社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは? そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第6回は、新生活に関するアイテムをAmazonで販売する中小企業を紹介します。
※本記事は、2022年3月22日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。

新生活の幕開けが近づくこの季節。入園や入学、就職や異動などを控え、準備を進めている人も多いのではないでしょうか? Amazonでも「新生活特集」を組むなど、関連するアイテムの需要が高まる中で、EC(電子商取引)の浸透やDXの加速がその消費行動に変化をもたらしています。今回は、スクールウェアと男性用ビジネス雑貨を扱う2社の事例から、新生活アイテムの消費行動の変化を読み解いていきます。

オフィスを背景に、木下さんの写真
株式会社新陽トレーディング ファッション事業部マネージャー・木下洋平さん

お母さんたちの声をもとにスクールウェアを開発

入学や新学期に合わせて需要が高まる学校用のワイシャツや体操着。ひと昔前まで、こうしたスクールウェアは百貨店や地元の洋品店で購入することが一般的でした。そんな中、2018年からAmazonでスクールウェアブランド、サニーハグを展開する株式会社新陽トレーディングの木下洋平さんは、消費行動の変化をこう分析します。

木下さん「Amazonを利用するお客様におけるサニーハグの需要は年々伸びていますが、その理由はいくつか考えられます。まず、多くのスクールウェアが存在する中で、各ブランドの知識をカバーできる店員さんが減ってしまったこと。その点、Amazonの商品詳細ページでは素材や機能面の特長をしっかりとお伝えすることができます。また、新学期に入って急いで体操着が必要になるケースが多く、Amazonの迅速な配送も購入を後押ししていると思います」

サニーハグでは、Amazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や返品に関するカスタマーサービスを代行してくれるフルフィルメント by Amazon(FBA)土日出荷に対応できるだけでなく、配送作業を省ける利点も大きいといいます。

木下さん「FBAのおかげで商品開発や市場リサーチにかける時間が生まれていることをはじめ、Amazonとサニーハグは非常に相性がいいと実感しています。Amazonは出品型のECサイトなので、純粋に商品力でお客様にリーチできる。後発のブランドでも勝負できるフィールドであることは大きいですね」

サニーハグの成長は、まさにその商品力によって支えられています。

木下さん「サニーハグのコンセプトは『お母さんたちの声から生まれたスクールブランド』。商品開発の段階でお子様のいるご家庭にサンプルをお渡しし、実際の使用感などをヒアリングしています。そのリアルな声をもとに、生地をもっと厚くしよう、抗菌性を高めようといった改良を重ねているんです」

細部にまでこだわった機能性によって、サニーハグは多くの支持を集めています。

木下さん「スクールウェアは購入者が親御さんで、使用者はお子様。買い手と使い手が異なるので、両者に満足していただくことを心がけています。たとえば、親御さんからすると、お子様の下校後に体操着を洗濯して、翌日の登校までに乾く速乾性は重要なポイント。一方、お子様のためには、かゆみの原因となる襟部分のタグをなくすなどの工夫を凝らしています」

ポロシャツ、Tシャツ、クォーターパンツ(半ズボン)など、サニーハグのスクールウェアの写真
体操着やスクールポロシャツ、ワイシャツなど多彩なラインアップを誇る
襟の内側にロゴやサイズがプリントされている写真
襟部分のタグをなくしてプリントにするなど、細部にもこだわりが詰まっている

Amazonは二人三脚で成長できるパートナー

Amazonのカスタマーレビューをもとに改良を重ねていることもサニーハグの特徴です。

木下さん「ECの普及に伴い消費行動が変化し、ECではお客様の声がより多く届くようになったと思います。だからこそ、カスタマーレビューをもとに、商品の品質や説明文の改良を続けています。ECでスクールウェアを購入するという新しい消費行動への不安をなくすために、子どもが実際に着用している写真を掲載するなど、安心してご購入いただけるための工夫も重視しています」

ストアページの写真。子どもがYシャツを着用した画像が掲載されている。
子どもが着用している商品写真で着用イメージを伝えている
プリーツ構造と立体構造の2種類の子ども用のマスクのパッケージ写真
コロナ禍以降は子ども用のマスクの開発も行っている

