“「たとえどんなに大きな失敗をしても、命までとられるわけではありません。その失敗を成長の糧にすればいいのです」”
アマゾンジャパン バイスプレジデント ライフ&レジャー事業本部 統括事業本部長 渡辺朱美さん

「エンジニアから営業へのキャリアチェンジを決意してからというもの、私は本当にたくさんの失敗をしてきました」と明るい笑顔で振り返るのは、アマゾンジャパンのバイスプレジデント、渡辺朱美(わたなべ・あけみ)さんだ。

彼女は、アマゾンジャパンの小売り部門のひとつである「ライフ&レジャー事業本部」で数百名の社員を率いている。

気楽に全力投球 常に前を向く仕事術
アマゾンジャパン ライフ&レジャー事業本部 統括事業本部長 渡辺朱美さん

同事業部では、スポーツやアウトドア、自動車、バイク、家具、キッチン用品、おもちゃ、DIY工具、研究所や工場で使われる専門商材など、幅広い商品を扱っている。渡辺さんの使命は、お客様に多様な品揃えをご用意し、よりよいお買い物体験をご提供することだ。

渡辺さんは理系大学を卒業後、外資系のITメーカー2社で勤務し、その間、事業部統括、執行役員、代表取締役を歴任。そして2013年にAmazonに入社し、現職に就任した。ビジネスリーダーとして順調にステップアップしてきたかのように見える渡辺さん。しかしその道のりは、決して平坦なものではなかった。

「私はもともと開発エンジニアとしてキャリアをスタートさせ、最初の15年間はエンジニアやブランドマネージャーとして働いていました。しかし、その後、ニューヨークへの赴任から日本に戻ってきた時、仕事に関して以前からアドバイスをいただいていた方から『キャリアアップを希望するなら、営業職を経験しておいたほうがいい』と提案されました。ちょうど自分でも今後について考えていた時だったので、自分としては、清水の舞台から飛び降りるような思いで決断しました」

主に社内に向けて仕事をする開発エンジニアと、社外のお客様との交渉が主となる営業職では、同じ会社にいても仕事内容はまったく異なる。それこそ名刺の渡し方すらわからず、初めは失敗の連続だったという。

「でも正直、あまり落ち込んだりはしませんでした。もちろん反省はしますが、極端な言い方をすれば、会社で失敗しても命をとられるわけではありませんから。失敗してもそこから学べば次につながるわけですから、くよくよせずに前向きに取り組んで行ったらいいんじゃないかなと思います。失敗から得た学びが、今の自分をつくっていると思います。それが私のモットーは、『気楽に全力投球』。失敗をした場合の対策も考えたうえで、新しいことに積極的に挑戦する。それが重要だと考えています」

そんな渡辺さんが現在、社員の意識改革において取り組んでいるテーマは、「ダイバーシティ&インクルージョン」。個人の出身地や人種、性別、文化の違いなど、多様性を尊重し、個性を認め合い、すべての社員が一体となって働きやすい環境を構築していくことだ。

その実現にあたって課題となるもののひとつに、個人が無意識に持っている偏見(アンコンシャス・バイアス)があると渡辺さんは言う。

「無意識の偏見は、本人たちも気がつかないうちに持っていることがあります。私が組織のトップとしてできるのは、事業部のメンバーたちにメッセージを発信し、無意識の偏見に対する個人の気づきを促すことです」

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ミーティング中も、場を和ませて積極的に意見を求める
気楽に全力投球 常に前を向く仕事術

渡辺さんがそうした活動を行う理由には、Amazonが世界各地に同僚がいるグローバルな環境の職場というだけでなく、自身の経験があるからだ。

「私自身、大学は理系でしたし、開発エンジニアとしても男性が多い環境にいたことが長く、ニューヨークの職場では唯一の日本人であったりと、自分をマイノリティだと意識する機会が多くありました。『他の人より目立つ存在になれるから得だ!』と、基本的にはその環境をポジティブにとらえてきましたが、時には周囲とのコミュニケーションの難しさに悩んだことがあったのも事実です」

その経験を活かし、日本人の中に一人だけ外国人がいる場合や、オフィスでの対面ミーティングで一人だけ遠隔地から電話で参加している場合など、孤立感を感じやすくなる時、渡辺さんは積極的にその人に「何か意見はある?」と質問を投げて、他のメンバーと同じように発言しやすい空気をつくるという。

「かつて私が感じたような疎外感を、今一緒に働いている人たちには経験してほしくない。それが私の正直な思いです」

そのため渡辺さんの事業部では、「オールハンズ」と呼ばれる事業部の社員全員でのミーティングを四半期に1度開催している。また事業部の全社員を10人程度ずつに分け、順にそのグループと開催する「ラウンドテーブル」と呼ばれる少人数での気軽な会では、ひとつのテーブルを囲み、提案や意見を求める。

加えて、2013年の入社以来、メールで定期的に配信している「朱美さん便り」では、渡辺さん自身の人柄や普段の生活がわかるものから、働き方や企業文化などビジネスに関するものまで、さまざまなメッセージを送っている。多様な方法で、社員から意見を吸い上げるとともにAmazonの企業文化を共有し、顔が見えるリーダーであることに努めている。

「あらゆる手段で根気よくメッセージを発信していくことで、社内の意識は変わり、企業文化が確実に伝わっていくと私は考えます」

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畳の会議室でリラックスしてアイデアを出し合う

実は2年前渡辺さんは病気になり、1か月仕事を休み、その後も1年間、週の半分を在宅勤務した。責任者として席を空けることにためらいもあったが、しっかりと仕事を休むことを選んだ。社員たちへの信頼と、自分が休むことで、社員が同じように病気になった時に無理をさせずに済むという判断があった。また、Amazonでは勤務時間や働く場所の自由度が高く、各自の都合に合わせて在宅勤務も奨励されていることが、職場復帰をスムーズにした。

「勤務時間や働き方の自由度が高いことは、社員にとって大きな魅力です。Amazonでは各自の都合に合わせて、在宅勤務することもできます。昨年足を痛めてしまった時にも、上司である社長から『もっと在宅勤務をしたら?』と勧められ感動しました」

Amazonで働くことで、自身の成長を感じるという渡辺さん。

「Amazonはつねに進化を続けている企業です。その進化のスピードを楽しむことができる人にとって、自身を成長させられる理想的な環境だと言えます」