社会全体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に舵を切る中で、Amazonは日本の企業の約9割を占める中小企業(小規模事業者含む)を支援し、さまざまなサービスやプログラムを通して中小企業のDXを後押ししています。デジタルがもたらす中小企業の変革とは? そして、変革を加速させるAmazonのサポートとは? 連載企画の第30回は、伝統技術を活かした商品を販売する中小企業のDXを紹介します。
※本記事は、2022年12月30日に日本経済新聞および日本経済新聞電子版に掲載された記事を加筆したものです。
日本には伝統的な技術を駆使して製造される製品が数多く存在し、2022年現在、経済産業大臣は伝統的工芸品として日本全国で240品目を指定しています。それぞれに独自の地域ブランドを形成してきた工芸品ですが、ライフスタイルの多様化に伴うニーズの変化、人口減少に伴う産地の衰退や後継者不足など、地域ブランドが抱える課題は少なくありません。
今回は、三重県伊勢志摩の真珠と佐賀県有田町の有田焼を販売する2社を取り上げ、時代やニーズの変化に合わせて伝統技術が提供する価値や、Amazonでの販売を通じたDXを紹介します。

真珠を身近な存在にするための商品開発

欧米の高級宝飾ブランドが日本の真珠を採用するなど、日本は世界が認める真珠大国です。 養殖真珠の開発は日本が世界に先駆けて成功した取り組みであり、三重県南東部にあたる伊勢志摩は養殖真珠発祥の地として知られています。
白い壁の室内、グレーのジャケットと黒いワンピースの女性が立っている。女性の右側にさまざまな真珠製品のディスプレー。有限会社磯和真珠商会 代表・磯和恵子さん
三重県志摩市にある有限会社磯和真珠商会の代表・磯和恵子さんは、「私の義理の祖父である磯和治左エ門は、御木本幸吉さんが1888年に創設した真珠養殖場に勤めた後、1928年に真珠養殖場を開きました」と語ります。
磯和さん「養殖真珠の輝きは天然真珠と比較しても遜色がない、いや、それ以上なのに、当初は人工的だという理由から批判する人は少なくありませんでした。御木本さんが養殖真珠の粗悪品を集め、すべて焼却することで品質をアピールするなど、日本の養殖真珠の歴史は苦難の連続だったと伝え聞いています」
近年は後継者不足やアコヤ貝の大量死といった問題に直面し、全盛期には志摩町越賀地区に60軒ほどあった養殖場は10軒ほどに減ったといいます。
磯和さん「現在は担い手がいないため自社の養殖場は閉鎖していますが、祖父の代から培った真珠を見る眼、加工技術などを活かし、アクセサリーの加工・販売に専念しています。仲卸を介さず、加工業者から直接仕入れることができるので、お客様のお求めやすい価格帯の商品開発を実現できています」
ニーズの変化にはどのように対応してきたのでしょうか?
磯和さん「真珠のネックレスというと、冠婚葬祭で身につけるイメージが強いと思います。ですが、私たちとしては、真珠を日常的に身につけていただきたい。デニムに真珠のネックレスでもいいんです。だからこそ、モダンなデザインのピアスやペンダント、男性用のネックレスなどを開発し、時代に合わせて新たな価値を提案してきました」

少人数のビジネスを支えるフルフィルメントby Amazon(FBA)の効果

2007年からAmazonで販売を行う以前は、訪問販売がメインだったといいます。
磯和さん「お客様のもとへ商品を持参する、いわゆる外商のスタイルです。時代とともに外商の件数も減少し、販路を広げたいと考えてAmazonでの販売を始めましたが、当初はインターネットで高価な商品をご購入いただけるか不安でした。そんなとき、Amazonの担当者から商標登録の提案を受け、『イソワパール』というブランドを立ち上げました」
さらに、第三者機関が真珠の品質を鑑定した真珠鑑別鑑定書を、商品とともにお客様に届けたことで信用が高まり、Amazonでの販売が軌道に乗っていきます。
磯和さん「真珠鑑別鑑定書は、ブランド価値を高めるために役立っています。Amazonのカスタマーレビューには、お客様が品質に対する高評価を書いてくださることが多く、日本中に良質な真珠を届けられることの喜びを感じています」
配送の速さに対するお客様の感謝の声も多いといいます。
磯和さん「配送に関しては、Amazonが商品の保管、注文処理、梱包、配送、さらには注文や商品に関するカスタマーサービスを代行してくれるフルフィルメント by Amazon(FBA)を利用しています。従業員5名で業務を行う当社にとって、土日や祝日、年末年始も配送業務などに対応してくれるFBAによる業務効率化は必要不可欠でした」
真珠が醸し出す有機質特有の輝きや柔らかさは、これからも愛され続けると磯和さんは信じています。
磯和さん「どんなに時代が変わろうとも、美しい輝きを放つ真珠に対するニーズは存在し続けると思います。そのためには、しっかりと品質を維持し、向上させることが何より重要です。それから、入学式や成人式などに、祖父母が孫へ、父母が子どもへ真珠を贈る文化はいまも残っています。Amazonでの販売を通じて、そうした真珠文化を継承していけるとうれしいですね」

