日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)は、日本経済にとって非常に大きな存在です。そして、その多くがDX(デジタルトランスフォーメーション)を推し進め、ビジネスに変革をもたらす活動を行うと共に、中小企業の数だけ挑戦のドラマが生まれています。デジタルが切り拓く中小企業の未来とAmazonのサポートを紹介する連載企画の第7回は、リサイクルビジネスを手がける中小企業の成功事例にフォーカスします。
※本記事は、2021年7月14日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。
SDGsが浸透する一方、電子ゴミが課題に
近年、SDGsが加速度的に社会に浸透しつつあります。SDGs は2015年の国連サミットで採択され、エネルギーや気候変動などの環境問題に関する対策をはじめ、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標として、17のゴールと169のターゲットが定められています。それに伴い、欧米や中国、日本も脱炭素社会/カーボンニュートラルなどを政策に掲げ、政策・規制に組み込まれたことで企業や投資家にも影響を及ぼしています。今やSDGsはビジネスにとって最重要キーワードのひとつなのです。
再生可能エネルギーや電気自動車が広く注目を集める一方で、見落としてはならないのが廃棄物処理の問題です。特に電気電子機器廃棄物、すなわち電化製品やパソコン、スマートフォンなどの電子ゴミは、2019年にグローバルで5,360万トンと、過去5年間で21%増加※1。電子ゴミから排出される温室効果ガスなどが環境汚染の原因として問題視されています。その解決策の一環として、環境省が推進しているのがリデュース・リユース・リサイクルによる循環型社会形成の取り組みです。今回は、リサイクルをビジネスの根幹とする、2つの中小企業の成功事例を見てみましょう。
※1国際連合「Global E-waste Monitor 2020」
Amazonへの出品と担当者の手厚いサポート
東京都八王子市にある株式会社 遼南国際商事は、パソコンおよび周辺機器のリサイクルを行い、AmazonをはじめとするECサイトで再生品を販売しています。代表取締役の沙運欣(シァ・ウンキン)さんは中国出身。日本の大学を卒業後、リサイクル企業に就職し、2012年に起業しました。
沙さん「ひと昔前まで、中国には世界の大半の電子ゴミが集まり、社会問題になっていたこともあり、環境問題を身近に感じていました。ここ数年、社会はそうした環境問題の解決に向けて大きく動き出しています。電子ゴミの適切な処理方法やリサイクルを世界的に浸透させ、環境負荷低減に貢献したいという気持ちは年々強まっています」
2018年にAmazonでの販売を開始した沙さん。EC事業を始めた背景にはいくつかの理由があったといいます。
沙さん「創業当初は国内外の企業に中古パソコンを販売していましたが、需要が安定しない一方で、パソコン納入業者とは定期的にパソコンを仕入れる契約を結んでいました。需要と供給のバランスが取れないリスクを感じたため、個人のお客様に販路を開拓しようと考えたのです。それから、端数の問題もありました。例えば、企業には500台とまとまった数を納めるのですが、仕入れ台数は561台というケースがあります。企業には特定の型番を販売するので、残った61台をほかの企業に販売することが難しい。そこで、個人のお客様に販売することで無駄をなくそうと思いました」
新たな販路として選んだAmazonは、同社のビジネスを大きく後押ししました。
沙さん「Amazonには圧倒的な集客力がありますし、参入時の初期費用のハードルも低い。それらは事前に理解していましたが、実際に出品してみると反響は予想以上でした。特に昨年からはコロナ禍でテレワークが定着したことで、カメラ搭載のノートパソコンの売上が大幅に伸びています。また、Amazonの担当者はどのように商品を露出させれば認知度が上がるか、どういった商品が求められているかなどをアドバイスしてくれるので、非常に助かっています」
一方、東京都荒川区にある株式会社ピーアンドジーは、スマートフォンを中心とした電化製品の再生品をAmazonで販売しています。代表取締役の木原東日(きはら・とうにち)さんも中国生まれ。日本が誇るプロダクト技術に惹かれ、1999年に来日しました。
木原さん「元々は家電販売店で働いていたのですが、より多くのお客様に商品を提供したい、そして自分の手で雇用を創出したいと考え、2009年に起業しました。当初は中国やインドなどにスマートフォンや家電の再生品を輸出していましたが、グローバル市場の落ち込みもあり、国内でも成立するビジネスモデルを考えてAmazonへの出品を決めました。2011年のことです。
