Amazonグローバルセリングを利用し、海外のAmazonで販売を行っている2社の老舗企業があります。長い歴史を持つ両社に、Amazonでの海外販売はどのような効果や影響をもたらしたのでしょうか? 老舗企業の新たな挑戦に迫ります。

品質を見極めた真珠の宝飾品をAmazonで販売

兵庫県にある株式会社大月真珠は、1930年の創業以来、真珠の養殖から宝飾品への加工・販売を一貫体制で行っています。アコヤ真珠の1級品の取扱量は国内トップシェアを誇り、長年にわたって業界を牽引してきました。同社ネット事業部の西谷有里子さんは、「取扱量に加え、真珠の品質を見極める技術力の高さが強み」だと語ります。

窓辺に立つブルーのシャツを着た女性。その横に真珠のネックレスが飾られている
株式会社大月真珠 ネット事業部・西谷有里子さん

西谷さん「真珠は同じ1級品でも光沢や形などが微妙に異なります。それらを1粒ずつ肉眼で確かめ、自社基準に従ってさらに細かく選別していきます。その技術力と取扱量の多さをかけ合わせることで、真珠の品質が均等の美しい宝飾品を作ることができるのです」

国内外の卸販売を中心に販路を確立していた同社ですが、販路の拡大は長年の課題でした。そこで、2010年に自社ECでの販売を開始し、2012年に日本のAmazon.co.jpへ販路を拡大したと言います。

西谷さん「当初は、真珠の輝きや品質をECで伝えることができるのかと疑問視する社内の声もありました。ですが、厳しい品質基準やアフターサービスを徹底することで、徐々にお客様の信頼を得ていきました。Amazonは出品画面のデザインが洗練されており、商品の魅力や品質をしっかりと伝えられる点に共感して出品を開始しました」

薄いブルーの布の上に置かれた真珠のブレスレット、ブローチ、ネックレス、ペンダント
自社ブランド「ムーンレーベル」の下、ネックレスやブレスレットなど、幅広い商品を展開
薄いブルーの布の上に置かれたたくさんの真珠
独自の品質基準を設け、熟練の技術者が1粒ずつ品質の確認を行っている
木製のレールの上に置かれ一列に並んだ真珠に手作業で糸を通している様子
膨大な量の真珠を取り扱っているため、品質が均等のネックレスを作ることができる

Amazonグローバルセリングが海外販売における課題を解決

さらなる販路拡大を見据えた同社は、Amazonと日本貿易振興機構(JETRO)が共同で海外進出を支援する JAPAN STOREプログラムを利用し、2022年からアメリカのAmazon.comでの販売を開始。「日本の真珠は世界的に評価が高い一方、ECで海外販売する際に必要な個別配送や関税に関する対応が難しかったため、その解決策としてJAPAN STOREプログラムを利用しました」と西谷さんは振り返ります。

西谷さん「その流れでAmazonの担当者のサポートを受け、日本にいながら海外のAmazonに出品(販売)できるAmazonグローバルセリングの利用も開始しました。アメリカはECの先進国としてマーケットが成熟しており、真珠の宝飾品への高いニーズも存在します。ECで海外販売をするならまずはアメリカでと決めていました。現地法人を立ち上げずに海外販売できるメリットは大きいですね」

また、フルフィルメント by Amazon(FBA)もなくてはならないサービスだと西谷さんは続けます。

西谷さん「FBAを使えば、Amazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や商品に関するカスタマーサービスを代行してくれます。アメリカで商品を保管する倉庫や配送業者を探す必要がないので非常に助かっています。Amazonグローバルセリングは、海外販売におけるさまざまな課題を解決してくれました」

商品のイメージ写真が並ぶブランドページの画面
ブランドイメージや商品の魅力を伝えるAmazon.comのブランド紹介ページ

Amazonのサービスが真珠の新たな価値提案を後押ししてくれた

Amazon.comでの販売は順調に推移し、「国内のECの売上を上回る月もあります」と西谷さんは言います。

西谷さん「アメリカではまだブランドとしての認知度が低いので、スポンサープロダクト広告を使用したり、ストア機能を使ってブランドを紹介するページを作ったりしています。また、カスタマーレビューを参考にし、アメリカのお客様の体格に合わせてチェーンの長さを改良した商品を開発するなど、海外販売によって商品のラインナップやアイデアの幅が広がりました。Amazon.comで当社のことを知ったアメリカのお客様が、日本に来た際に直営店を訪ねてくださったときはうれしかったですね」

窓辺のテーブルで会議をしている男女4名
商品のデザインを社内公募するなど、自分たちが本当に欲しい宝飾品を日々追求している

同社はAmazon.co.jpでもFBAを活用するなど、業務効率化を通じて商品開発の時間を生み出しています。

西谷さん「真珠は特別な日に身につけるものというイメージが根強いですが、もっと身近な存在になってほしいと願い、普段使いできるデザインや価値提案を行っています。今後はアメリカで人気を博した商品を日本でも販売するなど、グローバルな商品展開も行っていく予定です。生物から生まれてくる真珠には、ほかの宝石にはない輝きがあります。これからも、親から子へ永く受け継がれていく特別な商品を世界中に届けていきたいですね」

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商品の魅力や特徴をしっかりと伝えるためにECでの販売を開始
飛鳥時代に墨が伝来して以来、墨の産地として発展を遂げ、奈良墨が国の伝統工芸品に指定されている奈良県。その地で1902年に創業した株式会社呉竹(くれたけ)の歴史もまた、墨から始まりました。「創業当初は固形墨が主力商品でしたが、120年に及ぶ歴史は挑戦の連続でした」と企画マーケティング部次長の立石翔さんは語ります。

