2022年6月15日、アマゾンジャパンで「第8回 Amazon Academy」(アマゾンアカデミー)が開催されました。Amazon Academyは、日本社会や企業が抱える課題をテーマに取り上げ、産官学の視点から課題の解決策や目指すべき方向性についてともに考え、話し合うものです。
今回のテーマは、「Eコマースにおける知財、その保護と活用によるブランドマネジメントとは」です。前半は、知的財産に携わる3人の専門家による基調講演、後半は、Amazonで自社ブランドの商品を販売するブランドオーナー様を交えてのパネルディスカッションが行われました。
冒頭の挨拶で、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長は、「今回のAmazon AcademyではAmazonでのブランド保護における協働のあり方について議論を深めていきたい」と語りました。
ジャスパー・チャン社長の写真アマゾンジャパン合同会社 社長 ジャスパー・チャン
Amazonは、「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」を目指し、豊富な品揃えとお求めやすい価格、迅速な配送により、お客様、販売事業者様にとって利便性の高いEコマースの提供を目指しています。これまでも、そしてこれからも、お客様、販売事業者様にAmazonを安心してご利用いただく責務を果たすために不可欠なのが、ステークホルダーの皆様との協働です。
「ブランド保護のために、Amazonがとりわけ力を入れているのは、模倣品対策です。そのために、革新的なツールを開発し、継続的な投資も行っています。ブランドオーナーである企業様は、自社の商標や特許、商品の内部・外部の知的財産を熟知されています。ブランドオーナー様の専門知識とAmazonのツールを組み合わせることで、模倣品をより効果的に特定、阻止し、知的財産保護の機能をより強化させることができると考えます。
そういった考えのもと、アマゾンジャパンは昨年10月に、国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)と模倣品対策についての情報交換および協力関係の強化に関する覚書を締結しました。今回のAmazon Academyが、ご参加されている皆様のビジネスにおける知的財産の保護、そしてブランドの確立のお役に立つことを願っております」

基調講演:Eコマースで成果を出すブランド保護活動──個社から「協働」へ

最初の基調講演に登壇したのは、株式会社バンダイ 法務・知的財産部 商標・著作権チームで弁理士として活躍され、国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)インターネットプロジェクトチームで幹事を務める岡崎高之氏です。講演テーマは、「Eコマースで成果を出すブランド保護活動──個社から『協働』へ」。バンダイでの業務経験をもとに「ブランド保護の基盤となる知的財産権は、商品を提供する企業や個人が所有していますが、ブランド価値そのものは、消費者であるお客様の頭の中に、イメージとして存在している」と述べました。
岡崎氏の写真株式会社バンダイ / IIPPF インターネットプロジェクトチーム 幹事 岡崎高之氏
「ブランド保護を、模倣品の排除や権利侵害者への警告などの侵害対策としてとらえると、つらく苦しいもぐら叩きになってしまいます。知的財産権をお客様や社外とつながり、ブランド価値を高める協働的なコミュニケーション手段と考えると、世界が広がります。自社だけで奮闘するのではなく、IIPPFのような官民一体型の外部組織を活用し、現地政府やEC事業者との交流、他の権利者企業・団体との勉強会などを通じてネットワーキングすることで、協創的な課題解決の道筋も見えてきます。アマゾンジャパンとIIPPF インターネットプロジェクトチームが覚書を締結した模倣品対策の取り組みのように、ネットワークを広げることで、お客様からの信頼とブランド価値を高めていくことができるのではないかと思います」

基調講演:企業価値の向上とは「商標」を「ブランド」にすることである──知財とマーケティングを架橋せよ

KIT虎ノ門大学院(金沢工業大学大学院)イノベーションマネジメント研究科の杉光教授は、「企業価値の向上とは『商標』を『ブランド』にすることである──知財とマーケティングを架橋せよ」をテーマに講演。「マーケティングと知的財産には、差別化という共通点がある」と指摘しました。マーケティング戦略では「差別化」が最も重要なキーワードであり、知的財産の分野でも、新たに特許や意匠、商標の権利を取得できるのは、既存のものと「差別化」できる場合のみだからです。
杉光氏の写真KIT虎ノ門大学院(金沢工業大学大学院)イノベーションマネジメント研究科 教授 杉光一成氏
「ただし、商標とブランドは、イコールではありません。商標は自社と他社の商品・サービスを識別するための標識ですが、ブランドは『顧客吸引力』です。商品・サービスの認知度や信頼度が上がり、進んで選ばれるようになって、初めてブランドになります。つまり、商標をブランドにしていくことが必要なのです。そして、その過程で重要になるのが、模倣品を許さない知的財産の役割です。知的財産は最強のマーケティングツールであり、商標をブランド化できれば、自然に商品の売り上げが伸び、企業価値の向上と成長につながるでしょう」