ここ5年でECは世の中に浸透しましたが、中でもAmazonのお客様の多さは群を抜いていると感じています。また、Amazonの担当者は販売における課題や改善点をアドバイスしてくれるので、ECの知見が乏しくてもビジネスを軌道に乗せることができました」
ここ5年でECは世の中に浸透しましたが、中でもAmazonのお客様の多さは群を抜いていると感じています。また、Amazonの担当者は販売における課題や改善点をアドバイスしてくれるので、ECの知見が乏しくてもビジネスを軌道に乗せることができました」
SDGsをはじめとする環境問題について、木原さんは当初から強い関心を持っていたわけではないと率直に語ります。
木原さん「まずはビジネスを軌道に乗せることに集中していました。ただ、ここ数年で社会全体の価値観が変化し、会社として環境問題に取り組んでいこうと決意を新たにしました。リサイクルを通じてモノを循環させる我々のビジネスはもちろん、市場全体を活性化させることで環境負荷の低減に貢献できればと思います」
Amazon整備済み品がもたらしたメリット
パソコンやスマートフォンは精密機器ゆえ、欠陥が生じる可能性はゼロではなく、それによって再生品=不良品のレッテルを貼られてしまうこともあります。これはリユース市場全体が抱える問題であり、お客様にとっても再生品を購入する際の懸念点のひとつになっています。
一方で、より新品に近い高品質の再生品を、より安価にお客様にご提供したいという想いは、両社に共通する強固なビジネスポリシーです。では、より新品に近い高品質の再生品であることを証明し、お客様に安心して購入してもらう方法はないか? 2社にとってその解決策となったのがAmazon Renewed (Amazon整備済み品)というプログラムでした。
このプログラムでは、Amazonが定める品質基準をクリアし、一定の販売実績がある認定出品者の再生品にのみ、Amazon整備済み品カテゴリーへの商品掲載、商品名へのAmazon整備済み品という記載が可能となります。この仕組みによって出品者は再生品の品質が保証され、お客様も安心して購入できる上、1つの商品の寿命が延長され、電子廃棄物の削減につながるのです。
沙さん「Amazon整備済み品に登録してから、売上が約2倍に伸長しました。お客様に安心して購入していただけますし、競合他社と差別化を図ることもできます。また、カスタマーレビューでいただいた高評価もモチベーションアップにつながりました」
木原さん「当社もAmazon整備済み品のおかげで売上が伸びました。カスタマーレビューでも『新品と変わらない品質のスマートフォンを安く購入することができた』と、高い評価をいただけています」
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Amazon整備済み品の厳格な基準をクリアするために
Amazon整備済み品は「正常に機能し新品同様に見えるよう、Amazon認定出品者により整備された再生品」と定義され、「検査、テスト、クリーニング済み」「購入から180日の保証期間内の交換または返金」が条件になっています。
木原さん「整備プロセスの基準としては、全項目診断、欠陥部品の交換、クリーニングと検査プロセス、再梱包があります。Amazon整備済み品の認定を受けるために、端末が正常に作動するかを確認するソフトウェアも新たに購入しました。それから、商品から30cm離れて見たとき、使用感や表面的なキズ・損傷はほぼ確認できないようにしなければなりません。バッテリー残量も80%以上という基準があるので、そこも出荷時に気をつけてチェックしています。こうした基準をクリアすることは容易ではありませんが、お客様のためと思って頑張っています」
沙さん「Amazonからパソコンの整備プロセスなどを細かくヒアリングされた後、基準を満たしていると判断され、去年の8月から認定出品者になりました。当社の整備プロセスは、仕入れたタイミングで状態のランク付けをして、Amazon整備済み品として販売できる高品質なパソコンを選別するところから始まります。その後はクリーニングや動作確認、外観検査、パーツの交換などを行います。パーツ交換は欠陥部品のみならず、内蔵ストレージはHDDから主流のSSDに交換するなど、独自に調達した部品を組み込んでいる点が当社の特徴です」
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遼南国際商事は、梱包においても独自の試みを行っています。
