AWS認定は、Amazonのクラウドサービス「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」に関する知識とスキルを客観的に証明する資格試験です。AWS認定の取得は、どのようにキャリアやビジネスの向上に役立つのでしょうか。また、取得までの勉強はどのようにすればいいのでしょうか。12種類のAWS認定をすべて取得したAWSのテクニカルインストラクターの2人に体験談を聞きました。
*2024年2月26日時点


AWS認定には「Foundational(ファンデーショナル)」「Associate(アソシエイト)」「Professional(プロフェッショナル)」「Specialty(スペシャリティ)」という4つのレベルがあり、そのなかに合計12種類の認定があります(2024年2月26日時点)。インタビューに答えてくれたのは、AWSトレーニングサービス本部テクニカルインストラクターの杉山大夢さんと室橋弘和さんです。

AWS認定取得のきっかけは、キャリアアップと仕事での必要性から

お二人は現在、テクニカルインストラクターとして、AWSの運用に携わる、主にエンジニアを対象にした技術研修の講師を務めています。杉山さんはAWSに転職する以前に約9か月間、室橋さんはAWSへの転職後に約1年半で全12種類の認定を取得しました。まずは、試験を受けたきっかけから聞いてみました。

杉山さん:私がAWS認定を取得しようと決めたのは、3年ほど前です。当時の私はオンプレミスのシステムを扱うエンジニアでした。オンプレミスは、システムの稼働やインフラの構築に必要なサーバーやネットワーク機器、ソフトウェアを自社で保有する運用形態です。オンプレミスの仕事も充実していましたが、将来的にクラウドサービスのニーズがより高まると考え、AWS認定を取得すれば仕事の幅が広がり、キャリアアップに役立つと考えました。実際に取得すると、「杉山はAWSに詳しい」という評価が周囲に広がり、AWS関連のプロジェクトを任されるようになりました。

巻き毛と黒いジャケットを着た男性が微笑んでいる。杉山大夢さん。
AWSトレーニングサービス本部テクニカルインストラクターの杉山大夢さん

室橋さん:私はAWSに入社後、テクニカルインストラクターとして働くために、ソリューションアーキテクトの基礎編である AWS Certified Solutions Architect - Associate(SAA)の取得が必須でした。それが挑戦するきっかけです。ただ、前職ではオンプレミスが中心だったので、SAAを取得しただけでは、クラウドの知識とスキルが不足していると感じていました。そこで、自信を持って仕事をするために、他のAWS認定も取得し、体系的に知識を身につけようと考えたのです。

黒いジャケットを着た髪がない男が指を絡ませている。室橋弘和さん。彼の前にはたくさんのスタンプが貼られたPCが置かれている。
AWSトレーニングサービス本部テクニカルインストラクターの室橋弘和さん

AWS認定はキャリアに合わせたスキルアップが可能

AWS認定では職種や仕事の内容に合わせ、認定をどのように取得していくか、モデルケースを紹介しています。AWS Certified Cloud Practitioner- Foundational(CLF)が幅広い職種で必要となる最も基礎的な知識が問われる資格ですが、キャリアによっては中級レベルの「アソシエイト」から受験する人もいます。

杉山さんと室橋さんは、まず前述の中級レベルのAWS Certified Solutions Architect - Associateを取得しました。
その後、杉山さんは、
AWS Certified Developer - Associate(DVA)
AWS Certified Sysops Admin - Associate(SOA)
AWS Certified Solutions Architect - Professional(SAP)
AWS Certified DevOps Engineer - Professional(DOP)
AWS Certified Security - Specialty(SCS)
AWS Certified Advanced Networking - Specialty(ANS)
AWS Certified Data Analytics - Specialty(DAS)
AWS Certified Database - Specialty(DBS)
AWS Certified Machine Learning - Specialty(MLS)
AWS Certified Cloud Practitioner - Foundational(CLF)
AWS Certified SAP on AWS - Specialty(PAS)
の順に取得しました。