基調講演:コラボレーションで実現するAmazonにおけるブランド保護の取り組み

最後の基調講演に登壇したAmazonでブランドプロテクションのバイスプレジデントを務めるメアリ・ベス・ウェストモアランドは、「コラボレーションで実現するAmazonにおけるブランド保護の取り組み」をテーマに講演しました。「Amazonは、『地球上で最もお客様を大切にする企業になること』というビジョンの実現のために、お客様の信頼を獲得し、それを維持することを重視しており、信頼できるショッピング体験の創出に日々、力を注いでいます。そして、ブランド保護戦略のために、Amazonは2021年に9億ドル以上の投資を行い、機械学習のサイエンティストやソフトウェアの開発者、専門の調査員など、1万2000人以上がこの活動に取り組みました」と、説明しました。Amazonはブランド保護戦略として4つの柱を掲げます。1つ目は優れた堅牢性を持つ積極的な防止策の強化、2つ目はブランドを保護する強力なツール、3つ目は悪質な事業者に対する法的責任の追及、4つ目はお客様への啓発と支援です。特に2つ目の戦略についてウェストモアランドは、「日本でもこのほど、ブランドオーナーの皆様にAmazonが展開するすべての模倣品対策ツールとサービスをご提供できるようになり、うれしく思います」と話しました。
メアリ・ベス・ウェストモアランドの写真Amazon バイスプレジデント ブランドプロテクション メアリ・ベス・ウェストモアランド
Amazonにはブランド保護のためのさまざまな模倣品対策ツールとサービスがあります。自社ブランドや知的財産権の管理や保護をするための無料サービスであるAmazonブランド登録には、70万を超えるブランドが登録しています。Amazon IP Accelerator(IPアクセラレーター)は昨年、日本に導入されましたが、これまでに世界で5,900以上の中小企業のブランドオーナー様を信頼できる知的財産の専門家とのネットワークにつなぎました。高度な技術とブランドオーナー様が持つ知的財産に関する知識や模倣品検出のノウハウを組み合わせたProject Zero(プロジェクト・ゼロ)には2021年時点で2万を超えるブランドが登録しました。さらに、商品にシリアル番号を付与することで模倣品がお客様の手元に届かないようにするTransparency(トランスペアレンシー)に2021年までに23,000を超えるブランドが登録し、7億5000万以上の商品が保護されています。こうしたすべてのツールとサービスを日本でもご利用いただけます。メアリ・ベス・ウェストモアランドは、「私たちの模倣品をゼロにする取り組みはノンストップで続けます。1995年の創業以降、信頼は私たちのすべての基盤であることに変わりありません。ブランド保護の強化にあたり、業界横断的に協力できることに大きな喜びを感じています」と話し、基調講演を締めくくりました。

