社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは?そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは?新連載企画の第1回は、Amazonを通じてリピーターを生み出す中小企業の事例から、それらをひもといていきます。

※本記事は、2022年1月17日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。

コロナ禍において、ECサイトでトイレットペーパーや洗剤、飲料水といった日用品を定期的に購入するようになった人は多いのではないでしょうか? わざわざ買い物に出かける必要もなく、重い商品を自宅に届けてもらえるメリットは大きいもの。さらにAmazonの場合、お客様が希望した配送頻度で定期的に商品をお届けするAmazon定期おトク便というサービスを提供しており、最大15%割引、配送料無料なども特長になっています。

ビジネス的な視点に立つと、日用品のようにお客様が定期的に購入する商品にはチャンスが存在します。今回は、Amazon定期おトク便を導入する中小企業の成功例から、DXにおけるリピーターづくりの方程式を探ってみましょう。

店舗の前で、笑顔の栗原さんの写真
株式会社栗原商店 代表取締役・栗原康浩さん

創業128年目にしてEC事業へ舵を切る

静岡県駿東郡清水町に本店を構える栗原商店は、1872年の創業から代々、こんにゃくの製造や卵、油などの卸販売を行ってきました。しかし現在の主力商品は、ところてんやあんみつ。卸業から小売業に転換を遂げています。そこに至るストーリーを、4代目である代表取締役の栗原康浩さんはこう振り返ります。

栗原さん「私が家業に入った1990年代後半はバブル崩壊の余波もあり、経営的にかなり厳しい状況でした。卸先だった地元の商店の売上は軒並み落ち、大手スーパーマーケットとの契約も一方的に打ち切られ、正直、倒産寸前でした。そこで、思い切って自社ブランド商品を販売するEC事業に舵を切ったのが2000年のことです」

製造した商品を販売店へ卸すB to B(企業間取引)から、製造した商品を消費者へ直接販売するB to C(企業と消費者との直接取引)へ転換を決意したのには、あるきっかけがありました。

栗原さん「1995年頃、伊豆半島で採れる天草(てんぐさ)を使ったところてんを製造し、テレビの通販番組で販売したところ、突き立てが食べられる突き棒セットという趣向が受けたのか、予想を超える売上を記録したのです。幸い、こんにゃくの製造技術はところてんやあんみつなどの寒天にも応用できますし、全国有数の品質を誇る伊豆半島産の天草や富士山のきれいな伏流水など、原材料にも恵まれている。これならB to BからB to Cに方向転換しても勝負できると確信しました」

突き棒から麺のように切られたところてんが出てくる写真
テレビ通販から生まれたところてんの突き棒セットは現在、ギフトセットの一部として販売
ガラスの器に盛られたところてんの写真
天草を使ったところてんの風味とのど越しは格別の味わい。柚子やわさびなどタレの種類も豊富

EC事業進出と同時に自社ブランド、伊豆河童を立ち上げ、ところてんやあんみつ、寒天を使ったプリンやチョコレートなどを製造・販売。この幅広いラインナップは「通年で売れる商品を作ろうと模索した結果」だと栗原さんは言います。こうして着実に売上を伸ばし、2008年にはAmazonでの出品をスタートしました。

栗原さん「うちは家族経営の小さな会社ですから、複数のEC販路を持つことで売上を確保し、リスクを分散させることは避けられない選択でした。また、2014年からは自社商品を提供する飲食店と直販店を経営していることもあり、デジタルとリアル、双方で売上とリスクのバランスをとることを重視するようになりました」

ザル並べられた天草の写真
海女さんが手摘みした高品質の天草を使用している
固まったところてんを取り出す様子
ところてんには他の産地の天草や海藻は混ぜず、伊豆半島の天草のみを通常の2倍使用

コロナ禍で高まった健康や食生活への意識

そうした中、コロナ禍によって飲食店は営業自粛を強いられます。三島市にある店舗は営業を再開しているものの、本店に併設された飲食スペースは現在も閉鎖されたまま。売上のバランスが崩れる中、売上の安定化やリスクの分散に貢献したのがAmazonです。

栗原さん「コロナ禍で健康や食生活を見直す機運が一気に高まりました。そこで注目を集めたのが当社のゼンライス(乾燥こんにゃく米)です。無農薬栽培されたこんにゃく芋を使っており、パートナーシップを結んでいるインドネシアの工場から輸入しています。カロリーも糖質もカットできるうえに、しっかりと食べごたえもある。コロナ禍になってAmazonでの売上が伸び、お客様からも『これなら毎日食べられます!』というカスタマーレビューをいただいています」

