社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは? そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第4回は、Amazonビジネスを利用して業務を改革した中小企業の成功例に迫ります。
※本記事は、2022年2月21日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。

社会全体でDXが加速する一方、書面での契約書の締結請求書払いなど、長年の商習慣は根強く残っています。それらの作業に多くの時間が奪われているとわかっていても、取引先との関係性の中で確立された取引方法ゆえに脱するのは難しく、この傾向は特に企業間取引(BtoB)を行っている企業に多く見られます。

では、お客様とは変わらぬ関係性を築きながら、書面交換や代金回収といった煩雑な業務だけをデジタルに移行できたら? 今回は、Amazonビジネスでの販売により 、従来の商習慣をデジタル化することで業務改革を成し遂げた中小企業をご紹介します。

モニターが飾られた棚と社名を背景に立つサムエルさんの写真
株式会社JAPANNEXT 代表取締役 ベッカー・サムエルさん

まだ市場にないもの、自社ならではのものを目指す

コロナ禍によってリモートワークや自宅で過ごす時間が増え、仕事用モニターやゲーミングモニターの需要が増しています。東京都千代田区にある株式会社JAPANNEXTは、そんな液晶モニターの開発・販売を手がける企業です。代表取締役のベッカー・サムエルさんはフランス生まれ。幼い頃から日本文化、特にモノづくりへの憧れを抱いていたといいます。

サムエルさん「22歳で日本の大学に留学するまで、何度も日本に遊びにきていました。秋葉原で買った電子機器をフランスで販売し、来日資金にしていた時期もあります」

当時、サムエルさんには2つの夢がありました。日本への移住、そして起業です。そんな夢を叶えるため、2006年、単身で日本でのビジネスを始めます。

サムエルさん「起業してから10年ほどは電子機器の輸出入を行っていました。しかし、自分で商品を製造・販売したほうが夢が膨らむと考え、2015年にJAPANNEXTを立ち上げたのです」

自社開発・販売をするにあたっては、明確な戦略を描きました。

サムエルさん「モニター分野では日々、4KやUSB Type-Cなどの新しい技術が生まれます。その技術をどれだけ迅速に取り込み、どれだけ価格を抑えられるかを重視しました。まだ市場にないもの、自社ならではのものを目指し、工場と連携して製品化を行っています」

2017年にはサムエルさんが世界初と強調する4K対応大型湾曲モニターを発売し、業界でのポジションを順調に確立していきます。

モニター三種類の写真
最新の技術を取り入れた豊富なラインナップを誇る液晶モニター
いろいろなモニターが飾られているなか、ひときわ大きな大型モニターの写真。画面がやわらかなカーブを描いている。
世界初という4K対応大型湾曲モニター

Amazonビジネスによってお客様が広がった

2015年から自社サイトとAmazonで個人向けに販売を開始し、家電量販店への卸売事業も始めました。

サムエルさん「家電量販店に商品が置かれることで認知度が高まり、ブランドの信頼向上につながっています。大きな付加価値がある一方で、訪問営業や納品書の処理などに時間がとられ、業務効率化の必要性も感じていました」

そこで、2021年から新たな販路として導入したのがAmazonビジネスです。これは法人および個人事業主を対象とした販売に特化したEC(電子商取引)で、Amazonビジネスに登録した企業は、対象商品を法人価格や数量割引で販売・購入することができます。さらに、ECのため書面交換が省かれると同時に、請求書払いなどの決済方法を選べるという、日本の商習慣をカバーする機能も付いています。

サムエルさん「システムが合理化されているので煩雑な作業が省かれる上、Amazonからの入金スピードが早い点もうれしいですね。なにより、Amazonビジネスで購買を行っているお客様の層は幅広く、今までリーチできていなかった個人事業主、大手企業、学校法人などから注文が入ることが最大のメリットです」

