社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは?そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第3回は、Amazonで成功を収める中小企業のフルフィルメント戦略に迫ります。

※本記事は、2022年2月7日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。

フルフィルメントという言葉をご存じでしょうか? 主にEC(電子商取引)や通信販売において、商品の在庫管理から注文処理、ピッキング・梱包などの発送作業、配送、返品や交換対応までの作業全体を指す言葉です。フルフィルメントはECに不可欠であると同時に、倉庫代や配送料などの費用面、受注・梱包などの作業面において、ECビジネスを大きく左右します。今回は、フルフィルメント戦略によってECビジネスを成長させた食品を扱う中小企業をご紹介します。

たくさんのお茶が並ぶ棚の前で、笑顔の川井さんの写真
合名会社川本屋商店・代表取締役社長 川井秀昭さん

ECなら日本茶の未来を変えられるかもしれない

神奈川県横浜市にある川本屋茶舗が店舗近くに構えるオフィスには、商品がうず高く積まれています。これらはすべてECで購入したお客様に届けられる商品です。「当社は複数のEC販路を持っているのですが、Amazonで販売している商品の多くはフルフィルメント by Amazon(FBA)の倉庫に預けています。FBAがなければ、保管場所や発送作業を行う人手は足りなかったですね」と語るのは、合名会社川本屋商店の代表取締役社長・川井秀昭さん。FBAについて詳述する前に、川本屋の歴史をひもといてみましょう。

創業は、明治も終盤に差しかかった1897年。新橋で料亭として創業し、現在の横浜市伊勢佐木町に拠点を移し、乾物屋を始めたのが1910年のことです。

川井さん「曾祖父にあたる2代目が日本茶や鰹節などの乾物を扱い始め、現在も販売しています。日本でも数少ない備長炭で火入れした静岡茶葉を扱うなど、日本各地の信頼のおける生産者から茶葉を仕入れています。3代目は冠婚葬祭の贈答品に、4代目は仏事の返礼品に事業を広げました。時代の変化に合わせて事業を広げてきたことは、川本屋のDNAだといえるかもしれません」

古い白黒写真。川本屋鰹節店と川本屋茶舖の二つの看板を掲げた店舗に割烹着を着た女性や子どもをおんぶした女性、自転車で来た人たちが映っている。
戦後間もないころの川本屋茶舗の様子
木の器に盛られた茶葉の写真
備長炭を使い、熟練の職人技で火入れした香り高い静岡茶
ガラスの急須から白い湯呑に黄金色のお茶が注がれる写真
ごぼう茶(写真)や杜仲茶など、健康茶も幅広く扱っている

5代目の秀昭さんが力を入れているのがECビジネスです。

川井さん「実は、川本屋を継ぐつもりはなかったんです(笑)。一般企業を経て、9年前に継いだきっかけはECです。ECなら新しいことに挑戦できる、日本茶の未来を変えられるのではないかと可能性を感じました。自社サイトは2000年に母が開設し、2010年頃、健康茶ブームに乗じて売上が伸びたことも追い風になりました」

フルフィルメントの課題をAmazonのFBAで解決

家業を継ぐ前に修行に出た先は、日本茶関連のお店ではなく、ECで急成長を遂げていたアパレルメーカー。川井さんがいかにECに期待を寄せていたかが伝わります。「アパレルメーカーでは発送作業に追われ、ECの大変さを知ると同時に、伸長する売上に大きな可能性を感じた」と当時を振り返る川井さん。家業を継いでからはAmazonへ販路を広げ、ECビジネスを加速させていきます。

川井さん「以前から買い物にAmazonを利用して、何より商品が探しやすいと感じていました。例えば、テレビで当社の商品が紹介されると、一気にアクセス数が伸びるのはAmazonなんです。それくらい探しやすく、利用するお客様の数も多い証だと思います。配送が迅速であることも認知され、ここ3〜4年のAmazonでの売上の伸び率には驚くべきものがあります」

EC販路の中でもAmazonでの販売に力を入れ、「Amazonの担当者に提案してもらったことはすべて実行する!」と心に決めていたという川井さん。提案を受けた中の1つ、タイムセールへの参加がターニングポイントとなりました。

川井さん「自家製スイーツが飛ぶように売れました。抹茶ガトーショコラをはじめ、宇治抹茶や玄米茶を使ったパウンドケーキなど、保存料、着色料、香料などは一切使用せず、日本茶を活かしたスイーツです。お茶屋が作るスイーツというコンセプトと、程よい高級感がバレンタインなどのギフト需要に合致したのだと思います。それから、備長炭火入れの静岡茶が入ったギフトセットは母の日に注文が殺到しました。そのときは本当にFBAに助けられましたね」

