社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは? そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第21回は、中小企業のDXを支えるAmazon社員の日々の活動を紹介します。
※本記事は、2022年9月28日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。

2022年6月、デジタル田園都市国家構想が閣議決定されました。政府が主体となり、デジタル技術の活用を通じた地方創生を推進するこの施策では、2026年度末までにデジタル関連の技術を身につけた人材を230万人育成することが掲げられています。多くの企業や行政機関でDXが加速する今、デジタル人材の育成・確保は社会全体の課題だといえます。

そうした中で、Amazonには、社員が直接、中小企業のDXをサポートしている部門があります。ただし、そのサポート範囲はデジタル面にとどまりません。今回は、Amazonが中小企業をどのような形で支えているかを紹介します。

専門知識とデータ分析で販売事業者様をサポート

Amazonにはアカウントマネージャーという職種があり、販売事業者様のAmazonでの販促施策や広告運用、商品ページの改善、ブランディングなどを幅広くサポートしています。アカウントマネージャーの鄭久美さんが担当するのは、ファッションカテゴリーに属する販売事業者様です。

笑顔の鄭さん
セラーサービス事業本部 ファッション営業部 アカウントマネージャー 鄭 久美

鄭さん「以前はアパレル業界で商品化計画に携わっていました。アパレルの専門知識と、Amazonのデータ分析をかけ合わせて、販売事業者様を丁寧にサポートすることを心がけています」

さまざまなサポートを行う中で、スモールステップで目標を立てることを意識しているといいます。

鄭さん「販売事業者様の事業計画をお伺いしたうえで、それを実現していくための目標を立て、小さな成功体験を積み重ねていくことをご提案しています」

2018年からAmazonで販売を始めた、ある販売事業者様へのサポートは、その好例だといえます。

鄭さん「その販売事業者様は、実店舗では幅広い商品ラインアップが特長でしたが、Amazonでは売上の核となるスター商品を作りましょうとご提案しました。Amazonのストアページで商品を探しやすいよう、カテゴリー分け、ブランドのアイデンティティの反映、実店舗とEC(電子商取引)での在庫の割り当て、広告施策などを徐々に実行することで、最終的に大きな成果を挙げることができました」

小さな成功体験の積み重ねが大きな成果へとつながり、販売事業者様の信頼を得た鄭さんは、商品開発にも意見を求められるようになったといいます。

鄭さん「商品のデザインや素材などについてアイデアを求められる存在になれたことは、私の中で大きな喜びになっています」

ノートパソコンでメールを書く鄭さん
販売事業者様とは定期的な打ち合わせのほかに、メールや電話などで日々連絡を取り合っている

DXが加速する仕組みづくりを支える

こうしたファッションカテゴリーの販売事業者様をサポートするため、Amazonでは販売に関する作業を効率化するサービスも提供しています。

鄭さん「たとえば、販売事業者様が商品をAmazonで販売されるにあたって、膨大な数の商品撮影に苦労されるケースがあります。そこで、Amazonの撮影スタジオで商品を撮影し、採寸したうえで、商品ページに商品写真と商品情報をアップロードするサービスを行っています」

さらに、Amazonはお客様がアパレル商品をより購入しやすくなるサービスを展開することでも、販売をサポートしています。

鄭さんPrime Try Before You Buyというサービスです。お客様のご自宅にサイズ違いや色違い、または複数ブランドの商品をまとめてお送りし、試着後、気に入った商品だけをお買い求めいただけるサービスで、送料や返送料はかかりません」

熱く語る鄭さん
季節ごとに変化するファッションの需要を捉えたご提案をしたいと語る鄭さん

こうしたサービスを展開する背景には、Amazonにおいてファッションカテゴリーのニーズが高まっていることが挙げられます。

鄭さん「Amazonにおけるファッションカテゴリーにはまだまだ伸びしろがあると考えています。販売事業者様のビジネスパートナーとなり、さまざまなサポートを行うことでスター商品を生み出し、販売事業者様に伴走しながら、ファッションカテゴリーをけん引するブランドを育てていくことが私たちの目標です。共に成長し、長期的な信頼関係を築いていければと思います」

販売事業者様のAmazonでの発展のために小さな目標達成を掲げる一方で、俯瞰(ふかん)的な視点も持っています。

鄭さん「実店舗や自社サイト、そしてAmazonでの販売が相互に補完し合い、総合的にDXが加速する仕組みづくりをお手伝いしたいと考えています。Amazonでの成長だけでは成し得ないこともあるので、Amazonのサポートやサービスを最大限にご活用いただき、販売事業者様がトータルに発展されることを願っています」

販売事業者様が商品に込めた想いを引き出す

Amazonには、アカウントマネージャーとは別に、専任コンサルタントの提案を通じ、販売事業者様のAmazonでのビジネスを後押しするマーケットプレイス コンサルティングサービスが存在します。主なサポートの範囲はアカウントマネージャーと同様ですが、担当する業種は多岐にわたります。専任コンサルタントの神山実優さんは、「担当する販売事業者様の商品を購入することを徹底している」と言います。

