日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)は、日本経済にとって非常に大きな存在です。そして、その多くがDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進め、ビジネスに変革をもたらす活動を行うと共に、中小企業の数だけ挑戦のドラマが生まれています。デジタルが切り拓く中小企業の未来とAmazonのサポートを紹介する連載企画の第10回は、DXを通じてビジネスを変革した老舗企業にフォーカスします。
※本記事は、2021年10月6日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。
2021年9月1日、デジタル庁が発足し、各メディアで大々的に取り上げられました。行政のシステム刷新を中心に、国を挙げてのデジタル化の改革に注目が集まっています。それに伴って、民間企業のDXもますます加速することでしょう。今回紹介する2つの中小企業は、老舗の名に違わない歴史を持ち、リアル店舗を存続させながらEC事業にも積極的に乗り出しました。歴史を守りながらDXを成し遂げた成功事例を見てみましょう。
糀づくりの老舗がV字回復するまで
大分県佐伯市にある糀屋本店の創業は1689年。江戸元禄時代の面影を残す作業場では、昔ながらの室蓋(むろぶた)を用いた糀づくりが貫かれています。9代目の浅利妙峰さんは塩糀ブームの牽引者として知られていますが、現在に至るまでの過程には多くの苦労がありました。
浅利さん「330年にわたって糀づくりに携わる中で、糀を取り巻く環境の変化に直面してきました。戦前は各家庭で糀を購入し、味噌や醤油、甘酒を造ることが習慣でしたが、戦後になると市販の調味料が普及し、糀の需要は年々落ちていったのです」
家業を継いだ2007年当時の経営状況はどん底だったと振り返ります。
浅利さん「どこかで老舗としての慢心や怠慢があったのでしょうね。でも、このままではいけないと考え、老舗としてきちんと受け継いでいくもの、革新していくものを見極めなければと頭を切り替えました。そこから、糀や甘酒に加えて新たな商品を作れないか、糀の魅力を広められないかと考え始めたのです」
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そんな中、江戸時代に記された書物「本朝食鑑」に塩麹漬の記述を見つけた浅利さんは、独学で塩糀づくりに挑戦。配合などの研究を重ねて塩糀を現代に甦らせ、2006年に発売を開始します。
浅利さん「元来、糀には酵素が豊富に含まれていて、タンパク質や脂肪、デンプンなどを分解して腸内環境を整える効果が証明されています。医食同源という言葉があるように、日常的に健康な身体を作るのにぴったりなのです。しかも、塩糀は醤油や味噌に比べて匂いが少なく、料理の色味にも影響しない。海外の有名シェフにも愛用いただけるようになり、塩糀を機に、糀のパウダーといった新商品の開発も加速しました」
2011年頃、塩糀がメディアに注目され、浅利さんは本の出版やテレビ出演などを通して「糀の伝道師」として精力的に活動。一気に塩糀ブームが到来します。
浅利さん「それまでは佐伯市の直営店、一部の百貨店などに販路を絞っていたのですが、注文が増えたこともあり、自社ECサイトはすでに開設していました。でも、九州から東京へ配送する際のリードタイムやコストがかさみ、悶々とする日々が続きました」
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Amazonが世界進出という夢の架け橋に
そんなとき、展示会でAmazonの担当者と出会い、状況が変化します。
浅利さん「担当者の方に率直に悩みを打ち明けたんです。これまで積み重ねてきたブランディングや糀への想いをAmazonでも伝えられるか、我々のような小さな企業を相手にしてくれるのかと。すると、とても親身になって相談に乗ってくれました。そこからの動きは速かったですね。ブランドストアの構築を手取り足取りサポートしてくださり、たったの3日で出品にこぎつけたのが2019年のことです」
配送に関する悩みは、Amazonが商品の保管、受注、発送、カスタマーサービスまでを代行するフルフィルメント by Amazon(FBA)が解決しました。