沙さん「精密機器なので、梱包は非常に重要です。パソコンの梱包専用のダンボールを自社開発し、緩衝材をしっかりと入れて発送しています。一方、ダンボールが大き過ぎると処分に困り、環境にも負荷がかかるので、適切なサイズに設計しました」
一方のピーアンドジーは、フルフィルメント by Amazon(FBA)を利用し、自社発送作業を軽減しています。
木原さん「Amazonの倉庫に商品を預けておくだけで、注文処理から梱包、配送までを代行してくれるので非常に便利です。最もメリットに感じているのはスピード感。土日も含めて24時間対応してくれるので、受注からのタイムラグを最小限に抑えてお客様に届けることができます。従業員もしっかり休むことができるので、FBAを導入する前とは劇的に業務環境が改善されました」
SDGsを背景にしたリユース市場のポテンシャル
環境省の報告によると、2018年のリユース市場規模(最終需要ベース)は約3兆2,000億円(2015年比3.4%増)と、微増ながら成長しています※2。ただし、2018年の報告書が最新であることを考えると、ここ3年で大きく変化した環境問題を取り巻く社会情勢はまだデータに反映されていません。
※2環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室「平成30年度リユース市場規模調査報告書」
沙さん「肌感覚ではありますが、リサイクル業者は増えてきていると思います。Amazon整備済み品カテゴリーの商品数も増えていますし、認定出品者であることは将来的に大きな価値を持つと思います。当社は12名の整備スタッフと30以上のチェック項目を設けていますが、今後もこうした体制の強化・定着を図っていきます」
木原さん「人々の環境意識も変化しているので、リユース市場はどんどん成長していくと予測しています。市場を活性化させることで循環型社会に貢献し、従業員の暮らしも豊かにしていきたい。それこそ、私が来日したときに思い描いていた夢の形なんです」
環境問題に対する意識が社会的に浸透した今、リユース市場は成長のポテンシャルを高めています。今後、両社のビジネスがさらに飛躍することで、循環型社会の推進がますます加速することが期待されます。
~デジタルが切り拓く中小企業の未来~
Vol.1 彼女たちはいかにして道を切り拓いたか?(前編)
Vol.1 彼女たちはいかにして道を切り拓いたか?(後編)
Vol.2 なぜ、彼らは海外進出で成功を収めたのか?
Vol.3 コロナ禍で成功を収める中小企業の共通点とは?
Vol.4 常識を覆すヘルスケア製品はなぜ生まれたのか?
Vol.5 事業を受け継いだ彼らが 変革を成し遂げるまで
Vol.6 ヒット商品はいかにして生まれるか?
Vol.7 SDGsを背景にしたリユース市場の最前線
Vol.8 進化するEC市場、新たなDXで成功を掴む
Vol.9 地方自治体×Amazon。新たな地域活性化の形とは?
Vol.10 DXは老舗企業のビジネスをどう変えるか?
Vol.11 DXが生み出す地方創生の新しい形
Vol.12 なぜ、彼らのECビジネスは短期間で急成長したのか?
Vol.13 ECビジネスを加速させるブランディング戦略の新発想
Vol.14 中小企業のDXを加速させるAmazonのサポートとは?
Vol.15 中小企業のDXを支えるAmazon社員の想い
Vol.16 コロナ禍を乗り越えた飲食業のDX最前線
Vol.17 日本の中小企業が世界に羽ばたくために
Vol.1 彼女たちはいかにして道を切り拓いたか?(前編)
Vol.1 彼女たちはいかにして道を切り拓いたか?(後編)
Vol.2 なぜ、彼らは海外進出で成功を収めたのか?
Vol.3 コロナ禍で成功を収める中小企業の共通点とは?
Vol.4 常識を覆すヘルスケア製品はなぜ生まれたのか?
Vol.5 事業を受け継いだ彼らが 変革を成し遂げるまで
Vol.6 ヒット商品はいかにして生まれるか?
Vol.7 SDGsを背景にしたリユース市場の最前線
Vol.8 進化するEC市場、新たなDXで成功を掴む
Vol.9 地方自治体×Amazon。新たな地域活性化の形とは?
Vol.10 DXは老舗企業のビジネスをどう変えるか?
Vol.11 DXが生み出す地方創生の新しい形
Vol.12 なぜ、彼らのECビジネスは短期間で急成長したのか?
Vol.13 ECビジネスを加速させるブランディング戦略の新発想
Vol.14 中小企業のDXを加速させるAmazonのサポートとは?
Vol.15 中小企業のDXを支えるAmazon社員の想い
Vol.16 コロナ禍を乗り越えた飲食業のDX最前線
Vol.17 日本の中小企業が世界に羽ばたくために










