社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは? そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第13回は、Amazonでの販売を通じてQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の向上に貢献する中小企業を紹介します。
※本記事は、2022年6月29日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。

QOLという言葉をご存じでしょうか? 人生の質、生活の質を意味し、QOLを向上させることで、心身ともに健康的で豊かな人生を送ることを目指す考え方です。高齢化社会の到来に伴い、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を示す健康寿命が重視されるようになったことから、QOLに対する注目度が高まっています。

今回は、健康で豊かな人生を送るために役立つ商品をAmazonで販売する中小企業を紹介します。

予防歯科を実践する歯ブラシを作るために

QOLを高めるには、運動や食生活と並び、歯磨きなどの口腔(こうくう)ケアが重要とされています。80歳以上になっても自分の歯を20本以上保つことを推進する8020(ハチマルニイマル)運動のほか、国が国民皆歯科検診導入の検討を開始したことなどから、予防歯科という考え方への関心が高まっています。大阪府八尾市で歯ブラシの製造・販売を行うラピス株式会社の創業のきっかけは、予防歯科にあると代表取締役の乾真治さんは言います。

製造現場で、笑顔の乾さんの写真
ラピス株式会社 代表取締役・乾真治さん

乾さん「八尾市は歯ブラシの産地として全国トップシェアを誇ります。私も父の会社で10年ほど歯ブラシ製造に携わっていました。そんなある日、海外研修に行く機会があり、虫歯や歯周病を未然に防ぐための予防歯科という考え方に感銘を受け、医療向けに特化した歯ブラシを開発しようと一念発起し、ラピスを創業しました」

予防歯科を実践する歯ブラシを開発するために、乾さんは知り合いの歯科医院に試作品を提供し、フィードバックをもらいながら完成形を模索していきました。

乾さん「歯科医師から現場のニーズや課題を伺い、口腔ケアに効果的な歯ブラシのアイデアを形にしていきました。そして、歯ブラシの形状や毛の感触、長さなどを細かく調整したサンプルを作り、歯科医師のアドバイスを反映しながら商品化しました」

中でも、歯ブラシの毛先が円すい形にまとまったワンタフトブラシは、機能性が高く評価され、多くの歯科医院で販売されました。そして、歯科医院の患者からの問い合わせが転機をもたらしました。

乾さん「『歯科医院以外でもワンタフトブラシは購入できますか?』という問い合わせが増え、一般販売を開始しました。自社のEC(電子商取引)サイトで販売を開始後、Amazonに販路を広げたのが2013年のことです。多くのお客様が利用されているAmazonで販売できることは、私たちのような後発メーカーにとって大きなチャンスだと感じました」

ワンタフトブラシが並ぶ写真
歯と歯の間の磨き残しを除去するワンタフトブラシ
製造中の写真。スタッフの後ろに大きな機械がある。
背後にあるプリンターでハンドル部分にプリントを施す
複数のスタッフが1つ1つ検品をしている写真
完成品は1つ1つ目視による検品が行われている

Amazonでの販売が認知度拡大のきっかけに

Amazonでの売上は月を追うごとに増加し、販売を強化していきます。

乾さん「Amazonのカスタマーレビューを参考に、お客様のニーズを分析しました。たとえば、ドラッグストアなどの実店舗では、歯ブラシは他の商品のついでに購入される傾向がありますが、Amazonでは明確な購入意欲を持って歯ブラシを購入されるお客様が多い。そこで、まとめ買いしやすいよう、歯ブラシセットのバリエーションを増やすなど、お客様に合わせた工夫をしています」

カスタマーレビューにヒントを得た商品開発により、さまざまな商品が生まれています。

乾さん「お客様からいただくレビューには、モノづくりの面でも多くの刺激を受けています。お客様のご意見をもとに改良を重ねることで、商品の開発、そして機能性向上のスピードが向上していると自負しています」

