気温も湿度も高く、蒸し暑い日が続く日本の夏。この時期、とくに重要なのが熱中症対策です。京都府にある京田辺フルフィルメントセンター(以下、京田辺FC)では、その一環として地域の特産品である抹茶を使ったオリジナルの「熱中症対策あめ」を開発しました。このFCでしか食べられないユニークなあめの発案者・小林太郎さんに、完成までのストーリーを聞きました。
FCで働くすべての人を熱中症から守りたい
京田辺FCの熱中症対策は6月初旬から始まると、サイトリードの梶山浩史さんは言います。
「安全対策は、どんなにやってもやりすぎることはない。送風機を効率よく使って、人がいるスポットに冷風を行き渡らせるとともに、室温はつねにチェック。梱包などをするワークステーションには各自の飲み物を置けるようにドリンクホルダーを設置しています。仕事に集中すると給水を忘れがちですが、飲み物がつねに視界に入っていれば、水分補給を思い出すきっかけになりますから」
暑さが厳しい6月初旬から9月末までは水やスポーツドリンク、塩分を含む「熱中症対策あめ」を配布。スタッフはそれらを自由に取り、好きなタイミングで塩分補給できます。この夏には京田辺FCオリジナルの「京田辺産の抹茶を使った塩あめ(以下、抹茶あめ)」がデビュー。Amazon プライムデーの期間中に配布が始まる予定です。
コロナ禍で打撃を受けているお茶農家をサポートしたい
抹茶あめの企画・開発に携わったのはオペレーション技術統括部・施設管理部 課長代理の小林太郎さん。主に、建物のメンテナンスや職場環境の管理から、食堂や通勤バスの運営、産業廃棄物の管理などを担当しています。小林さんに、抹茶あめのアイデアを思いついたきっかけを聞きました。
「社内ミーティングで『新型コロナウイルスの影響で日本各地がダメージを受けている。京田辺FCで、地域の課題解決のお手伝いができないか』という話題が出ました。そこで、この地域が抱える問題をリサーチするために、京田辺市役所にお話を伺いました。」
市役所で聞いたのは、京田辺市は日本有数の高級緑茶の産地であること。しかし、コロナ禍の影響で多くの茶会がキャンセルされ、茶葉の消費が低迷してお茶農家が大きな打撃を受けているという話でした。
「このお話を聞いて思い出したのが、6月から始まる熱中症対策です。これまでは、熱中症対策のために市販の塩あめを配ってきました。しかし、京田辺産の抹茶を練り込んだオリジナルの塩あめを作れたら、ささやかですが茶葉の消費に貢献できるし、このFCで働くみなさんに地元の味を楽しんでもらえるのでは、とひらめいたのです」
京田辺FCでしか食べられない抹茶あめが完成
小林さんは京田辺のお茶農家にコンタクトを取り、あめに使用する抹茶のアイデアを相談すると、賛同していただき、すぐにプロジェクトが立ち上がりました。同時に名古屋の製菓メーカーに、オリジナルの文字を入れた抹茶あめの製造を依頼。4月末にプロジェクトがスタートしてからたった1カ月、5月下旬には試作品が完成しました。
フレーバーは抹茶味とほうじ茶味の2種類。製菓メーカーによると、今回使用した抹茶は品質が優れているため、香料や着色料を添加する必要がなかったそうです。
「試作品を食べてみたのですが、口の中いっぱいにお茶の香りが広がって、とてもおいしいあめでした。さすが高級なお茶は味も香りも違いますね」
抹茶あめは1万4000個製造する予定。Amazonプライムデーの期間中に、忙しく働くスタッフへの感謝をこめて配布を始めます。「例年、熱中症シーズンを通じて1万4000個のあめを配布しているのですが、この抹茶あめはおいしいので、すぐになくなってしまうかも」と、小林さんは笑顔を見せます。
地域の皆様とのつながりを大切に
京田辺FCはこれまでも地域の清掃や地域イベントなどを通して、地元の皆さんとのつながりを深めてきました。今回の抹茶あめのプロジェクトを通して、地域との新しいつながりが生まれるのでは、とサイトリードの梶山さんは期待しています。
「私も抹茶あめを試食しました。地域の特産品である抹茶が入っていると知っていますから、なおさらおいしく感じます。このあめを食べる京田辺FCのスタッフには、お茶農家さんの想いや、このあめが誕生するまでのストーリーもしっかり伝えたい。このあめがスタッフの健康を守るだけでなく、わずかでも地元産業のお役に立つことができれば、私としても最高にうれしいです」