パソコンの前に座るサムエルさんと、その隣に立ちモニターを指さす剣持さんが相談している様子
EC部門を担当する剣持さんと商品について話し合うサムエルさん
モニターの写真
Amazonをメイン販路に据え、Amazon限定のゲーミングモニターも販売している

また、JAPANNEXTではフルフィルメント by Amazon(FBA)も活用しています。FBAとは、商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や返品に関するカスタマーサービスをAmazonが代行するサービスです。

サムエルさん「FBAは早い段階から利用しています。FBAの物流拠点に商品を預けておけば、ピッキングや梱包、カスタマーサービスなど、受注・発送にかかわる処理をすべてAmazonが代行してくれるので、ある意味、私たちは何もしなくてもいい。お急ぎ便にも対応できるので、お客様から見てもメリットは大きいと思います」

嬉しそうに話すサムエルさんの写真
将来的にはパソコンの開発に挑戦したいと夢を語るサムエルさん
モバイル型の液晶モニターの写真。着脱式のスマートケースはモニター使用時にはスタンドとしても利用できる。
出張時などでも使えるモバイル型の液晶モニターも売上を伸ばしている

リアルとデジタルがかけ合わさったエピソードも印象的です。

サムエルさん「Amazonの担当者の紹介で、都内のある企業から、液晶モニターを400台入れ替えるのでサンプルを今日中に届けてほしいとご連絡をいただき、千葉のオフィスからスタッフ数名でお届けしました。品質に納得していただいた上で、Amazonビジネスを通して購入していただきました。先日、その企業のオフィスを見ましたが、フロア中に自社のモニターが並んでいて壮観でしたね(笑)。ECとリアルにはそれぞれの良さがあるので、今後も双方を強化していきたいです」

コロナ禍で世の中の価値観やライフスタイルが変化する中、今後のビジョンを考えています。

サムエルさん「コロナ禍前からデジタル化の波はありましたが、コロナ禍でその浸透スピードが5年、10年早まったと感じています。今後もデジタル化は加速していくと思うので、これをビジネスチャンスと捉えて新たな商品をお届けしていきたいですね」

プロユースの商品はECで売れるか?

東京都千代田区にある理化学器械の総合商社・株式会社越路商会もまた、Amazonビジネスによって業務改革を成し遂げています。創業は1956年。「フラスコやビーカー、温度計、手袋など、企業や大学の研究機関や工場で使われる消耗品、研究装置の販売を手がけています。いわゆるプロユースの商品ですね」と語るのは、代表取締役社長の内山嘉憲さんです。

取り扱う商品の横で、笑顔の内山さんの写真
株式会社越路商会 代表取締役社長・内山嘉憲さん

内山さん「うちは飛び込み営業をするより、長年お付き合いのあるお客様に寄り添うスタイル。創業者である祖父の代から毎日のようにお客様のもとへ足を運び、『なにかお困りごとはありませんか?』と伺う中で信頼関係を築いてきました。お客様を大切にするためなら、たとえゴム栓1本の取引でも手を抜かない。細部にこそ神が宿っていて、大きな信頼につながるんだと社員に伝えてきました」

しかし、決まったお客様との取引だけでは売上の飛躍的な増加は見込みづらく、理化学器械という狭い業界で、いずれ商社は不要になるのではないかという危機感もありました。その打開策として内山さんが選んだのがECです。

内山さん「EC販売に力を入れ始めた2014年頃は、当社のようなプロユースの商品がECで売れる保証はありませんでしたが、思い切っていくつかのECサイトで販売しました。その中で、個人向けのAmazonでは売上や反響が圧倒的に大きかったですね。Amazonの担当者のアドバイスを取り入れると、さらに売上が拡大しました。これまで対面での営業を重視してきた当社にとって、ECでプロユースの商品が売れることは衝撃でした」

おんどとりの写真。小型の機体にディスプレイとボタンがついている。
温度や湿度を測定・記録し、クラウドに送信する「おんどとり」は、研究機関や工場で使われることが多い
100枚入りのラテックス手袋の写真
ラテックス手袋は、研究機関はもちろん、病院や介護施設などでのニーズも高い