パネルディスカッション

後半のパネルディスカッションでは、岡崎氏、杉光教授に加え、Amazonで自社ブランドの商品を販売し、ブランド保護に積極的に取り組む企業を代表し、キヤノン株式会社 知的財産法務本部・模倣品対策課長の豊田仁氏と、株式会社アメイズプラスIT事業部 マネージャーの鈴木宏典氏を迎え、オンライン化が進む販売チャネルにおけるブランド保護や、企業の成長を促す知的財産との向き合い方について、意見が交わされました。
パネルディスカッションに登壇中の4人の写真
まず岡崎氏が、IIPPFがEC事業者と協働して模倣品対策を行う背景、そしてIIPPFがAmazonとブランド保護に取り組むメリットについて話しました。
「ECサイトの模倣品対策は、あらゆる企業にとって重要度が増しています。IIPPFとAmazonは、2019年から交流を続けており、IIPPFからは権利侵害事例を、Amazonからは、グローバルなポリシーで取り組む権利侵害対策やブランドオーナーに提供する対策ツールなど、双方向に情報を交換する機会が増えてきました。昨年は両社の関係強化を目的に覚書を締結、今後は、新たにワーキンググループを設置し、コラボレーションによる侵害対策についてより深い討議を行う予定です。ブランドオーナーとAmazonが深いレベルで情報を共有し、企業間や業界全体としての仕組み自体を改善していくことが、ますます重要になるでしょう」(岡崎氏)
Eコマースで数多くの商品を販売しているキヤノンの豊田氏は、同社のブランド保護体制や取り組みについて話しました。「本社と海外拠点の知的財産部門が連携し、模倣品を排除する活動をグローバルに展開しています。その一環として、数年前から『ブランド登録』や『Project Zero』を利用しながら、Amazonとグローバル規模でさまざま情報交換を行い、模倣品業者への対応を進めています」
豊田氏の写真キヤノン株式会社 知的財産法務本部 模倣品対策課長 豊田仁氏
「模倣品対策は、純正製品に対する信頼を守るだけでなく、お客様の安全を守るという観点からも重要です。お客様に安心して購入いただくためには、模倣品が生まれにくい、売られにくい環境を作ることが理想だと考えています。そのために、ブランドオーナーとEC事業者の連携がさらに強化されることを期待したいです」(豊田氏)
ヘルスケアや医療機器の企画販売などを手がけるアメイズプラスの鈴木氏は、中小企業がブランドを保護することの難しさについて「我が社は、社員100人ほどの企業です。規模の小さい企業は、ブランドの権利侵害などの問題に迅速に対応するのが難しい。だからこそ、問題の早期解決につながる使いやすいツールがあれば、積極的に活用していきたい」と話しました。
鈴木氏の写真株式会社アメイズプラス IT事業部 マネージャー 鈴木宏典氏
「gymterior(ジムテリア)」というホームブランド用品のEC販売に携わる鈴木氏がAmazonの「ブランド登録」と「Transparency」の利用を始めたのも、ECサイトで人気のエクササイズ用品の「シェイプキューブ」の売り上げが落ちた時期があったからです。お客様からのクレームが増え、社内で調査したところ、模倣品の存在に気づきました。
「Amazonのブランド保護ツールのおかげで、ブランド保護の対応に使っていた時間を広告の活用やサイトコンテンツの強化など、売り上げにつながる施策に充てることができました。また、『Transparency』のおかげで、正規品のみがお客様の手に届くようになったことも、大きなメリットです。Amazonのブランド保護ツールは、社員数が限られる弊社にとって、ブランド保護を強化してくれただけでなく、より強固な自社ブラントの確立にも役立っています」(鈴木氏)
杉光教授は、知的財産とマーケティングの双方の視点から、企業におけるブランド保護が持つ意味について次のように語りました。
「ブランド保護は、会社の根幹にかかわることです。日本語でブランド資産と訳される『ブランド・エクイティ』の概念に示されているように、企業の皆様はブランドをお金や人材と同じように会社の重要な資産、財産としてとらえて把握、マネジメントする必要があります。ブランド力が上がったのか下がったのか、売り上げや利益率などと同様にマーケティングの視点でブランド力をどのように高めていくのかを考えていくことが大切でしょう。つまり各企業は、ブランド資産の所有者という立場にありますから、ブランドが自社の財産であるという意識を持ち、EC事業者と協力しながら資産としてのブランドの保護に主体的に取り組む姿勢が重要です」(杉光氏)
最後に、IIPPFが知的財産保護の取り組みを、今後どのように進めていくのか、岡崎氏が答えました。
「IIPPF インターネットプロジェクトチームではEC事業者との連携に加え、消費者の啓発にも取り組んでいきたいです。ブランドオーナーとEC事業者の連携に加え、消費者の皆様に対して、正しい知識を発信し、そのうえでブランド保護に関する活動自体に共感してもらうことが重要と考えています」(岡崎氏)
第8回Amazon Academy「Eコマースにおける知財、その保護と活用によるブランドマネジメントとは」プログラム
  1. Amazon Academy開催にあたってのご挨拶:アマゾンジャパン合同会社 社長 ジャスパー・チャン
  2. 基調講演「Eコマースで成果を出すブランド保護活動──個社から『協働』へ」 株式会社バンダイ / IIPPF インターネットプロジェクトチーム 幹事 岡崎高之氏
  3. 基調講演「企業価値の向上とは『商標』を『ブランド』にすることである──知財とマーケティングを架橋せよ」 KIT虎ノ門大学院(金沢工業大学大学院)イノベーションマネジメント研究科 教授 杉光一成氏
  4. 基調講演「コラボレーションで実現するAmazonにおけるブランド保護の取り組み」 Amazon バイスプレジデント ブランドプロテクション メアリ・ベス・ウェストモアランド
  5. パネルディスカッション
パネリスト:
株式会社バンダイ / IIPPF インターネットプロジェクトチーム 幹事 岡崎高之氏
KIT虎ノ門大学院(金沢工業大学大学院)イノベーションマネジメント研究科 教授 杉光一成氏
キヤノン株式会社 知的財産法務本部 模倣品対策課長 豊田仁氏
株式会社アメイズプラス IT事業部 マネージャー 鈴木宏典氏