Amazonでは2020年10月から、ブランドや作品の製作者となるクリエイターがオリジナルの作品を登録し、Amazonが注文を受けてからTシャツなどにプリントしてお客様にお届けするMerch by Amazon(マーチバイアマゾン)というサービスを展開しています。このサービスを担当する一人の社員が思いついた、資源を有効活用するアイデアから、子どもたちにオリジナルデザインのTシャツをプレゼントするチャリティプロジェクトが生まれました。ご協力いただいたのは、「子ども第三の居場所」の活動を推進する日本財団、障がいのある作家が制作したアート作品を手掛ける「ヘラルボニー」です。アイデアの具体化からTシャツを届けるまで、関わったすべての人が抱いたのは「子どもたちを笑顔にしたい」という熱い思いでした。その背景と子どもたちにプレゼントしたときの模様をご紹介します。

子ども食堂を利用する子どもたちへAmazon社員がTシャツを手渡し

クリスマスも間近な12月、今回のチャリティ企画の発案者であるAmazon GSFクオリティマネージャーの長谷公樹さんは、Tシャツの入ったAmazonの箱を大切そうに抱え、埼玉県にある日本財団「子ども第三の居場所」を訪ねました。「子ども第三の居場所」とは、家庭の事情などによって食事やコミュニケーション、学習などのサポートが必要な子どもが安心して過ごせるように、日本財団が助成し民間団体や自治体が運営している子どもための居場所です。

この日訪ねたのは、地域の人々との多世代交流を通して子どもがさまざまな学びを得ていくことを目的とした「子ども第三の居場所」コミュニティモデル拠点で、埼玉県のNPOが運営している子ども食堂「さいたま子ども食堂」でした。

長谷さんが用意したのは、黒色と白色の2種類のTシャツ。プリントされているのは、福祉を起点に新たな文化を創出する企業「ヘラルボニー」に所属するアーティストの作品です。

Merch by Amazon 寄付

さいたま子ども食堂に到着すると、まずは子どもたちと遊ぶことに。子ども食堂のなかでは、生活の基礎である料理作りを学ぶため、子どもたちが地域のボランティアの人たちと作ったパエリアのおいしそうな匂いが漂っています。緊張していた長谷さんも子どもたちと触れ合ううちに、表情がどんどん柔らかになっています。笑顔があふれるなか、長谷さんは、子どもたちに、Tシャツのプリントの品質管理を行うという自分の仕事について説明。そして子どもたち一人一人に、黒色と白色のどちらがいいかを尋ねながら、体に合うサイズのTシャツを手渡していきました。

Merch by Amazon 寄付 長谷さん
Amazon GSFクオリティマネージャーの長谷公樹さん
Merch by Amazon 寄付
Tシャツをひとり一人に手渡しました
Merch by Amazon 寄付
Merch by Amazon 寄付
「さいたま子ども食堂」は地域の方たちと子どもたちが交流を深める拠点となっている。この日子どもたちはパエリアづくりに挑戦した

きっかけは毎日刷り上がるテストプリント

今回のチャリティ企画は、Merch by Amazonに登録されている商品のテストプリントを行う長谷さんの仕事から生まれました。Merch by Amazonは、ブランドや作品の製作者となるクリエイターがオリジナルの作品を登録し、Amazonがお客様の注文を受けてからその作品をTシャツなどにプリントしてお客様にお届けするオンデマンド・サービスです。お客様がストアページから日本のキャラクターやブランドをはじめ、海外のクリエイターが登録した豊富なセレクションから、自分にあったサイズ、好みの色を選ぶことができます。

長谷さんは品質をチェックするため、毎日、テストプリントを行うなかで、こう感じたそうです。

「テストプリントは、プリンターが正常に動いているかどうかを確認するのが目的のため、刷り上がる衣類は、販売するものとほぼ変わらないクオリティです。それを処分するのはもったいない。プリントするテスト用の柄を素敵なデザインに変更すれば、誰かに着てもらえないかと考えたことが、今回の寄贈の発端でした」

活用先を求め、NPOなどの団体に問い合わせをするなかで、興味を持ってくれたのが、日本財団 ドネーション事業部 ファンドレイジングチームの中村一貴さんでした。日本財団はソーシャルイノベーションのハブとなり、子ども支援や障害者支援、災害復興支援などを手がける公益財団法人です。中村さんは長谷さんから相談を受け、「Tシャツを喜んでくれるのは子どもたち」と、すぐに思い浮かんだそうです。

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日本財団 ドネーション事業部 ファンドレイジングチーム 中村一貴さん

