9月に実施された「Amazon Goes Gold(AGG)」は、小児がんへの理解を深め、支援の輪を広げるためのボランティアイベントです。日本では、Amazonの物流を担うフルフィルメントセンター(FC)やデリバリーステーション、カスタマーサービスなど、お客様の笑顔のために奮闘する全国の勤務地から、3000人以上がボランティア活動に参加しました。

9月6日には、小児がんの実情を学ぶために、闘病を経て、次のパリ・パラリンピックを目指す高校生や、今年就職したばかりの社会人1年生、Amazonの社員がオンライン交流会を開催しました。そして、この交流会をきっかけに、「がんへの理解を深めていただける機会になるなら」と、Amazon社員の金子卓司さんと中島香織さんのお二人がご自身のがんの闘病体験を話してくれました。

会社からのサポートがあったから、闘病中の不安も乗り越えられました
藤井寺フルフィルメントセンター オペレーションマネージャー 金子卓司さん
Amazon社員が語るがんになって初めて気づく必要なサポート

異動を目前に急性リンパ性白血病と診断された

金子卓司さんは、藤井寺FCのオペレーションマネージャーを務めています。血液のがんである白血病の1つである「急性リンパ性白血病フィラデルフィア染色体プラス」を発症したのは2020年2月のことです。以前から肝臓の持病があり、3か月に1度の定期検診を受けていましたが、異動が決まったため、1か月繰り上げて検査したところ、思いもよらず、白血病と診断されたそうです。そして、翌日には入院し、治療が始まりました。

「体調が良かったので予想外の入院でした。でも、赤血球も血小板も減少していて、とくに血小板は健康な人の4分の1まで減っていたのです。白血病は健康診断や体調不良で受診して見つかることが多いのですが、私は初期で見つかったケースでした」

白血病の治療は、抗がん剤などの薬物治療が基本になります。それとともに、血球の回復を目指す骨髄移植による治療も検討されます。金子さんの場合も、治療は抗がん剤の投与から始まりました。

「抗がん剤治療のために1か月入院し、次の1か月は自宅で休むというスケジュールを3回繰り返しました。その間、骨髄移植のためのドナー探しも並行して行われました。私の場合、骨髄バンクには適合者が一人もいなかったため、臍帯血(さいたいけつ)移植や海外ドナーからの移植も検討されました」

日常生活を取り戻すのに1年2か月

その後、金子さんは兄の血液が適合したことから、骨髄移植に踏み切ることになりましたが、全身への放射線照射と抗がん剤の投与は、過酷なものでした。

「前治療に当たる放射線治療は、いわば全身がやけど状態になります。臓器、なかでも胃腸がただれるので、下痢と嘔吐を1日20回は繰り返しました。大きな口内炎がいくつもできるため、食事もほとんど口にできません。痛みも激しく、白血球の値が下がるのをじっと耐えるだけでした」

移植後も、金子さんは回復の途中でカテーテルを挿入していた部分に感染症が起こり、生死の境をさまよう時期がありました。また、ようやく退院し、体調が落ち着いた頃に合併症を起こして再入院するなど、日常生活を取り戻すまで、発症から1年2か月もの時間がかかりました。体重も発症前の66㎏から46㎏にまで減っていました。ようやく仕事に復帰できたのは、2021年4月。その前月から、産業医や直属の上司と話し合い、復職のタイミングを決めました。

復職後も安心して働ける職場環境づくりを

闘病生活を振り返りながら、金子さんが思うのは、周囲からのサポートの大切さでした。とくに一家の大黒柱として3人の子どもたちを育てている金子さんのようなケースは、自身の闘病だけでなく、収入も気がかりの1つになります。

「白血病は入院期間が長いため、休職期間も長くなります。私は会社が設けている休職期間内に復帰できましたが、闘病中、復帰できるかどうかの不安は常にありました。がんは再発の心配もある病気ですし、日本の社会全体でもっとフレキシブルな休職制度がベーシックなものになれば、復職後の安心感が違うと思います」

休職中の生活費や高額な治療費も頭の痛い問題です。金子さんの場合は、健康保険組合からの傷病手当に加え、アマゾンジャパンからの付加給付もありました。また、治療費の一部を国が負担する高額療養費制度を利用したことで、経済的な問題は乗り越えられました。

「私は恵まれていましたが、困っている人も多いのではないでしょうか。特に小児がんの場合は、家族の付き添いが必須です。小児がん治療が受けられる専門病院は都市部が多いので、患者さんが地方在住の場合は、家族が病院の近くに家を借りたり、ホテルに滞在することもあるそうです。そういった負担を考えると、小児がんの患者さんとご家族がいかに苦労されているのかと思わざるを得ません。もっと支援が必要だと感じました」