笑顔の神山さん
セラーサービス事業本部 マーケットプレイス ペイドサービス マーチャント・コンサルタント 神山実優

神山さん「商品を購入し、使用して、1人の消費者としての感想を率直にお伝えするようにしています。たとえば、商品AとBの違いがわかりづらい場合、商品ページに比較表を差し込むご提案をするなど、消費者目線で気付いたことを改善策のご提案につなげています」

販売事業者様の商品への想いを引き出すことも重要だといいます。

神山さん「どんな想いを込めて作った商品なのか、どれだけ品質にこだわったかという部分がお客様に伝え切れていないと感じる場合があります。付加価値を生み出す販売事業者様の強みについて時間をかけてお伺いし、それをAmazonの商品ページやストアページに反映するご提案をしています。販売事業者様の想いを伺っていると、自然とファンになっていくんです」

同時に、データ分析に基づく提案も重視しています。

神山さん「さまざまなデータに基づいて、Amazonのどのサービスの導入・利用拡大を優先的に行うべきかを判断しています。ただし、サービスの導入はあくまでも手段ですので、販売事業者様の課題に寄り添ったご提案を大切にしています」

ノートパソコンで仕事をする神山さん
Amazonでの販売におけるツールの操作方法なども丁寧にサポートすることを心がけている

販売事業者様の成長が私たちの喜び

医療機器メーカーを担当した際は、ブランド紹介欄に国内で医療機器認証を取得していることを記載することで信頼性をアピールし、売上の拡大につながりました。

神山さん「さまざまな業種の専門的な知識を学ぶことも心がけています。また、チーム内では業種ごとの最新動向などを共有する勉強会を定期的に行い、誰もが高いレベルの提案ができるような体制を作っています」

ときには、商品開発にもアイデアを求められるといいます。

神山さん「販売事業者様のためにできることは全部やります。新商品がAmazonで売れることはもちろん重要ですが、販売事業者様やブランドが成長することも私たちの喜びです」

そんな神山さんと販売事業者様の関係性を表すエピソードがあります。

神山さん「コスプレ用の衣裳(いしょう)を手がける販売事業者様を担当したときのことです。コロナ禍でコスプレイベントの中止が相次ぎ、売上が大きく落ち込んでいました。そこで、自宅でコスプレを楽しむ『宅コス』を流行らせようと考え、SNSで情報発信することをご提案しました。できるだけ資金をかけずに、商品ページの改良などを地道に続けた結果、売上が大きく回復しました。その販売事業者様から『神山さんは、なんでも相談できるビジネスパートナー』と言っていただいたときは本当にうれしかったですね」

さらに、医療機器メーカーとはコロナ禍の需要を踏まえた商品開発も行ったといいます。

神山さん「販売事業者様が持つ高い技術力を活かし、コロナ禍においてニーズのある医療機器を作りましょうとご提案しました。一方で、コロナ禍にとらわれすぎない商品開発を今のうちからご提案し、未来の成功につなげたいと考えています」

嬉しそうに話す神山さん
販売事業者様からいただく感謝の言葉がやりがいにつながると語る神山さん

長期的な成長を軸とした提案を続ける神山さんには、中小企業を支えたいという想いがあります。

神山さん「中小企業の販売事業者様には、それぞれのストーリーがあり、商品に込められた想いがあります。そういうお話をお伺いすると、心の底から販売事業者様のお役に立ちたいと思うんです。Amazonを通じて、販売事業者様の商品をたくさんのお客様にお届けできるよう、二人三脚で長いお付き合いをしていきたいですね」

Amazonにはさまざまな形での中小企業支援があり、鄭さんと神山さんの業務はその一環です。2人は、販売事業者様のAmazonでの成功のみならず、共に成長し、中小企業のDXを支えたいと口をそろえます。その想いこそ、中小企業を支えるAmazonの原動力だといえるでしょう。

中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路
Vol.18 社会課題にイノベーションを起こすITベンチャーの技術力
Vol.19 エッセンシャルワーカーにDXはどんな価値をもたらすか?
Vol.20 和の名産を手がける老舗が踏み出したDXの新たな一歩
Vol.21 デジタル面にとどまらない、Amazonの中小企業支援とは?
Vol.22 行動や価値観の変化を捉える、中小企業の商品開発の今
Vol.23 メイド・イン・ジャパンの品質を世界中に届けるために
Vol.24 地域活性化を後押しする、特産品の魅力とDX

2021年のこのシリーズでは、コロナ禍を乗り越えた飲食店や、OEMから自社ブランド製造に舵を切った企業、老舗の食品店や伝統工芸品店、農産物販売企業まで、Amazonで販路を広げDXを推し進める中小企業をご紹介しています。

 

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