Amazonと「子ども第三の居場所」「ヘラルボニー」とのコラボ

今、日本ではさまざまな家庭の事情から、多くの子どもたちが食事や学習困難などの問題に直面しています。日本財団は、「子ども第三の居場所」の名称で、子どもたちが安心して食事や勉強をしたり、生活習慣を整えたりする拠点の支援プロジェクトを推進しています。現在、全国に65拠点あり、2025年までに500拠点の設置を目指しているそうです。長谷さんが今回、訪問した子ども食堂も、子ども第三の居場所プロジェクトの支援を受ける拠点の一つでした。

一方、中村さんがプリントする作品のデザインをヘラルボニーに相談したのは、2つの理由があります。

「ヘラルボニーには知的障害のあるアーティストが所属しており、とにかく素晴らしいアートを生み出しています。子どもたちはTシャツにプリントされた作品を通じて、多様性のある社会の大切さに気づく機会が得られます。また、Amazonさんとヘラルボニーさんがつながることで、作品をより広く知ってもらえますし、アーティストの自立支援にも役立つと考えました」

ヘラルボニーは、今回の寄贈に向けて、こんなメッセージを寄せてくれました。

「福祉やアートは、『私には関係ない』と遠ざけられがちです。今回のTシャツからアートというフィルターを通じて障害のある人との出会いを作れたとき、障害は欠落ではないという捉え方に変わるかもしれません。それは、すべての子どもたちが、『ちがい、個性』を肯定し、受け入れることで、一人一人が尊重される社会へのきっかけになると思うのです」

Amazon社員の手渡しが子どもたちの社会経験をサポート

中村さんと共に今回のチャリティ企画に関わり、子ども第三の居場所プロジェクトを担当する日本財団 経営企画広報部 子どもサポートチームの飯澤幸世さんは、「長谷さんが直接、Tシャツを手渡したことも子どもたちには大きな意味を持つ」と話します。

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日本財団 経営企画広報部 子どもサポートチームの飯澤幸世さん

「多くの大人が自分に目を向けてくれていると感じることは、子どもが自己肯定感を持つきっかけになります。また、塾や習い事に通わせる余裕がなかったり、地域活動へ参加する機会がない家庭では、保護者と先生以外の大人と触れ合う機会に乏しい子どもが珍しくありません。身近なロールモデルが少ないため、どんな大人になりたいか、将来像が持てない子どもも多いのです。長谷さんと出会うことで、インターネットでしか知らなかったAmazonで働く人の姿がリアルに感じられますし、『こういう働き方もあるんだ』と知る貴重な社会経験にもなるのです」

今回の訪問先となった子ども食堂を6年前から運営する、埼玉県子ども食堂ネットワーク代表本間香さんは、「多くの大人が関心を寄せ、子どもたちと触れ合う機会を持って欲しい」と話します。さらに、こんなことも語ってくれました。

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埼玉県子ども食堂ネットワーク代表 本間香さん
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本間さんが経営する古民家カフェ藍がさいたま子ども食堂の拠点となっている

「Tシャツのプレゼントは、夢がありますよね。デザインも素敵です。子どもたちは、AmazonさんのCMを見たときに、『あ、ここだ』と思い出すでしょう。それは、Amazonの人にTシャツをもらったという記憶になるかもしれないし、将来の職業につながるかもしれません。今は新型コロナウイルスの影響で、みんなで一緒にご飯を食べながら、ワイワイとおしゃべりすることができません。現在、感染予防のために食事はお弁当での持ち帰りだけですが、子ども第三の居場所を始めたことをきっかけに、こうした機会を持てたことはすごくありがたかったです」

子どもたちもTシャツを気に入ってくれたようです。さっそく着てくれた小学2年生の男の子は、「格好いいから、白を選んだ」そうです。サイズがぴったりでよく似合っています。小学5年生と小学4年生の姉妹は、姉が白色、妹が黒色と色違いです。「理由は?」と聞くと、「どっちが自分のTシャツか、すぐに分かるから」と、お姉ちゃんが教えてくれました。

全国の子どもたちに贈るチャリティ活動を今後も継続

発案からTシャツの贈呈まで、約1年かかった今回のチャリティ。長谷さんにとっては、仕事のモチベーションの向上につながり、Amazonで働く楽しさを改めてかみしめることにもなりました。

「アイデアが実現するまでの間、日本財団様はもとより、Amazon のオペレーション部門や、そのほかの部門のたくさんの社員の協力によって実現できました。社会や地域とのつながりを大切にするAmazonの仲間たちだから、実現できたと感じています。今回のような形でのチャリティ活動は初めての試みでしたので、喜んでもらえるのか一抹の不安もありましたが、子どもたちの笑顔を見て、とても幸せな気持ちになりました」

子ども第三の居場所を利用する子どもたちへのチャリティ活動は、今後も継続し、全国に展開する予定です。長谷さんは、「Amazonのメンバーと協力し、子どもたちに喜んでもらえるよう、サイズを確認しながら、計画的に日々のテストプリントを行い、活用していきたい」と、話してくれました。

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