ゼンライスのパッケージ。中のこんにゃく米は白く米粒に似ている。
ヘルシーかつ食物繊維を豊富に含んだゼンライスはこれまでに600万食を販売
瓶に目や口を書き、フタを河童の髪に見立てた河童のプリンと、チョコろてんが並ぶ写真
寒天を使ったユニークな商品、河童のプリン(左)とチョコろてん(右)も人気

売上が伸びる中、売上の安定化に貢献したのがAmazon定期おトク便です。

栗原さん「ゼンライスは白米の代わりに毎日食べていただく健康食品なので、Amazon定期おトク便とは親和性が高いと感じていました。お客様にとっては日常的に消費する商品が定期的に届いて、しかも割引価格で購入できる。私たちにとっても商品を安定してお客様にお届けできますし、フルフィルメント by Amazon(FBA)を使えば商品の注文処理、配送、返品に関するカスタマーサポートをAmazonが代行してくれるので作業負担が大幅に軽減されます。何より、売上の安定化、将来的な売上予測に役立つので非常に助かっています」

ゼンライスの売上のうち、Amazon定期おトク便が約3割を占めます。

栗原さん「リピート率が高い商品だとは思っていましたが、そうは言っても商品力ありき。おいしくて食べやすい、しかもヘルシーというゼンライスの特長が時代の価値観と合致し、Amazon定期おトク便がさらなる後押しになっていると思います。ただし、商品力があってもお客様の目に触れないと意味がありません。その点、Amazonはスポンサープロダクト広告やタイムセールを利用すれば商品露出の機会が増えますし、Amazonの担当者が効果的な検索キーワードや広告効果などもしっかりと教えてくれます」

出来立てのこんにゃくの写真
創業のルーツであるこんにゃくは現在も作り続けている
こんにゃくをたくさん詰めたカートンごと大型の機械にいれる様子
こんにゃくを高温で蒸して殺菌している様子。先代の栗原英夫さん(右)は今も現場に立つ

ECと直営店でバランスをとるDXを推し進めてきた結果、思わぬ効果も表れているといいます。

栗原さん「実は、Amazonなどで伊豆河童を知った地元のスーパーマーケットから『商品を扱わせてほしい』と注文が入り、卸業を再開したんです。しかも、ECでブランドが認知されていることもあり、卸値の値下げに関する要求もありません。20年前の雪辱を果たしたみたいでうれしかったですね(笑)」

エビデンスを重視した健康食品へのこだわり

人生100年時代。コロナ禍以前から浸透しているこの言葉は、少なからず日本人の健康に対する意識を変化させてきました。「当社が掲げるテーマはまさに人生100年時代。商品を通じてお客様の健康寿命を延ばすことを目指しています」と語るのは、株式会社グランデの代表取締役・植木音羽さん。自社ECサイト・ナチュレライフやAmazonなどでさまざまな健康食品を企画・販売しています。

植木さん「2008年創業の当社は母体がIT企業ということもあり、ITの力で世の中の役に立ちたいという想いから出発しています。そこで、以前から関心のあった健康や日本の食文化を結びつけ、ECで健康食品を販売するに至りました」

商品と並んで笑顔の植木さんの写真
株式会社グランデ 代表取締役・植木音羽さん

グランデのスローガンは「自然の恵みを あなたのもとへ」。原材料にこだわった自然派を掲げています。

植木さん「自然派という言葉には安心感がある一方、時として抽象的にも受け取られます。だからこそ、当社は自然派であると同時に、しっかりと効果を実感できる、健康食品としての役割を果たすことにこだわっているんです」

グランデのグループ会社には料理本で知られる出版社があり、免疫力や腸活をテーマにしたベストセラーを発表してきました。そこで蓄積した知見やネットワークを活用して開発された商品だからこそ、自信をもってお客様におすすめできると植木さんは話します。

植木さん「金の菊芋を使ったサプリメントは、本の監修者であり、医学博士の先生に商品開発から関わっていただきました。農薬不使用の黒にんにくを低温熟成させた商品も薬膳師の方に協力してもらうなど、自然派とエビデンスが両立していることが商品の特長です。野菜は九州産のものを使用し、本社がある福岡から何時間もかけて農家の方に会いに行き、栽培方法の確認や改良の相談をすることも少なくありません」