黒い重厚な器に、ガトーショコラと抹茶ガトーショコラが並ぶ写真
濃厚な味わいが強いインパクトを残すガトーショコラ(左)と抹茶ガトーショコラ(右)
パウンドケーキの写真。さつま芋味、宇治抹茶味、ゴボウ茶味、和の果実味、玄米ちょこ味、ほうじ茶味など色々な味がある。
日本茶をはじめ、和の果実やさつま芋など、さまざまな味わいが楽しめるパウンドケーキ
静岡茶と掛川茶のセットの写真。黒い籠に和紙で仕上げられた茶缶が収まり、風呂敷で包まれる。
備長炭火入れの静岡茶と掛川茶のセットはギフトとしての需要が多い

フルフィルメント by Amazon(FBA)とは、商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や返品に関するカスタマーサービス、つまりはフルフィルメント領域をAmazonが代行するサービスのこと。FBAの倉庫に商品を預けておくだけで、注文が入れば自動的に商品が配送されます。

川井さん「保管スペースや発送作業に割く人手など、フルフィルメントに関する課題を一気に解決してくれたのがAmazonのFBAです。繁忙期は出荷作業が追いつかずに焦ることも多いのですが、FBAに預けた商品は自動的に配送されるので安心しています。自社サイトでは日曜日の出荷は対応していないのですが、FBAでは土日も含めて対応できるのはメリットとして非常に大きいですね」

茶香炉のロウソクに火がつけられ、茶葉を焙じている写真。そばにはお茶もある。
心が落ち着く香りを愉しめる茶香炉も販売している
笑顔の川井さんの写真
今後は生産者とのつながりも深めていきたいと語る川井さん

日本茶葉はもちろん、健康茶やスイーツ、茶香炉を販売するその先に、川井さんはどんな日本茶の未来を思い描いているのでしょうか?

川井さん「急須でお茶を飲む機会は以前より減りましたが、ペットボトルのお茶が浸透しているように、お茶は時代と共に形を変えながら日本人の暮らしに溶け込んでいます。どんな形であれ、茶文化を継承していくことが川本屋の想いです。そして、Amazonを通して川本屋のファンになっていただくことが願い。川本屋を入り口に、さまざまな茶文化に触れてもらえるとうれしいです。どんなにECで成功しても伊勢佐木町の店舗は残したい。ゆくゆくは、店舗で日本茶や、茶香炉を愉しんでいただける場を提供できたらいいですね」

神社のお供え物に由来する食文化を伝えたい

Amazonで人気を集めている供TOMOは、東京都新宿区にあるJAT株式会社の代表取締役・小田恵子さんが生み出した食品ブランドです。ブランド誕生の背景には、小田さんの生い立ちが深く関係しています。

小田さん「私の生家は兵庫県にある神社で、1000年を超える歴史を持っています。古来より、神社では神様に感謝の気持ちを込めてお米や御神酒(おみき)、塩などを毎日お供えします。幼いころから身近にあった神道や日本の食文化を伝えたいという想いを抱きながら、仕事面では人材サービス会社を立ち上げ、プライベートでは4人の子宝に恵まれる日々を送っていました」

取り扱う商品を前に、笑顔の小田さんの写真
JAT株式会社・代表取締役 小田恵子さん

そんな折、ある転機が訪れます。

小田さん「2014年、モナコ公国で日本の食文化を広めるためのイベントが開催され、モナコ公国に暮らす親友から参加してみないかと声をかけられたんです。そこで、私のルーツである神社のお供え物として、お米や御神酒などを紹介しました。日本の食文化と世界の架け橋になれたことが本当にうれしくて、そこからは毎年のようにイベントに参加し、実行委員長としてお茶会や子ども絵画コンクールなどを催しました。ちなみに、今は亡きグレース・ケリー妃が京都の庭園を訪れた際にとても気に入ったことから、モナコの中心部には日本庭園があるんです。日本とモナコは不思議な縁で結ばれているんですよ」

このイベントで得た縁から、モナコやフランスの飲食店へ日本酒などを輸出するビジネスを開始。胸に秘めていた日本の食文化への想いを形にするため、「供える」から一文字を取ったブランド、供TOMOを立ち上げます。

小田さん「日本の食文化や神道をベースに、安心・安全な食品を提供したいと考え、無添加食品にこだわりました。万葉集の勉強会玄米コーヒーのメーカーと知り合い、伊勢神宮に御神米(ごしんまい)として奉納されているお米・イセヒカリの有機玄米を使ったコーヒー粉を一緒に開発しました。いろんなご縁に恵まれて、少しずつ供TOMOの商品が形になっていったんです」

カフェ玄神のパッケージと淹れたコーヒーの写真
有機玄米の香りが豊かなコーヒー粉・カフェ玄神はノンカフェイン
サラさんと小田さんが商品を手に話している写真
海外への輸出や販売はフランス人のサラさんが担当している