有田焼のイメージを覆すモダンな色彩感覚

日本を代表する磁器として知られる有田焼は、17世紀初頭に佐賀県有田町で生まれ、17世紀後半にヨーロッパに輸出されると、その華やかな色絵が世界的な評価を獲得しました。しかし、全国チェーンの生活雑貨ブランドが台頭するなど、ニーズの多様化とともに変化を迫られてきました。
「私が家業を継いだ2000年当時は20億円の負債があり、350人いた従業員も現在では20人に減りました」と語るのは、200年以上の歴史を持つ弥左ヱ門窯の7代目であり、アリタポーセリンラボ株式会社の代表取締役を務める松本哲さんです。
倉庫のような室内、台車のような棚に丸皿や角皿が多数並んでいる。台車を背に立つ男性が体の前で手を組んでいる。グレーの着物と薄いグレーの羽織。アリタポーセリンラボ株式会社 代表取締役・松本哲さん
松本さん「当時は非常に厳しい状況で、卸販売に依存していては先がない、伝統にあぐらをかいていたら未来はないと考えました。再び有田焼を世界的なブランドにしたい。そのためには何が必要か。突き止めた結果、現代のライフスタイルに合うモダンでラグジュアリーな自社ブランドとして、アリタポーセリンラボを立ち上げたのです」
転機となったのは、松本さんが2011年に考案したJAPANシリーズです。日本の四季の情景を表現したその器は、伝統的な絵柄や紋様を採用しながら、モダンな色彩感覚を取り入れることで有田焼のイメージを覆しました。
松本さん「ただモダンなだけではなく、伝統的な技術と紋様を活かし、研究を重ねた末にたどり着いた独自の顔料を使いました。ニューヨークで行った展示会が好評を博し、国内の百貨店での販売につながったり、ヨーロッパの香水ブランドとのコラボレーションが実現したりと、大きな転機になりました」
地元の問屋への卸販売が中心だった販路を拡大するために、10年ほど前から自社ECでの販売を始め、2015年からはAmazonでの販売も行っています。
松本さん「Amazonでの売上は順調に伸びています。有田焼をギフトとして購入されるお客様が多く、12月は1年間で最も多くのご注文をいただきます。年の初めに日本の伝統を見直し、触れる習慣が根付いているのだと思います。器は料理にとって衣服のようなもので、衣服が変われば華やかに見えるし、気分も上がる。ハレの日にふさわしい有田焼は、お正月のおせち料理にぴったりだと思います」

Amazonでの販売がさらなる認知度拡大のきっかけに

同社の商品は、地域社会に根差したものづくりに注力する中小規模の販売事業者様の商品を取り揃えるAmazonの特設サイト、日本ストアでも紹介されている。
松本さん「Amazonはお客様の数が多く、お買い物がしやすいという利点もありますが、認知度の拡大にも貢献してくれています。例えば、日本ストアで当社のことを知っていただいたり、Amazonで販売を行っているという理由でテレビの取材を受けたり、影響力は大きいですね」
有田焼の誕生から400年を迎えた2016年には、佐賀県が地域ブランドをバックアップし、さまざまなプロジェクトが始動しました。
松本さん「ARITA EPISODE 2と題して、セミナーやワークショップ、コラボレーション企画などが行われました。同時期に、アリタポーセリンラボの旗艦店を有田町にオープンし、器を楽しめるカフェの運営も始めました。そうした情報発信や新規事業のかいもあって、近年は少しずつ若い働き手も増え始めています。産地として継続していくためには、県や町との連携は欠かせないと感じています」
近年はさらなる付加価値向上のため、釉薬を練り込んだ陶土を開発し、特許を申請しています。
松本さん「釉薬を練り込むことで素焼の工程をなくし、CO2排出量を減らすとともに、お求めやすい価格を実現しました。サステナビリティと白磁の美しさを特色に持つシリーズとして展開予定です」
「再び有田焼を世界的なブランドにしたい」という想いを実現するために、Amazonは必要な存在だといいます。
松本さん「将来的には海外に販路を広げたいという構想を持っています。Amazonは世界各国にプラットフォームを持っていますし、Amazonグローバルセリングを利用すれば、日本にいながら世界中で有田焼を販売することができる。いつの日か海外販売を実現して、切磋琢磨しながら有田焼を盛り上げていきたいですね」
長年培ってきた伝統技術を活かし、現代的にアップデートした商品で新たな価値を提供する磯和真珠商会とアリタポーセリンラボ。両社の持つ伝統技術には、子どもや孫に大切なものを受け継ぐ文化や、日本の伝統を愛でる文化が隣り合わせに存在することがわかりました。Amazonでの販売というDXは、そうした伝統の継承を後押ししていると言えるかもしれません。

中小企業を進化させるAmazonのDXサポートシリーズ