成長を続けるサニーハグにとって、Amazonは必要不可欠なパートナーだと木下さんはいいます。

木下さん「Amazonのマーケットプレイス コンサルティングサービスを利用していますが、担当者はまるで当社の一員のような存在です。二人三脚で売上を伸ばしていこう、ブランドを成長させていこうという姿勢でアドバイスをくれます。データに基づくアドバイスはもちろん、私たちが見落としがちなポイントに対して、第三者目線から意見をくれることも非常に助かっています」

商品を手にミーティングしている写真
商品会議では、カスタマーレビューから得たお客様の意見を迅速に反映している
話をする木下さんの写真
社員一人ひとりのチャレンジ精神を尊重する社風も成長の秘訣だと語る木下さん

木下さんは「今後はサニーハグ、お客様、Amazonの三者で共にブランドを育てていきたい」と展望を語ります。

木下さん「商品力によってお客様から支持を得られた現在は、ブランディングに力を入れ始めています。Amazonのストアページを通して私たちの想いを伝えることで、『EC販売でスクールウェアといえばサニーハグ』というイメージを浸透させていきたいと考えています。そして、将来的には世代を超えて受け継がれていく、すべての家族に寄り添うブランドになりたいですね」

お客様に信頼されるビジネスアイテムを追求

入園や入学と並び、就職も大きな節目です。4月の入社時期に向けて、名刺入れや財布といったアイテムの需要が高まります。
「自分用のビジネスアイテムを購入される方はもちろん、転勤異動、昇進などの新たな門出に合わせてプレゼントされる方もここ数年増えています」と語るのは、2014年からAmazonでメンズビジネス雑貨ブランド、TAVARAT(タバラット)を展開するサイバール株式会社の山本暢行さんです。

飾られた商品を背景に笑顔の山本さんの写真
サイバール株式会社 タバラット事業部マネージャー・山本暢行さん

山本さん「名刺入れやネクタイなどは3月半ばから需要が高まります。また、コロナ禍で会う機会が減ったことで、直接発送できるECでのギフト需要が伸び、Amazonのカスタマーレビューでも『昇進祝いの贈り物として喜ばれました』といったお声をいただいています」

一方で、コロナ禍によってテレワークが浸透したこともあり、ビジネスアイテムの需要が落ち込むという打撃も受けました。

山本さん「特に、最初の緊急事態宣言が発出された2020年3月は新生活シーズンという大きな商機を失いました。しかし、ピンチをチャンスと捉え、新たな商品の開発に取り組みました。たとえば、対面での商談が減り、名刺交換の機会も失われる中で、『限られた対面商談はこれまで以上に貴重な時間になる』と発想しました。そこから、商談相手の名刺を4名分並べて置けるデザインによって、出会いを大切にしている印象を与えられる名刺入れが生まれたのです。何度も試作を重ね、シンプルで機能性に優れた商品を目指しました」

名刺入れの写真。4つ折りに畳むと普通の名刺入れサイズになり、広げるときれいに4枚が並ぶ。
広げた状態で名刺4枚を置くことができる名刺入れ、KASANEL
ジャケット姿の人が、赤い3秒マフラーを巻く写真
素早く巻くことができる3秒マフラーもヒット商品

ユニークなアイデア、洗練されたデザイン、細部にこだわり、機能性を重視した商品は、徐々にお客様の支持を獲得してきました。

山本さん「2014年のブランド立ち上げ当時は、今ほどECが浸透しておらず、お客様も実店舗での購入に重きを置いていたと思います。だからこそ、お客様の手元に商品が届いたとき、イメージと違うと落胆されないための工夫は不可欠でした。Amazonの商品詳細ページにも、できる限り商品の色や質感がリアルに伝わる写真を載せています。商品を手にとったときに喜ばれる品質はもちろん、EC販売においては信頼や安心を積み重ねることが重要だと思います」

