現在、世界中のAmazonオフィスにドア・デスクが設置されています。このデスクの基になっているのは、ジェフ・ベゾスがかつて考案したデザインです。

1995年の夏、創業間もないAmazonには片手で数えられるくらいのスタッフしかおらず、そのわずかなスタッフは机を必要としていました。ジェフ・ベゾスの友人で5人目のスタッフであるニコ・ラブジョイ(Nico Lovejoy)によると、ベゾスはドアを出てすぐのところで自ら、このありあわせではあるものの、コストパフォーマンスに優れた解決策を見つけたといいます。

ラブジョイはこう話しています。「たまたま、向かいにホームセンターがありました。販売されていた机とドアを見比べたところ、ドアのほうがずっと安かった。それでベゾスは、ドアを買って脚をつけることにしたのです」

こうして、Amazonの「ドア・デスク」が誕生しました。まさかこの手製のデスクがAmazonの文化を象徴する存在になろうとは、当時誰も考えていませんでした。20年以上が経った今でも、世界中で数千人のAmazonのスタッフたちが、このとき作られたドア・デスクをもとにした机で日々仕事をしています。

「私たちがドア・デスクを作ることにしたのは、それが一番お金のかからない方法だったからです。もともと、私たちのやっていることの多くが寄せ集めから生まれたものです。寄せ集めの解決策がうまくいくのであれば、それでいいのではないでしょうか」とラブジョイは言います。

1年後、ジョー・カーニー(Joe Kearney)がAmazonに入社すると、彼はすぐに、この簡易デスクを組み立て、そこで仕事をするようになっていました。カーニーはこう話します。「ぐらつきとがたつきがひどく、段ボールを下に敷いて平らに保つ必要がありました」

ラブジョイによると、当時Amazonは一対のコンピューターサーバーですべての業務を回していたといいます。これらのサーバーは、親しみを込めてBert(バート)とErnie(アーニー)と呼ばれていました。サーバーはベゾスの作ったドア・デスクの上に置かれていたのですが、ラブジョイはこれを「ひどくぐらぐらする」と言っていました。

ラブジョイは、「私はベゾスの作ったデスクにハードウェアを設置しに行きました。誰もジェフ・ベゾスを大工として雇いたいとは思わないでしょう。ほかの仕事のほうがずっと向いています。彼もきっと同じことを言うのではないでしょうか」と話してくれました。

創意工夫、創造性、ユニークさ、そして我が道をゆくという意志を象徴するものだと思います
初期のAmazon社員、ニコ・ラブジョイ

事業の成長に伴い、ドア・デスクをAmazonの中心的価値の1つである倹約のシンボルとして使い続けていこうということになりました。現在では、このデスクは社員に与えられる賞にまでなっています。Amazonでは、お客様に低価格を提供するための優れたアイデアを表彰する「ドア・デスクアワード」を実施しています。この賞についてラブジョイは、「創意工夫、創造性、ユニークさ、そして我が道をゆくという意志を象徴するものだと思います」と話しています。

カーニーは、自分が1990年代に作ったドア・デスクのうち2つを今も保管しています。そのうちの1つをカットして子どもたちのためのドア・デスクにしました。

カーニーはこう言います。「次に伝えていこうとしているのです。子どもたちは大切にしてくれています。ちゃんと理解しているのです。これがAmazonの歴史であり、Amazonの文化の一部だということを知っている。すばらしいことだと思います」