AWS(アマゾン ウェブ サービス)は、2024年6月21日、東海道新幹線で年間1億7,000万人もの人々を運ぶ東海旅客鉄道株式会社(JR東海)が、次世代の高速鉄道サービス、リニア中央新幹線のデータドリブンな運営に向けて、新たに山梨リニア実験線でAWSの活用を開始したと発表しました。
リニア中央新幹線は、超電導リニアにより、時速500キロで、東京・名古屋間を最速 40 分、東京・大阪間を最速67分で結ぶ次世代の高速鉄道サービスです。大規模災害等のリスクへの備えとして、今年で60周年を迎える東海道新幹線に続く、大動脈のバイパスとして建設が進められています。
モノのインターネット(IoT)、機械学習、生成AIなどのAWS のサービスを山梨リニア実験線で活用して、保全業務の効率化・省人化を進めることで、同社は業務改革ならびにコスト削減を推進するとともに、データと最先端テクノロジーを活用したリニア中央新幹線のデータドリブンな設備保全を目指すとのことです。
超電導リニアは、運転士が乗車して列車の速度を制御する方式ではなく、地上から列車を遠隔制御する高精度・高信頼の「自動運転システム」が採用されています。運行に関わる車両と地上設備の全情報がデータ化され、すでに運行システムなどの多くのシステムが連携しています。車両と地上設備のリアルタイムでの状態監視と機械学習を活用した状態監視保全や予知保全を実現し、高い安全性と快適性を兼ね備え、効率的で省人化された次世代高速鉄道サービスの確立に向けて進められています。
山梨リニア実験線においては2024年1月から、AWS IoTサービス等を活用して、リニア車両の走行に不可欠な送電設備や、始発列車走行前に沿線を点検するための電動保守用車の状態データを取得し、状態監視~データ分析までの一連のプロセスを検証する概念実証(PoC)が開始されました。
これにより、故障発生時の対応早期化や蓄積データを分析し、故障予兆の検知が行われています。具体的にはあらゆるユースケースで機械学習を実現する完全マネージドサービスである Amazon SageMaker を利用して、わずか5か月で送電設備の異常を識別する機械学習モデルを構築し、ビジネスインテリジェンスサービスである Amazon QuickSight で可視化しています。これにより、重篤な故障にいたる前に異常予兆を捉えて保守作業を行えるようになりました。今後は、AWS Professional Services のサポートを活用することで、IoT化の対象設備やデータの幅を拡大し、機械学習技術を用いた分析のユースケースを拡大していく予定とのことです。
超電導リニアでは、このように従来の人手による保全から、リアルタイムのデータを用いて、IoT、機械学習などの最新テクノロジーを活用したデータドリブンな保全へと移行が進められています。今後JR東海では、生成 AI アプリケーションの構築・拡張を支えるフルマネージドサービスである Amazon Bedrock を、設備情報や保守作業記録の検索など多様な業務に活用することで、社員の働きやすさの実現にも取り組むとのことです。
クラウドのスピードと信頼性を活かす人材育成を通じて、イノベーションを加速
こうした取り組みを進めるにあたり、同社ではAWSのクラウドのスピードと信頼性を活かすデジタル人材育成も加速しています。例えば、リニア開発本部では、機械工学等を専門とする社員十数名がAWS Professional Servicesによる機械学習人材育成支援プログラムに参加し、現在も、社員が自ら継続的にこの機械学習モデルを改善する取り組みが進められています。
AWS は、2027 年までに国内クラウドインフラに 2 兆 2,600 億円を投資し、日本におけるクラウドサービスに対する顧客需要の拡大に対応する計画を2024 年1月に発表しました。AWS が日本にもたらす経済効果に関するレポートによると、この投資計画は、日本の国内総生産(GDP)に 5 兆 5,700 億円貢献し、国内で年間平均 30,500 人以上の雇用を支えると推計されます。AWS は、2011 年から 2022 年にかけてすでに 1 兆 5,100 億円を日本に投資しており、国内でのクラウドインフラへの投資総額は、2027 年までに約 3 兆 7,700 億円に達する見込みです。