浅利さん「Amazonの倉庫に商品を預けることで、在庫管理から注文処理、発送までを代行してくれるので、リードタイムやコスト、さらには労働時間の削減にもつながりました。データ分析に基づく在庫管理も正確で在庫が不足することもありません。プライムデーに向けた準備も丁寧にサポートしてくださり、今年のプライムデーは過去最高の売上を記録。年間売上は前年比130%の水準で伸びています」
Amazonの影響力の大きさを知る出来事も経験しました。
浅利さん「音声SNSで1000人くらいの聴衆を前に糀の魅力を語ったところ、その場で『たった今Amazonで購入しました』という書き込みがどんどん増えていきました。Amazonは1クリックで決済できるので、購入までのスピード感には驚きました」
「糀の伝道師」として世界中を飛び回り、講演活動などを行う浅利さん。「糀で世界中の人をお腹の中から元気に幸せにしたい」というスローガンを胸に、海外のマーケットプレイスに出品できるAmazon海外販売(グローバルセリング)を利用して販路を拡大する予定です。
浅利さん「糀は東アジア特有の文化ですが、糀の源である発酵や酵素の文化は世界中に存在します。各国の主食には必ずと言っていいほどタンパク質や脂肪、デンプンが含まれているので、あらゆる国で糀が受け入れられる可能性を秘めていると信じています。糀を通して世界中の人を元気にして、食卓から幸せを生み出す。Amazonは、世界を平和にするという私たちの夢を叶えてくれる架け橋のような存在なんです」
コロナ禍で生まれた老舗せんべい店の危機感
もう1社の老舗は、埼玉県八潮市でせんべいづくりを営む加賀屋米菓です。1930年代、石川県出身の創業者が上京してせんべい屋を開き、埼玉県八潮市に店舗と製造工場を造ったのが1952年。1965年には全国菓子大博覧会で名誉総裁賞を受賞するなど、高い評価を得てきました。三代目で専務取締役の山根輝久さんは、品質へのこだわりをこう語ります。
山根さん「原料のうるち米の風味を引き出せるよう、手間暇かけて洗米・製粉を行った後、生地を薄く伸ばします。この生地を伸ばす技術が当社の特長で、ここまで薄いせんべいは珍しいと思います。パリッとおいしい食感を生み出すために、生地の薄さを均一にし、火入れや温度・湿度管理も徹底するなど、一貫製造にこだわってきました」
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草加市・八潮市一帯は草加せんべいの産地として全国的に知られており、加賀屋米菓も草加せんべいの組合に属しています。
山根さん「ブランドが確立されているので一定の販路があり、その恩恵に安住していた自分がいたかもしれません。小売店の数は年々減少していましたが、OEMの発注元からの短納期要請やリベートにも全力で対応し、苦労しながらも家業を続けてきました。しかし、コロナ禍によって卸先の売上が下がり、安心感は危機感に変わりました。そして、2019年1月に年末ギフトの売上が落ちた原因を調べていたところ、お客様の消費行動がECに移っていることを確信し、本格的にECを始めようと決心したんです」
売上が年間130%増え、ビジネスが加速
2019年からAmazonへの出品を本格化。ECに関する予備知識がないままに始めたという山根さんは、Amazonのサービスの恩恵をこう分析します。
山根さん「まず、1商品につき1ページ、写真と商品紹介文というシンプルなフォーマットが確立されていることが大きかったですね。他のECサイトと比べて作業負荷が低く、私のような初心者でも簡単に出品することができました。商品登録などについてはAmazon出品大学という無料のトレーニング動画で勉強し、オンラインセミナーにも参加しました」
そうして得た知識をフル活用し、山根さんは戦略的にECビジネスを加速させています。
山根さん「当初はAmazonの売上はすべてAmazon内のプロモーションに使いました。スポンサープロダクト広告で露出を増やし、検索順位と売上ランキングを上げるというサイクルを半年ほど続け、認知度を拡大していきました」
2020年と比較してAmazonの売上は年間130%増と成功を収め、リアル店舗を含むEC以外の売上を逆転したといいます。