様々な歯ブラシが並ぶ写真。ブラシやハンドルの形状、色も様々。
Amazonで販売している商品の種類は200を超える
様々な商品が並ぶストアページの写真
乳幼児用や舌用といったさまざまな種類の歯ブラシのほか、歯磨き粉なども販売

さらに、ブランド保護サービスや製品立ち上げサポートなどが受けられるAmazon限定ブランドプログラムを利用し、Amazon限定ブランド「はみがきの神様」を立ち上げました。

乾さん「Amazonのマーケットプレイス コンサルティングサービスも利用し、商品がより多くのお客様の目に触れる方法についてアドバイスを受けたこともあり、『はみがきの神様』は多くのお客様にご購入いただいています。Amazon『プライムデー』での反響も大きく、商品を知っていただくきっかけになりました」

また、近年はSDGsを意識し、環境に配慮した商品開発も行っています。

乾さん「廃棄されてしまう非食用のお米をハンドル部分のプラスチックに混ぜ、プラスチックの使用量を削減する歯ブラシを開発し、Amazonで先行販売しました。毎日使う歯ブラシだからこそ、環境にやさしい商品を生み出すことに意義があると考えています」

無漂白のパッケージにはいったグレーのEcoDent(エコデント)の写真
ハンドル部分に非食用お米が入ったプラスチックを使用したEcoDent(エコデント)
Amazon限定ブランド「はみがきの神様」のサイト写真
「はみがきの神様」でもさまざまなセット商品を販売している
豊富なカラーの歯ブラシのハンドル部分にペリカンやペンギン、カンガルー、ナマケモノ、コアラなどいろんな動物が書かれた歯ブラシが並ぶ写真
動物のイラストが描かれたカラフルな子ども用歯ブラシセット

ラピスの商品には、子ども向けのカラフルな歯ブラシやイラスト入り歯ブラシのセットがラインアップされています。

乾さん「当社ではあらゆる世代に向けた歯ブラシを開発していますが、子ども向けの歯ブラシには特に力を入れています。なぜなら、子どものころから楽しく歯を磨く習慣をつけてほしいからです。その習慣が生涯にわたって続けば、健康寿命を延ばすことにもつながっていく。長期的な視点から口腔ケアを後押しし、QOLの向上に貢献していければと思っています」

QOLを高めるファッションとは?

QOLを高めるためには、運動や食生活、口腔ケアといった健康面の対策を講じると同時に、生きがいや自己実現といった精神面を満たすことも重要です。たとえば、仲間をつくる、コミュニティに参加する、趣味を見つけるといった方法が挙げられますが、有限会社トリニティ代表取締役の添田優作さんは、「いつまでも自分の好きな服を着ることも大切」だと語ります。

鮮やかな水色のシャツを着せたトルソーの横で笑顔の添田さんの写真
有限会社トリニティ 代表取締役・添田優作さん

添田さん「歳を重ねるにつれ、体型の変化によって着る服が限られてしまったり、おしゃれをあきらめてしまったりする方が多いと思います。けれど、おしゃれをすれば自然と気持ちが前向きになるし、外に出かけて友人に会おうという意欲も生まれてくる。服を通じてQOLの向上を後押しすることが、シニアファッションに特化したブランドを展開する当社の目標です」

添田さんは、創業当初は車椅子などの介護用品を個人に貸し出す事業を行っていましたが、ある違和感からシニアファッションの企画・販売に事業を拡大していきました。

添田さん「日々、介護用品に触れる中で、なんでこんなに地味なデザインばかりなんだろうと疑問を抱いていました。中には『そんな年寄りくさいステッキは持ちたくない』とおっしゃるシニアの方もいて、自分がずっと持っていた感覚と同じなんだと感じたんです」

ある雑誌との出会いも添田さんに大きな影響を与えました。

添田さん「偶然手に取った、シニア世代のファッションスナップが載った海外の雑誌を読んで、カルチャーショックを受けました。年齢を重ねたからこそ似合う服があるし、それを着こなせるシニアは純粋に格好いい。自分もそんなふうに人を輝かせる服を作りたいと思ったんです」