同時に、ECだからこその喜びや面白味もあるといいます。

山本さん「カスタマーレビューを通して、お客様の喜びや感謝の声がダイレクトに届くことは、やりがいにつながっています。また、姫路レザーを使ったコードクリップが動画共有サイトで紹介され、注文が殺到したこともあります。そのときは製造が追いつかず、うれしい悲鳴をあげましたね(笑)。ただ、当初からFBAを利用していたので、注文処理や梱包、配送に関する不安は一切ありませんでした。EC販売では突然、商品の需要が高まるケースがあるので、FBAは欠かせないサービスですね」

グリーン・ブラッグ・レッドのコードクリップと、ネクタイピン、マネークリップ、本革に真鍮をあわせた名刺入れなどの写真
イヤホンや充電器などのコードをまとめることができるコードクリップは、おうち需要でも売上が伸びたという
タイピンの写真。ツイスト型やシンプルなクリップ型に加えてカラーバリエーションも豊富
さまざまな種類があるタイピン。ねじれ加工に沿って革を施した職人技が光る(手前左)

Amazonだからこそスモールスタートを切れた

自社のECサイトを開設したのは2018年。それに先駆けてAmazonで販売を始めたことには、いくつかの理由があるといいます。

山本さん「少人数でスモールスタートを切ったこともあり、まずはFBAで業務を効率化し、商品開発の時間を生み出すことが重要でした。また、立ち上げ当初は商品点数がそこまで多くありませんでした。出店型のECサイトの場合、商品点数が少ないとブランドとしての信用が生まれづらい一方、出品型のAmazonなら商品単体の力で勝負できる利点も理由のひとつです。また、2014年に事業者向けに始まったAmazonのスポンサープロダクト広告をすぐに利用し、ブランドの知名度を上げることができたのも幸運でしたね」

同時に、Amazonのマーケットプレイス コンサルティングサービスの担当者の助言も成長を後押ししたといいます。

山本さん「担当者はTAVARATの商品を購入し、愛用してくれています。ブランドを愛し、一緒に成長させていきたいという想いが感じられてうれしいですね。さまざまな分析データをもとに、商品開発につながる新しい発想や視点のアドバイスもたくさんもらっています」

オフィスで商品を手にとりながら話し合う写真
定期的に行う商品開発会議では、若い世代の意見を積極的に取り入れている
ブラックとキャメルのカラビナ式のキーホルダー、真鍮のバングル、ブラス・ブラック・シルバーのマネークリップなどの写真
若い世代の意見をもとに開発したカラビナ(左)やバングル(右奥)。手前はロングセラー商品のマネークリップ
笑顔で話す山本さんの写真
Amazon グローバルセリングを通した海外販売も視野に入れていると語る山本さん

TAVARATのコンセプトは「まじめを楽しむ」。そこにはこんな想いが込められています。

山本さん「日々実直に、目の前の仕事に取り組む人によって社会は支えられています。TAVARATの商品を通して、そうした人々の仕事や日常を少しでも楽しいものに、ポジティブなものにしていきたいですね」

時代と共に変化する新生活アイテムの消費行動を的確に捉え、Amazonと二人三脚で成長を続ける新陽トレーディングとサイバール。両社の商品は、これからも多くの人の生活を支えていくでしょう。そして両社の成功は、消費行動の場所がリアルからオンラインに移行しても、お客様のニーズを考えた商品が支持されるという本質を教えてくれます。

中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路
Vol.18 社会課題にイノベーションを起こすITベンチャーの技術力
Vol.19 エッセンシャルワーカーにDXはどんな価値をもたらすか?
Vol.20 和の名産を手がける老舗が踏み出したDXの新たな一歩
Vol.21 デジタル面にとどまらない、Amazonの中小企業支援とは?
Vol.22 行動や価値観の変化を捉える、中小企業の商品開発の今
Vol.23 メイド・イン・ジャパンの品質を世界中に届けるために
Vol.24 地域活性化を後押しする、特産品の魅力とDX

2021年のこのシリーズでは、コロナ禍を乗り越えた飲食店や、OEMから自社ブランド製造に舵を切った企業、老舗の食品店や伝統工芸品店、農産物販売企業まで、Amazonで販路を広げDXを推し進める中小企業をご紹介しています。

 

そのほかのAmazonのニュースを読む