Amazonの物流・配送ネットワークで使用されるロボットを開発するAmazon Roboticsが生み出したロボットたちは、世界各国のAmazonの物流拠点フルフィルメントセンター(FC)に導入され、FCで働く多くの人たちをサポートし、商品発送のプロセスを効率化しています。
日本とAmazon Roboticsとのつながりは、日本にロボットが本格導入される前の2017年に、世界各国の大学や高専などのチームが参加したAmazon Robotics Challenge が名古屋で開催されたり、日本の教科書でAmazon Roboticsについて紹介されたりなど、多様なつながりがあります。
そして今年、Amazon RoboticsとAIの取り組みにおける2つの重要な節目を迎えました。それは、Amazonがちょうど100万台目のロボットを配備したこと、そして世界最大級のモバイルロボティクスの製造元そしてオペレーターとなったことです。この記念すべき100万台目のロボットは、日本のFCに配備され、現在世界300以上の施設に広がるグローバルネットワークの一員となりました。

しかし、それは物語の一部に過ぎません。私たちはまた、Amazon Robotics全体をより賢く、より効率的にするために設計した、新しい生成AIモデルDeepFleetを導入しています。この新しいAIモデルは、配送ネットワーク全体でロボットの動きを調整し、ロボット群の移動時間を10%改善します。これにより、私たちはより迅速に、よりコストを抑えて、お客様に商品をお届けすることができます。
ロボットをより賢く
DeepFleetは、道路に自動車があふれて渋滞している都市のための、インテリジェントな交通管理システムのようなものだと考えてください。賢い交通システムが運転手の待ち時間を減らし、より良いルートを導き出すように、DeepFleetはロボットの動きを調整して、FC内での移動を最適化します。これにより、渋滞が減少し、より効率的な経路が確保され、お客様の注文をより迅速に処理できるようになります。


AmazonのFC内での商品の移動に関する豊富で広範なデータセットを使用し、SageMakerを含むAWSツールを活用して構築されたこの新しいAIモデルは、ロボット群の効率性の定義を一新します。これにより、より多くの商品をお客様の近くのFCに保管することができ、配送の迅速化とコスト削減につなげることができます。また、時間とともに学習し改善するAIを基盤としているため、ロボット同士の連携を最適化する新しい方法を継続的に見出していきます。
10年間のAmazon Roboticsのイノベーション
私は、幸運にも初期の頃から、Amazon Roboticsの歩みを見守る特権を得てきました。2012年、私たちは倉庫の床面を移動できる在庫棚を運ぶ単一タイプのロボットからスタートしました。今日では、FCで勤務する人たちの仕事をより容易で安全にし、業務をより効率的にするように設計された多様なロボット群を運用しています。
Hercules(ヘラクレス)ロボットは、最大1,250ポンド(約567kg)の在庫を持ち上げて移動できます。Pegasus(ペガサス)ロボットは、精密なコンベアベルトを使用して梱包された商品を扱います。そして、私たちの最初の完全自律型モバイルロボットであるProteus(プロテウス)は、お客様の商品が入った重いカートを移動させながら、施設内の開放された制限のないエリアにおいて、その場にいる人たちの周りを安全に移動することができます。

これらのロボットはAmazonで働く人たちと協力して共に働き、重たいものを持ち上げる作業や反復作業を担うことで、現場で作業する人たちが技術的スキルを開発する機会を創出しています。2019年以来、70万人以上の社員が、先端技術との協働に焦点を当てたさまざまな研修を通じてスキルアップを果たしてきたことを、私は特に誇りに思っています。実際、昨年末にアメリカ、ルイジアナ州シュリーブポートで立ち上げた次世代のFCでは、高度なロボティクスの導入により、信頼性管理、メンテナンス、エンジニアリングの職種で必要とされる人が30%増加しました。
現実世界での価値の創造
DeepFleetは、AIイノベーションに対する私たちの実践的なアプローチを代表しています。技術それ自体を追求するのではなく、実際の問題解決に焦点を当てています。ロボットの移動時間を10%削減することで、単に効率性を改善するだけでなく、配送時間の短縮、運営コストの削減、エネルギー使用量の削減という具体的な利点を生み出しています。こうして私たちが生成AIを現実世界で機能させ、Amazonで働く人々とお客様の双方に具体的な価値を提供しています。
私たちのロボティクスと生成AIへのアプローチをユニークにしているのは、イノベーションと現実世界での効果を組み合わせているからです。私たちはアメリカ国内でロボットを製造し、各地域のサプライヤーと協力しながらグローバルに展開しています。こうすることで、高品質な基準を維持しながら、設計者、製造チーム、現場で作業する人たちの間で価値あるフィードバックのループを作り出すことができます。

私たちが構築している技術は、単に商品を移動させる以上のことを行っています。それは、職場の安全性を変革と、新しいキャリアの機会を創出することです。ロボットが重い商品を持ち上げる作業や反復作業を行うことで、現場で働く人たちの身体的な負担を軽減しています。そしてAmazon Career Choice(Amazonで働く人々のためのキャリア支援プログラム)のようなプログラムを通じて、システム運用やその他の需要の高い分野での技術的役割に必要なスキルを習得できるよう支援しています。
未来を見据えて
今回迎えた、100万台のロボットの配備という節目と、新しい生成AIモデルDeepFleetの活用は、ロボティクスとAIが協力して受注から発送までの業務と配送の可能性を再定義するエキサイティングな未来を示唆しています。10年前、私たちはシンプルな問題から逆算して、作業を行う人がより効率的に商品在庫にアクセスできるようにする方法に取り組みました。そして現在では、私たちは最新のAI技術を適用することで、ロボット群全体をより賢くし、より迅速に、そしてよりコストを抑えることによって、お客様により高い価値のご提供を実現しています。
これはまだほんの始まりに過ぎません。DeepFleetがより多くのデータから学習するにつれて、さらに賢くなり、より深く効率性を追い求め、お客様により近い場所で、より多くの選択肢を提供し、ロボット活用の物流における可能性を再定義していきます。この取り組みが私たちをどこへ導くのか、さらなる展開を今後共有できることを楽しみにしています。