皮が黒い黒にんにくの写真
アミノ酸やポリフェノールが豊富な黒にんにくは濃厚な味わいがやみつきに
「金の菊芋」や「コレステサプリ」「ぐっすりサフラン」などサプリメントのパッケージの写真。
金の菊芋を使ったサプリメント(左)をはじめ、血糖値や睡眠に関するサプリメントも販売
掌に載せた黒にんにくと菊芋の写真
原材料となる黒にんにくと菊芋。農家さんと栽培方法まで話し合い、二人三脚で商品を作り上げている

さらに、ナチュレライフには商品の販売以外の特長もあります。

植木さん「Amazonの商品ページでも商品を使ったレシピをご紹介していますが、ナチュレライフのサイトには、専門家が監修した健康レシピをはじめ、トレーナーがレクチャーするエクササイズなども掲載しています。単なる健康食品のECサイトではなく、健康に関するさまざまな情報をお客様に提供していければと思っています」

社内ミーティングの写真
ナチュレライフに掲載するコンテンツは社員全員でアイデアを出し合っている
中小企業を進化させるAmazonのDXサポートVol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
グランデが制作にも協力している免疫力のレシピ本はベストセラーに

Amazonの専任コンサルタントの助言が売上増の転機に

2014年に自社サイトをオープンし、Amazonへの出品は2018年からスタート。決め手はFBAの存在でした。

植木さん「売上規模が大きくなるにつれて、商品の注文処理から在庫管理、配送処理、さらには返品に関するカスタマーサービスまでを自社で補うことに限界を感じました。FBAを利用すればそれらをすべてAmazonが代行してくれるので、ワークライフバランスの向上にもつながると考えて出品を決意しました」

自社サイトでは固定ファンを獲得していたものの、Amazonでは出品当初、商品の魅力を伝えるコツが掴めずに苦戦したといいます。そこへある転機が訪れます。

植木さん「ターニングポイントは、1年ほど前から利用しているAmazonのマーケットプレイス コンサルティングサービスです。専任のコンサルタントが戦略的なアドバイスはもちろん、商品写真の順番といった細かな部分まで改善策を提案してくれます。そうした改善の積み重ねが売上に反映され、成長曲線を描くようになったのです」

横田さんと話しつつパソコンに向かう正田さんの写真
商品開発を担当する正田さん(右)はパッケージデザインにも力を入れているという
器に盛られた「みんなの健康おやつ」の写真。いりこ、アーモンド、昆布、くるみが入っている。
Amazonでの売れ筋は、いりこやくるみ、昆布などが入ったみんなの健康おやつ

Amazon内でマーケティングを完結できる点も後押しになったといいます。

植木さん「月間販売数はもちろん、検索ボリュームや検索キーワードを知ることもできるので、Amazon内でマーケティングを完結させ、PDCA(計画、実行、確認、改善)を回すことができるメリットも大きかったですね。マーケティングの精度が上がったことで、売上の成長スピードが一気に加速しました」

2021年6月のAmazon「プライムデー」では、2週間分の平均売上を2日で達成しました。

植木さん「プライムデーをきっかけに、Amazon定期おトク便のお客様が増えたこともうれしい相乗効果でした。当社の健康食品は継続的にお使いいただいて効果が実感できるもの。自社サイトでも定期コースを設けているので、迷わずAmazon定期おトク便を導入しました。商品によっては半数のお客様がAmazon定期おトク便をご利用されています。日々、健康増進に取り組んでいるお客様をサポートし、商品を安定して届けられていることがうれしいですし、経営の安定化にもつながっているので助かっています」

生姜黒蜜、玄米、青汁の写真
生姜黒蜜や青汁、玄米など、ナチュレライフの全商品が定期おトク便に対応している

コロナ禍の価値観と合致して売上を伸ばした栗原商店と、人生100年時代をテーマに数々の商品をヒットに導くグランデ。リピーターを生むことで売上を安定化させている両社の成功からは、「健康意識の高まり×Amazon定期おトク便」という、コロナ禍ならではのリピーターづくりの方程式が見えてきます。そこには、厳選された素材やエビデンスに基づいた商品説明という強みがあることも忘れてはいけないポイントです。

中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路

2021年のこのシリーズでは、コロナ禍を乗り越えた飲食店や、OEMから自社ブランド製造に舵を切った企業、老舗の食品店や伝統工芸品店、農産物販売企業まで、Amazonで販路を広げDXを推し進める中小企業をご紹介しています。

 

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