山根さん「当社の店舗は駅から離れていますが、コロナ対策で駅前に出店しようとなると莫大な費用がかかります。一方、Amazonの費用は安いですし、商品の保管・配送費用のメリットも大きいです。FBAを利用して商品をAmazonの倉庫に預け、出荷から配送までを委託しているので、注文のFAX1枚を取りに休日出勤していた頃が嘘のようです。また、FBAは賞味期限の早い順に出荷してくれるなど、厳密なルールがあることも安心感につながっています」
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さらに、ECビジネスを通して商品開発に対する考え方も変わってきたといいます。
山根さん「これまではスーパーや百貨店のバイヤーの意見をもとに商品を作っていました。でも、言われた通りに作ってもなかなか売れない。一方、Amazonはカスタマーレビューを通してお客様のご意見を直接聞くことができますし、売上ランキングを分析すればニーズの変化やトレンドに対応できます。何より、全国のお客様から届く喜びや感謝の言葉は日々の励みにつながっています」
ECを通じたDXがもたらしたビジネスの変化、モチベーションの変化によって、山根さんの夢も広がっています。
山根さん「コロナ禍の影響で農林漁業もECに進出しており、せんべいの原料や味付けの分野で協業できると考えています。農林漁業の若い担い手との異業種コラボで、ビジネスにインパクトを生み出せるのが理想的ですね。それから、海外展開も視野に入れています。クラッカーのように、せんべいの上にサーモンマリネやチーズを乗せて食べる新しいスタイルを提案できたら、せんべいの需要も価値も高まっていく。Amazonを利用している今だからこそ、そうした展望が生まれてくるんです」
老舗としてのブランドに依存せず、EC事業に進出して成功を収め、さらには海外販売という次なる一手も見据える両社。積極的にDXを推し進める挑戦はこれからも続き、Amazonはそんな両社の夢をこれからも応援し続けます。
~デジタルが切り拓く中小企業の未来~
Vol.1 彼女たちはいかにして道を切り拓いたか?(前編)
Vol.1 彼女たちはいかにして道を切り拓いたか?(後編)
Vol.2 なぜ、彼らは海外進出で成功を収めたのか?
Vol.3 コロナ禍で成功を収める中小企業の共通点とは?
Vol.4 常識を覆すヘルスケア製品はなぜ生まれたのか?
Vol.5 事業を受け継いだ彼らが 変革を成し遂げるまで
Vol.6 ヒット商品はいかにして生まれるか?
Vol.7 SDGsを背景にしたリユース市場の最前線
Vol.8 進化するEC市場、新たなDXで成功を掴む
Vol.9 地方自治体×Amazon。新たな地域活性化の形とは?
Vol.10 DXは老舗企業のビジネスをどう変えるか?
Vol.11 DXが生み出す地方創生の新しい形
Vol.12 なぜ、彼らのECビジネスは短期間で急成長したのか?
Vol.13 ECビジネスを加速させるブランディング戦略の新発想
Vol.14 中小企業のDXを加速させるAmazonのサポートとは?
Vol.15 中小企業のDXを支えるAmazon社員の想い
Vol.16 コロナ禍を乗り越えた飲食業のDX最前線
Vol.17 日本の中小企業が世界に羽ばたくために
Vol.1 彼女たちはいかにして道を切り拓いたか?(前編)
Vol.1 彼女たちはいかにして道を切り拓いたか?(後編)
Vol.2 なぜ、彼らは海外進出で成功を収めたのか?
Vol.3 コロナ禍で成功を収める中小企業の共通点とは?
Vol.4 常識を覆すヘルスケア製品はなぜ生まれたのか?
Vol.5 事業を受け継いだ彼らが 変革を成し遂げるまで
Vol.6 ヒット商品はいかにして生まれるか?
Vol.7 SDGsを背景にしたリユース市場の最前線
Vol.8 進化するEC市場、新たなDXで成功を掴む
Vol.9 地方自治体×Amazon。新たな地域活性化の形とは?
Vol.10 DXは老舗企業のビジネスをどう変えるか?
Vol.11 DXが生み出す地方創生の新しい形
Vol.12 なぜ、彼らのECビジネスは短期間で急成長したのか?
Vol.13 ECビジネスを加速させるブランディング戦略の新発想
Vol.14 中小企業のDXを加速させるAmazonのサポートとは?
Vol.15 中小企業のDXを支えるAmazon社員の想い
Vol.16 コロナ禍を乗り越えた飲食業のDX最前線
Vol.17 日本の中小企業が世界に羽ばたくために