 室橋さんは、SAAの後、CLF 、DVA、SOA、DBS、SAP、SCS、DOP、DAS、MLS、ANS、PAS の順番で認定を取得しています。受験を振り返っての感想を2人はこう話します。
*2024年3月12日にAssociateレベルに「AWS Certified Data Engineer - Associate」が加わる予定です。また、4月から一部の認定試験が終了します。詳しくはこちらのAWSブログをご覧ください。

杉山さん:AWSに関わるエンジニアとして王道的なSAAを取得した後は、中級レベルの認定を取りました。AWSのサービスは、オンプレミスの仕事を通して身に着けた知識と紐づけることで、イメージしやすいサービスも多いです。その後、上級レベルのプロフェッショナルを取得し、専門性の高いスペシャリティは自分の業務に直結しそうな認定から取得していきました。残りが2つか3つになったとき、「こうなったらコンプリートしよう」と、得意ではなかった分野の認定も取得しました。

一度、試験に落ちてしまったのは、データ分析に特化したDASです。データ分析の業務に携わった経験がありませんでしたし、トントン拍子で取得できたことで少し気持ちがゆるみ、勉強が足りなかったためです。しっかり勉強してから試験に臨むことが大切だと実感しました。

室橋さん:私も杉山さんと似たような順番で、自分の専門に近かったり、興味のある認定から取得していきました。苦労したのは、最初に受けたSAAです。これからの仕事に直結する認定というプレッシャーがありましたし、クラウドの基礎的な知識があまりないまま受けたからだと思います。最もベーシックなCLFを先に受けていれば、もっと楽だったかもしれません。CLFはエンジニア以外の営業職などにも推奨されている認定なので、AWSを網羅した基礎知識が身につく内容になっています。AWS認定はステップ・バイ・ステップでスキルアップできるように構成されているので、モデルケースを参考に順番に受験したほうが、合格しやすいのではないかとも感じました。

AWS認定の基本情報とAWS認定を取得するメリットなど、AWS認定を受験する前に知っておきたい5つのポイントをご紹介します。

朝や就寝前、通勤のスキマ時間を利用して勉強

仕事をしながら、勉強時間をどのように確保したのかも聞いてみました。

杉山さん:朝と夕の通勤時間と昼食のあと、寝る前にそれぞれ30分ずつ、1日で合計2時間を目標に勉強しました。学生時代から、その時間帯に勉強する習慣が身についていたので、AWS認定のために、あえて時間を確保することはありませんでした。新しく習慣を作るよりも、食事のあとに歯磨きをするように、ご飯を食べたら勉強するなど、すでにある習慣に新しい行動をくっつけた方が習慣化しやすいと思います。

AWSは公式ドキュメントが豊富で、AWS Skill Builder(スキルビルダー)というE-Learningができるサイトもあるので、学習しやすいのがメリットです。通勤時はスマートフォンで公式のドキュメントを読むことで机に向かわなくても勉強ができました。家ではパソコンを操作してスキルを磨きました。

室橋さん:私は子どもの生活時間に合わせ、早朝や子どもが寝てから勉強することが多かったです。リモートワークが中心になってからは、ランチ後の休憩時間を勉強に充てることもありました。食事の後はゆっくり過ごしたいものですし、自分との葛藤になりますが、常に目に入る場所に勉強のためのドキュメントを開いておいて、5分、10分の短い時間でも、勉強を続けることが大切だと思います。それから、同時期にAWS認定の取得に取り組んでいる同僚がいたことも大きかったですね。追いつけ追い越せで刺激し合ったことが、受験勉強の励みになりました。

髪がない男性が巻き毛の男性の向かいに座っている。彼らは話し合っている。

AWS認定取得のために、試験情報を網羅したAWS認定のガイドページを徹底活用

AWS認定のガイドページには、認定の概要や受験日程、受験方法に加え、試験準備に活用できるAWS Skill Builderなどが紹介されています。そしてAWS Skill Builderの中では、AWS認定テクニカルインストラクターによる勉強法の指導や試験問題の解説、公式練習問題集、Exam Prepデジタルコース、試験対策のオンラインセミナーなどの情報が豊富に提供されています。2人はこれらをどのように活用したのでしょうか。