2015年にシニア向けファッションブランドを立ち上げ、シニア世代の声を取り入れた商品開発を行っています。

添田さん「シニアだから感じる肌や体型の悩み、求める理想像があると考え、シニアの方にアドバイザーや商品モデルを務めてもらっています。商品モデルとして表に出ることが、生活の中の生きがいや刺激につながっていたらうれしいですね。そして、素敵に歳を重ねるサクセスエイジングの魅力を広めていければと思っています」

そうした想いと併せて、ファッションを起点とした世代間の交流を後押しすることも目標だと言います。

添田さん「親戚や職場といったコミュニティを除くと、世代間で交流する機会が減っているように感じています。そう考えて、ファッションの専門学校の学生とシニアとの交流の場を設け、一緒に洋服づくりを行っています。何か1つでも共通の話題があれば、世代が離れていてもぐっと距離が縮まるし、お互いの考えや価値観を尊敬できる。ファッションにはそんな力もあるのではないでしょうか」

ブランドの商品を手に誇らしげなケイコさんの写真
ブランド「YOUKA(ヨウカ)」のアドバイザーを務めるケイコさん
テーブルに色々な上着を並べて話し合いをする添田さんやケイコさん達の写真
商品開発にはシニアの意見や街頭インタビューの声も反映している
二つのトルソーの写真
シニアの体型を考慮し、一般的なトルソー(写真右)よりも腹部がふっくらしたトルソー(左)を使用

Amazonは世代を問わず買い物しやすい

主な販路はECで、特にAmazonでの販売に力を入れているといいます。

添田さん「Amazonは商品が見つけやすく、デジタルになじみが薄いシニア世代も使いやすいという声をよく耳にします。また、自分に合った服を見つけるのに苦労されているシニア世代が多いようで、外出しなくても購入でき、商品検索から購入までがわかりやすいAmazonとシニアファッションは相性がいいと思います」

また、自社ECサイトでの決済方法として、Amazon Payも導入しています。

添田さん「Amazon Payを利用されるお客様は非常に多いです。すでにAmazonのアカウントをお持ちの方なら、クレジットカード情報などの入力が省けるのでとても楽ですよね」

きれいなブルーのシャツとレッドのシャツがトルソーに着せられて並ぶ写真。
鮮やかな色合いが特徴のブランド「YOUKA(ヨウカ)」の服
様々なデザインの帽子が表示されるcocowaku(ココわく)の商品一覧の写真
「cocowaku(ココわく)」では帽子などのファッション小物も取り扱っている
商品のブルーのシャツを手に笑顔の添田さんの写真
祖母との思い出も、シニアファッションを作る動機になったと語る添田さん

Amazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や返品に関するカスタマーサービスを代行してくれるフルフィルメント by Amazon (FBA)のメリットも大きいといいます。

添田さん「当社の商品は、母の日や父の日などのギフトシーズンに需要が高まります。FBAなら、事前にAmazonの物流拠点に商品を預けておけばピーク時にも対応できますし、休日でも受注と配送をしてくれるので本当に助かっています。お客様も、Amazonであれば離れて住む両親に商品を迅速に届けることができると、安心してご利用いただいているのではないかと思います。当社の商品が、前向きな気持ちになるきっかけになっていれば、これ以上幸せなことはありません」

予防歯科に基づく歯ブラシで健康的な日々を支えるラピスと、歳を重ねてもおしゃれを楽しむ生き生きとした日々を提供するトリニティ。Amazonでの販売を通じてより多くのお客様に届けられている両社の商品は、これからも、たくさんの人の健康的で豊かな人生のために役立てられていくことでしょう。

中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路

2021年のこのシリーズでは、コロナ禍を乗り越えた飲食店や、OEMから自社ブランド製造に舵を切った企業、老舗の食品店や伝統工芸品店、農産物販売企業まで、Amazonで販路を広げDXを推し進める中小企業をご紹介しています。

 

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