硯が飾られたショーケースの前に立つ白いシャツを着た男性
株式会社呉竹 企画マーケティング部次長・立石翔さん

立石さん「当社は1958年に学童書写向けの墨滴を作り、その後も筆ぺんを開発しました。墨を応用した液体やペンタイプの製品を作ることは、当時の業界では常識破りでした。近年はアートやカリグラフィー用の画材、さらには化粧品の製造にも挑戦しています」

代理店や問屋を通じて文具店や画材店への卸販売を行い、日本はもちろん、海外80か国へと販路を広げてきました。

立石さん「卸販売では代理店や問屋の幅広いネットワークを活かし、商品を広く流通できる利点があります。その一方で、世の中に多くの商品があふれ、自社商品の魅力を伝え切れていないのではないかという課題に直面しました。ECであれば棚に埋もれることなく、しっかりと商品の機能性や特徴を伝えることができると考え、2019年に自社ECでの販売に踏み切ったのです」

赤い布の上に並べられたさまざまな形や大きさの固形の墨。その中に赤、白、青、黄、緑などのカラフルな色の墨が並んでいる
同社のルーツである固形墨。近年は色付きのものも販売し、日本画・水彩画などに幅広く使われている

Amazonグローバルセリングを利用し、世界10か国で商品を販売

自社ECと同時期にAmazonグローバルセリングを利用し、アメリカのAmazon.comへの出品を開始しました。

立石さん「当社の商品の心地よい書き味や独特の色合い、穂先の繊細さは、プロアマ問わず海外のクリエーターに認められており、海外ニーズは非常に高い。Amazonであれば商品特徴をダイレクトに伝え、文具店のない街に住むお客様にも届けることができます。現在はアメリカを皮切りにヨーロッパ、オーストラリアなど、世界10か国以上のAmazonで販売していますが、これは世界各国にマーケットプレイスを持つAmazonでなければ実現できないことでした」

世界各国のお客様から寄せられるカスタマーレビューが、新たな商品を生み出すきっかけにもなっていると言います。

立石さん「例えば、自宅での使用を想定して開発した固形絵具が、海外では屋外でのスケッチに使われるというニーズを知り、コンパクトサイズの商品を開発しました。卸販売ではお客様の声を直接聞く機会は少ないので、Amazonグローバルセリングを通じて、世界各国のお客様の声を聞けることは大きな刺激になっています」

白いパレットと一体になった14色の固形絵具のセット。筆も入るスペースがある
カスタマーレビューをもとにコンパクトサイズを開発した固形絵具「顔彩耽美」シリーズ
カラフルな筆ペン。色の濃さが異なるバリエーションが豊か
繊細な穂先のペンは表現の幅を広げ、多くのクリエーターに愛用されている

デジタルを活用して商品を届け、アナログな体験の大切さを伝えたい

近年はSNSを活用し、海外への情報発信も積極的に行っています。

立石さん「SNSを通じてお客様と交流したり、アーティストとのつながりを作ったりしています。海外の著名アーティストが当社の商品を使ってイラストを描く動画を作成し、Amazonの商品ページに載せています。定期的に活用しているスポンサープロダクト広告の効果と相まって、海外でのブランド認知度も上がってきています」

業務が多岐にわたるようになったからこそ、Amazonのサービスは重要だと立石さんは続けます。

立石さん「近年、メーカーがブランディングやプロモーションといった領域も担うD2C(消費者直接取引)の時代が訪れています。だからこそ、Amazonが世界各国で商品の発送業務を代行してくれるFBAのような、アウトソーシングによる業務効率化の重要度は増してくると思います」

今後は、海外の代理店や問屋との連携を強化し、卸販売とECという両軸で海外販売に力を入れていく予定だと立石さんは言います。

立石さん「日本の少子化や人口減少といった課題に対応するために、より多くのお客様にリーチできる海外への販路を拡大していきたいと考えています。当社のような地方の中小企業がそれを実現できるのは、Amazonグローバルセリングがあってこそ。デジタルを活用して世界各国のお客様に商品を届け、手書きのぬくもりというアナログな体験の大切さを伝えていきたいですね」

商品を見ながら会議室で相談をしている社員たち
手書きだからこそ伝わる想いやぬくもりを大切にした商品づくりを行っている
水彩絵具の使い方を紹介する動画が表示されている商品ページ画面
Amazon.comなどの商品ページには、世界各国のクリエーターとコラボした動画を載せている

 Amazonグローバルセリングを活用し、日本にいながら海外販売に挑んだ株式会社大月真珠と株式会社呉竹。その結果、両社は海外のお客様のカスタマーレビューによって新たなニーズや視点を発見し、商品開発に活かしています。Amazonグローバルセリングでの販売は、両社のさらなる挑戦の契機になることでしょう。


Amazonグローバルセリングとは?
日本にいながら海外のAmazonに出品(販売)できるサービスです。対象地域はアメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋地域など、世界各地に及びます。また、フルフィルメント by Amazon(FBA)を利用することで、Amazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や商品に関するカスタマーサービスを代行します。


2022年のシリーズでは、事業承継、地域活性化、働き方改革などの社会課題の解決のためにDXを活用した事例や農業や水産業などの第一次産業における中小企業が実践するDXについてご紹介しています

本連載について
Amazonでの販売を支援する「Amazon出品サービス」、ビジネス上の購買をサポートする法人向けサービス「Amazon ビジネス」、決済サービス「Amazon Pay」、クラウドサービス「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」など、Amazonはさまざまな企業の課題を解決する多様な選択肢を提供しています。本連載では、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組む中小企業と、そのDXをさまざまなカタチで支援するAmazonのストーリーをご紹介します。
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