杉山さん:私は試験ガイドのシラバス的なページを読んだり、AWS Skill Builder のExam Prep というテクニカルインストラクターの解説動画を見たりして、試験の全体像をつかむことから始めました。出題範囲や難易度の予測がつくからです。それから具体的な勉強に入り、必要なドキュメントページを読んだりしました。AWS Black Belt (ブラックベルト)Online Seminar という製品・サービス別、ソリューション別に分かれて日本語で解説しているセミナーの資料も参考になりました。

また、各サービスの設定画面を開きながら、「ここのパラメータを変えると、こう変わる」と実際に触りながらの勉強もしました。AWS認定の試験は、実務ですぐに役立つような問題が多いことも、特徴だと思います。

室橋さん:私が最初に読んだのは、それぞれの認定試験のサンプル問題が紹介されている試験ガイドのページです。おおよその難易度を把握してから、AWS Skill Builderで、いろいろなコースを受講しました。また、AWSのサービスの紹介ページには、そのサービスに対して寄せられる「よくある質問」と、その回答が掲載されているものも多いので、そういったページを参考にすることによって、ベーシックなサービスに関する疑問部分を解決していったりもしました。

RPG(ロールプレイングゲーム)のようなゲーム感覚で学べる「Cloud Quest(クラウドクエスト)も、飽きずに勉強を続けるのに役立ちました。何から勉強を始めたらわからないという場合は、Cloud Questに取り組むといいのではないでしょうか。機械学習やネットワーク、セキュリティ、データ分析などのカテゴリ毎に内容が分かれていて、実際にAWSの環境を、ゲーム内で払い出される一時的なアカウントを使って、触りながら学習をすることができるので、「この辺りの分野の学習をしてみたいけど、何のサービスを触ればいいかわからないな」というときには、総合的に学習することができて、とても有用だと思います。個人的には、自分のアカウントを使わなくていい、というところが気軽で良いな、と感じています。

髪がない男性と巻き毛の男性は前を向いて笑顔でいる。室橋さんと杉山さん

AWS認定の勉強で深まった実務のスキルと専門性

AWS認定のメリットは、試験勉強を通じて得た知識とスキルを仕事に活用できることです。杉山さんと室橋さんは、AWS認定を取得したメリットを実際にはどのように感じているのでしょうか。

杉山さん:1つは、周囲からの信頼度が高まり、「希望するプロジェクトに参加したい」というアピールがしやすくなりました。もう1つは、受験勉強で得た知識とスキルが実務のさまざまな場面で役立つことです。仕事で課題に直面したとき、受験勉強で取り組んだ問題が思い浮かび、解決までの道筋が見つけやすくなったのです。また、どうしたら解決につながる情報が得られるか、というリサーチ力も身につきました。

室橋さん:私もオンプレミスの知識にクラウドサービスの知識とスキルが加わり、より複雑な課題解決に取り組めるようになりました。AWS認定の試験は、上級、専門のレベルになると、どの答えを選んでもおかしくないような選択肢が出てきます。そのなかから、出題の事例解決に最もふさわしい回答を選ぶことが正解につながるので、実務のロールプレイングにもなっています。試験勉強を通じて吸収したものが業務にすぐに活かせることは、AWS認定の大きなメリットだと思います。

もう1つのメリットは、「資格を視覚化する」。つまり、自分の実力を「見える化」できることです。それは自分のためだけでなく、共に働く仲間に役立つことでもあります。AWS認定を持っている人間が身近にいるということが周囲から「見える、わかる」ことによって、「あの人に聞けば、問題が解決できるかもしれない。相談してみよう」という流れができ、業務での課題解決のための選択肢が広がることにつながります。

杉山さんと室橋さんは日々、AWSのテクニカルインストラクターとして、さまざまなセミナーの講師を務めています。その立場から、「専門の細分化が進むIT業界だけに、AWS認定の勉強を通して、IT全般に関わる汎用的な知識を習得する機会が得られることもメリット」と、口をそろえました。

AWS認定は、いつでも受験がしやすいように、1年を通じて試験が実施されています。会場もオンラインまたは、試験会場から選択することができます。AWSがどういうものかを知るためにも、まずは試験日を決めて、勉強を開始するのもよいかもしれません。

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