AWS の最新レポート:クラウド主導ビジネスが社会に与えるインパクトとは

中堅中小企業(MSME、従業員数 1~250 人の企業やスタートアップ) は経済活動の主な担い手となっています。日本では、全企業の 99% 以上、民間の労働力の 69%、そして国内総生産(GDP)の約 50% を MSME が占めています。MSME は日本経済におけるイノベーションとディスラプション(創造的破壊)を生み出す源泉であり、人工知能( AI )や機械学習( ML )などクラウドベースのテクノロジーを駆使して、現在の国内経済のギャップを埋め、新しい製品やサービスを世に送り出しています。

AWS とアクセンチュアとの共同レポート「クラウド主導経済が現実に:中堅中小企業( MSME )を通じてクラウドが経済と社会に与えるインパクトとは Realizing a Cloud-enabled Economy: How Cloud Drives Economic and Societal Impact Through Micro, Small, and Medium-Sized Businesses 」では、クラウドへの移行が進む中、企業が社会的課題の解決に向けてどのようなメリットをもたらすかを検証しています。同レポートの主な調査結果によると、クラウドが主導するテクノロジーを採用する日本のMSMEによって、医療、教育、農業の分野全体で、2030 年には年間 総額1兆9,000億円相当の生産性向上が見込まれ、520 万人の雇用(日本の全雇用の7%)を支えると予測されています。

調査結果から読み解く注目すべき 6 つのハイライトは以下の通りです。

1. 全世界で AI の社会的インパクトが大きくなっている

調査対象となった12カ国の企業の 78% が、2030 年までに最も大きな社会的インパクトを与えるテクノロジーとして、AI(生成系 AI を含む)、自然言語処理( NLP )、ML を挙げています。生成系 AI はさまざまな用途での利用が可能です。たとえば、医療従事者が患者データや検査結果を分析するのを手助けし、教育者がカリキュラムや教材を見直し、より良い試験問題を作成できるように支援するといったことが考えられます。

2. 遠隔医療の進展により、医療の潜在的な可能性が広がる

医療分野の MSME は、 2030 年には年間 総額1兆2,000億円相当の生産性向上効果を創出し、6,000万件のオンライン医療相談をサポートできるようになると予想されます。この背景として、日本は人口の 30% が 65 歳以上で諸外国と比べて相対的に高齢化が進み、これに合わせて医療制度を調整する必要があることに加え、人口の約 8% が都市部ではない地域に暮らしていることが、医療へのアクセスを妨げる障壁となっています。日本でクラウド主導経済が実現すれば、クラウドテクノロジーを活用したオンライン相談や健康指標のモニタリングにより、十分なサービスを受けられずにいるすべての地域社会が、医療に容易にアクセスできるようになります。

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3. クラウドコンピューティングにより、教育サービスがさらに利用しやすくなる

クラウド主導の MSME が教育業界を支援することで、2030 年には年間 5,000 億円相当の生産性向上効果の創出を促し、日本の 400 万人の学生と 2,000 万人の成人がオンライン学習を受けられるようになると予想されます。日本では、正規の教育機関以外の成人向けのトレーニングや学びの機会を利用している人が、諸外国に比べて相対的に少なくなっていますが、遠隔地コミュニティや時間に余裕のない成人など、スキルの向上や多様化を望む幅広い対象者に向けて、クラウドテクノロジーを使って新たな学習の機会を提供することで、教育をより公平かつアクセスしやすいものにすることが可能になります。

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4. よりスマートで持続可能な農業のために、データの力が活用されている

日本の農業では、よりスマートで持続可能な農法(スマート農業)をサポートするために、MSME のクラウドサービスが利用されています。これらのテクノロジーは、農作物、家畜の健康状態、資源消費に関する質の高いデータをリアルタイムで提供する高度なモニタリングデバイスを採用することで、農業の意思決定を支援します(精密農業)。クラウドを利用したデータ主導のソリューションは、より健康的で高品質な食材を提供できるよう農業従事者を支援する上で、重要な役割を担っています。2030 年には、日本のMSMEは農業分野で年間 1,000 億円相当の生産性向上効果の創出を促し、3 軒に 1 軒の農業従事者において、クラウド主導の MSME がサポートする精密農業が活用されると推定しています。

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5. クラウドの導入はこれから本格的に始まる

レポートによると、ウェブベースのメールサービスやクラウドベースのストレージソリューションの利用など、少なくとも基礎レベルのクラウドテクノロジーを導入している日本の企業の割合は現時点で 68% です。しかし、OECD 加盟の先進国の導入率から判断すると、顧客関係管理ツール( CRM )やエンタープライズリソースプランニングツール( ERP )の使用といった中レベルの用途と、不正検知やサプライチェーン予測といった複雑なタスクに合わせた人工知能( 生成系 AI を含む)や機械学習( ML )の使用などの高度な用途の導入率は、はるかに低くなると見込まれ、現時点で日本の企業のわずか 4% のみが AI ソリューションを活用しているにすぎません。日本企業には、クラウドテクノロジーの可能性を最大限に引き出すために、クラウド導入を進展させる大きな機会がまだ残されています。

6. イノベーションを加速させるには、さらなる連携と教育・啓発が必要

レポートによると、サイバーセキュリティ、組織文化、デジタルインフラストラクチャへのアクセス、およびテクノロジースキルにおけるさまざまな課題が、MSME のクラウドの導入を阻む主な障壁となっています。こうした課題に対処し、クラウド主導経済の可能性を引き出すために、政府、産業界のさらなる連携が必要です。MSME のクラウド導入を加速させるには、政府のあらゆるレベルの強力な政策支援も必要となります。

本レポートは、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、インドネシア、インド、日本、韓国、ニュージーランド、シンガポール、イギリス、米国の 12 の国を対象として、市場規模、定量的調査、経済協力開発機構( OECD )、世界銀行、Conference Board Total Economy Database が提供する公開データセットを組み合わせて分析しています。

MSME が経済や社会にもたらす潜在的なメリットについて詳しく知りたい方は、レポートの全文をこちらよりご確認いただけます。

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