバイスをもとにAmazonブランド登録に登録後、ストア機能でブランドページを作成しました。さらにスポンサープロダクト広告も活用することで、ブランドや商品の認知度を大きく上げることができました。また、FBAは土日・祝日や大型連休期間も配送に対応してくれるので、お客様満足度の向上につながっています」

そのほかにも、さまざまなAmazonのサービスにメリットを感じていると続けます。

上川さん「畳のベッドや置き畳はニッチな商品なので、扱っている店舗は多くありません。そのため、お客様がキーワード検索してお買い求めになることが多い傾向にあります。その点、Amazonは欲しい商品がすぐに検索結果として表示されるので、商品単体で訴求したい当社の戦略とマッチしました。Amazonは商品画面の作りも直感的でわかりやすく、しっかりと商品の特徴を伝えられる点も魅力ですね」

また、自社ECにはAmazonが提供する決済サービス、Amazon Payを導入しています。

上川さん「Amazon Payは多くのお客様にご利用いただいています。お客様がAmazon Payでの決済を選択されると、ご自身のAmazonアカウントに登録されている住所やクレジットカード番号などのお支払い情報を入力する手間が省けるので便利ですよね。住所やクレジットカード番号の入力を機にサイトを離脱されるお客様も多いですから、売上に直結しやすいサービスだと思います」

PCに映し出された「たたみのこうひん」のページ
Amazon.co.jp上のブランドページには自社工場の製造風景などの動画も掲載し、ブランドの世界観を伝えている
職人たちと笑顔で会話する男性
自社工場では、職人たちが通気性を確保する伝統的な製法で畳を作り上げている
畳の表をじっと見つめるスーツを着た男性
上川さんは3代目にあたり、畳の良し悪しを見抜く眼を代々受け継いでいる

ECでの成長が、地場産業の復興につながることが理想

同社は、AmazonをはじめとするECにおいて、置き畳の販売数が10万枚を突破するなど、大きな成長を遂げています。上川さんは「今後もECに力を入れていきますが、それによって地場産業を復興させたいとは軽々しく口にできません」と言います。

上川さん「私たちにできることは、この地に根ざし、昔ながらの製法で畳を作り続け、お客様に商品を届けること。それが地場産業の復興につながれば理想的です。それ以上に、畳という日本の文化を広め、後世に残していきたい。心が安らぐイグサの香りは何にも代えがたいですから」

Amazonのコンサルタントの助言をもとに商品やブランドの認知度を高め、多くのお客様に商品を届けている株式会社タブローと広浜株式会社。地場産業をめぐるさまざまな課題に直面する中で、強い信念とこだわりを持ってDXに取り組む両社は、地場産業の活性化を後押しするエネルギーに満ちあふれていました。


マーケットプレイス コンサルティングサービスとは?
経験豊かなコンサルタントのアドバイスを通じて、より本格的にビジネスを拡大する方法を提供するサービスです。出品者様に最適なビジネスプラン、出品者様に合わせたコーチングとトレーニング、日々の運用のサポート、専任のコンサルタントからの提案を通じて、Amazonでのビジネスの拡大を効果的に進めることが可能です。


Amazon Payとは?
Amazonアカウントに登録された住所情報やお支払い情報を使って、商品やサービスの支払いができる簡単で安心・安全な決済サービスです。Amazon.co.jp以外のサイトでも、Amazonアカウントを使ってお買い物を楽しむことができます。


2022年のシリーズでは、事業承継、地域活性化、働き方改革などの社会課題の解決のためにDXを活用した事例や農業や水産業などの第一次産業における中小企業が実践するDXについてご紹介しています

本連載について
Amazonでの販売を支援する「Amazon出品サービス」、ビジネス上の購買をサポートする法人向けサービス「Amazon ビジネス」、決済サービス「Amazon Pay」、クラウドサービス「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」など、Amazonはさまざまな企業の課題を解決する多様な選択肢を提供しています。本連載では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組む中小企業と、そのDXをさまざまなカタチで支援するAmazonのストーリーをご紹介します。
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