現在の金子さんは体調もよく、在宅勤務も利用しながら、休職前に近い働き方ができています。そして、オペレーションマネージャーとして考えるのは、がんをはじめ闘病経験がある社員が働きやすい環境にするために、何が必要かということです。

「まずは周囲が病気を理解することが大切だと思います。その上で、働きやすい環境を整えていく。たとえば、人工肛門の人が利用しやすいオスメイトをトイレに設置するという設備の工夫があるでしょう。勤務する時間を柔軟に選べたり、職種を変更したりといった労働環境の整備もあると思います。私もFCを引っ張るリーダーの一人として何ができるか、考えているところです」

がんの闘病を経て、Amazonへの就職を決めたのは、働きやすい職場だったからです
Studio Procurement Specialist 中島香織さん
Amazon社員が語るがんになって初めて気づく必要なサポート

2人の子育て中に乳がんが見つかる

中島香織さんは現在、Amazonが販売する商品撮影を行うイメージングスタジオで勤務しています。

中島さんに乳がんが見つかったのは、2012年の夏です。乳がん特集の女性誌を参考にセルフチェックをすると、今まで感じたことのないしこりに気づきました。周囲の友人に相談すると、「良性が多いから大丈夫」と言う人がほとんどでしたが、一人だけ病院の受診を勧めたそうです。思い切って受診をすると、超音波検査とマンモグラフィーという一般的な乳がん検査から、細胞の一部を採取する生体検査へと、検査が精密になっていきました。

「年に1度の乳がん検診では、いつも経過観察と書かれていたのですが、精密検査を勧められているわけではないので、そのままにしていました。精密検査の結果を聞きに行ったときも、まさか自分ががんにかかるとは夢にも思わなかったです」

当時の中島さんは、専業主婦として2人の子どもを育てていました。長男の長期入院をきっかけに仕事をやめていましたが、下の子が幼稚園に入園。そろそろ仕事を再開するため、就職活動を始めようかと考えていた矢先の乳がん発覚でした。

手術が成功したあとも、治療を継続中

「私の治療はまず手術から始まりました。手術自体は入院期間も5日間と短く、体への負担も少なかったのですが、自分なりに乳がんのことを調べ過ぎたことも影響したのでしょう。不安と心配がつのり、過度のストレスに苦しみました。がんの患者さんは体調の激変や治療薬の影響もあり、4割がうつ病になるという話もあるそうです」

当初の予定では、手術後に抗がん剤治療を受ける予定でしたが、休止し、その間、ストレスからの回復に専念することに。早く治療を始めたことが幸いし、中島さんは2週間ほどで、気力と体力を取り戻すことができました。

「ストレスに苦しんでいた時は、眠れないし、食欲もありませんでした。つらかったのは何をする気力もなかったことです。医師からは『薬を飲み、家事や育児などをせずにただ寝ていてください』という指導がありました。その通りにしたら、すぐに良くなって、術後から4週間後に抗がん剤治療を始めることができました」

中島さんは抗がん剤治療のあと、放射線治療も受けました。さらに、再発を防ぐためのホルモン療法にも取り組み、これは現在も続いています。

Amazonへの就職で働く楽しさを取り戻す

再発の心配もほぼなくなり、育児からも手が離れてきた頃、中島さんは再就職を決意しました。いくつかの就職活動を経て、2016年の春に入社したのがアマゾンジャパンでした。

「実はその頃すでに、夫がアマゾン ウェブ サービス(AWS)に転職していました。アマゾンジャパンに就職を決めたのは、『働きやすい会社だから』という夫のアドバイスも大きかったです」

就職したばかりの頃は、商品を撮影するカメラマンやスタイリストなどのスタッフのスケジュールを調整する仕事でしたが、現在は、資材調達や新規取引先との契約などを担当しています。また、就職した翌年には、正社員になることもできました。

「職場はとても気に入っています。社員を大切に考え、多様性を重視するAmazonのカルチャーが自分にとても合っていると思っています。正社員になれたときは、本当にうれしかったです」

中島さんが闘病経験を通じて感じることは、働く女性へのサポートです。家事や育児を担うことも多い女性は、家事をアウトソーシングすることで負担が軽くなるといいます。

「たとえば、家事代行を依頼するとき、その費用が割引になる制度などは便利です。本人だけでなく家族も利用できるサポートがあると、小児がんの家族を持つご家族の皆さんにとっても大きな励ましになると思います」

今回、AGGのキャンペーンをきっかけに、お二人に貴重な話を聞くことができました。今後もAmazonは、AGGの活動や病気を抱えながら働く人たちをサポートしながら、小児がんに対する周囲への理解を広げていきたいと考えています。

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