越路商会のビジネスをさらに飛躍させたのが、Amazonビジネスの存在です。

内山さん「2017年9月に日本でAmazonビジネスが始まったとき、『当社に打ってつけのサービスだ!』と確信しました。Amazonビジネスで販売を開始してからは、それまで取引のなかった大学や病院、介護施設、飲食店など、さまざまな業種のお客様から注文が入り、売上増と並行してビジネスチャンスが格段に広がりました。特に、大学の研究機関からの注文が増えましたね」

実際、日本の国立大学の90%以上がAmazonビジネスに登録しているというデータもあります。

内山さん「以前はほとんどなかった個人のお客様の購入も増えました。例えば、研究用として販売しているパラフィルムが、ワインやウイスキーのコルク栓の密閉用に購入されているようなのです。Amazonビジネスでの販売を始めたことで、私たちが想像しなかった新たなニーズに気づかされることもプラスになっています」

パラフィルムが2種類、2インチのブルーのパッケージと4インチのクリーム色のパッケージの写真。
パラフィルムは酒類の密閉用に飲食店が購入していることをAmazonのカスタマーレビューを通じて知ったという
商品を手にして話す山下さんと内山さんの写真
越路商会のEC化を推進してきた山下さんと打ち合わせをする内山さん

ECの取引でもお客様への想いは変わらない

Amazonビジネスは業務効率化の面でも大きな影響を与えました。

内山さん「これまでは見積もりを出して、契約書を結んで、納品書と共に商品を届けて、代金を回収しての繰り返しでした。でも、Amazonビジネスなら、お客様はスムーズに購入できる上、商品が迅速に届く。当社としても、お客様の与信管理や代金回収も不要。まるで魔法のようなサービスだと思いました。それに、Amazonからの入金スピードのサイクルも短いので、資金繰りの面でも非常に助かっています」

加えて、約4万点もの商品を取り扱う越路商会にとって、Amazonの商品詳細ページは、誰もが見られるデジタルカタログの役割も果たしています。個人向けのAmazonと同じように購入できる上、請求書払いなどができる利便性の高さから、以前からの取引先がAmazonビジネスを通して商品を購入するケースもあるといいます。

詳細な説明が書かれた商品ページの写真
Amazonへの出品は、膨大な商品をデジタルカタログとして整理することにもつながった

内山さん「Amazonビジネスで複数の工場から大量注文が入った場合でも、FBAを利用しているので安心です。迅速な配送はお客様にも大変喜ばれますし、発送業務に人的リソースを割く必要がないため、その分、お客様からのご要望に向き合う時間を増やすことができています」

内山さんが語っている写真
内山さんは、今後はBtoBでもECを通じた取引が加速すると予測している

内山さん「デジタル化によって当社の業務は大きく前進しましたが、お客様に寄り添うという基本スタンスは変わりません。Amazonビジネスで購入されたお客様から電話があった場合は、迅速な交換対応や代替商品のご提案を心がけています。そこから商談が生まれ、信頼関係を築いていく。それが成長できた一番の秘訣です」

Amazonビジネスは販路を広げることに貢献し、従来の商習慣に基づいた書面交換や代金回収などの業務を効率化しました。同時に、これまで通りの対面での商談は維持しつつ、商談成立後の購入はAmazonビジネスへの移管も可能です。2社の成功事例が示すデジタルによる販路拡大・業務効率化と、リアルを通じた信頼関係の構築というハイブリッドこそ、今まさに必要とされるDXといえるかもしれません。

中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路

2021年のこのシリーズでは、コロナ禍を乗り越えた飲食店や、OEMから自社ブランド製造に舵を切った企業、老舗の食品店や伝統工芸品店、農産物販売企業まで、Amazonで販路を広げDXを推し進める中小企業をご紹介しています。

 

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