世界に開かれたAmazonは夢と希望を与えてくれる

当初、商品はモナコやフランスへ卸すつもりで、国内での販売は考えていなかったといいます。しかし、コロナ禍によって海外への販路が絶たれ、国内での販売を決意します。

小田さん「Amazonでの販売を始めたのが2020年7月。子育てをしながら、特に広告も出さずに細々とやっていました。ところが、昨年のバレンタイン前、有機玄米のコーヒーパウダーときな粉を使ったショコラが突如として売れ始めました。バレンタイン、それからホワイトデーと注文が殺到し、どんなに量産しても追いつかない状態。毎日が衝撃的でしたね(笑)。今年のバレンタインは品切れしないようにきちんと在庫計画を立てています」

黒い箱にはいったショコラ・カフェ玄神の写真
ショコラ・カフェ玄神はハラール認証を取得している
細長い箱にはいった七福神の白い和三盆の写真
七福神を精巧にかたどった七福神和三盆も人気商品

神様に供えるイセヒカリを使った有機玄米コーヒーは、モナコ公室御用達(ごようたし)。日本の神道とモナコというインターナショナルなストーリーがかけ合わさった商品です。

小田さん「私たちは3人の小さな会社ですし、大量の商品を保管するスペースもないので、FBAを利用していなかったらと思うとぞっとします。子育てをしながらビジネスを続けられるのは、FBAによって時間が生まれるおかげです。食品は保管にも細心の注意が必要ですが、FBAには定温で管理してくれる倉庫があるので安心です。
 また、一定のサイズ条件を満たすと出荷コストが低くなるFBA小型軽量商品プログラムも利用しています。イセヒカリの商品は、パッケージをサイズ条件に合うように作ったほどです(笑)」

平たい長方形にパッケージされた御神米イセヒカリの写真
御神米イセヒカリ2合はFBA用に平たくパッケージしている
笑顔で話す小田さんの写真
現在はシュガーフリーの商品を開発中だと語る小田さん

現在はAmazonグローバルセリングも利用し、念願だったフランスへの販路も開拓しています。

小田さん「日本にいながら世界中のお客様に直接商品を販売できる。Amazonは私にとって、夢と希望を与えてくれる存在なんです。Amazonを通じてインターナショナルな感覚を養えることも日々のやりがいにつながっています」

川本屋茶舗とJAT株式会社には、日本の伝統や食文化を受け継ぎ、広めたいという信念があります。その想いに裏打ちされた商品は、他にはない付加価値を帯び、お客様の心をひき付けることでしょう。しかし、フルフィルメントをおろそかにしては、お客様に確実に商品を届けることも、想いを伝えることもできません。フルフィルメント領域を一手に代行するAmazonのFBAは、ビジネス上のメリットはもちろん、お客様に想いを届け、新たな商品を生み出す時間、家族と過ごす時間を生み出すという、目に見えない部分への貢献度も高いといえるかもしれません。

中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ
Vol.1 商品のリピーターを生み出す、DXにおける新たな方程式とは?
Vol.2 ECビジネスを加速させるギフト戦略の最前線
Vol.3 ECビジネスに不可欠なフルフィルメント戦略
Vol.4 既存商流のデジタル化はなにをもたらすか?
Vol.5 女性を支える商品は、社会と暮らしをどう変えるか?
Vol.6 DXと共に変化する、新生活アイテムの消費行動とは?
Vol.7 DXはエシカル消費をどのように後押しするか?
Vol.8 AWSクラウドがもたらした、農業を支えるDXの進化
Vol.9 AWSが加速させる、社会に貢献する事業のDX
Vol.10 スタートアップの革新はいかにして生まれるか?
Vol.11 AWSによるDXは、第一次産業をどう進化させるか?
Vol.12 事業承継のために老舗が挑んだ改革と守った精神
Vol.13 豊かな人生に貢献する商品を生み出した開拓者たち
Vol.14 業務効率化で生まれた時間をどう活用するか?
Vol.15 ブランドの保護・活用による中小企業の成長戦略
Vol.16 企業の情報資産を守り、ビジネスを止めないために
Vol.17 日本の健康を食で支えるために開拓したECという販路
Vol.18 社会課題にイノベーションを起こすITベンチャーの技術力
Vol.19 エッセンシャルワーカーにDXはどんな価値をもたらすか?
Vol.20 和の名産を手がける老舗が踏み出したDXの新たな一歩
Vol.21 デジタル面にとどまらない、Amazonの中小企業支援とは?
Vol.22 行動や価値観の変化を捉える、中小企業の商品開発の今
Vol.23 メイド・イン・ジャパンの品質を世界中に届けるために
Vol.24 地域活性化を後押しする、特産品の魅力とDX

2021年のこのシリーズでは、コロナ禍を乗り越えた飲食店や、OEMから自社ブランド製造に舵を切った企業、老舗の食品店や伝統工芸品店、農産物販売企業まで、Amazonで販路を広げDXを推し進める中小企業をご紹介しています。

 

そのほかのAmazonのニュースを読む